パ・リーグ6球団の補強診断 大きな動きを見せたソフトバンクの評価は?

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ソフトバンクは3度本塁打王に輝いた山川をFAで獲得。積極補強の評価は? 【写真は共同】

 WBCでの侍ジャパン世界一をはじめ、大いに盛り上がりを見せた2023年のプロ野球界。新年を迎え、2月の春季キャンプから新たなシーズンがスタートする。今回のコラムでは2024年シーズンの幕開けを迎える前に、このオフの戦力補強を球団ごとに振り返り、それぞれの内容を評価していきたい。

 なお評価については、A~Dの4段階で行っている。国内移籍は選手の総合的な貢献度を測る指標であるWARをもとに、ドラフト新人や新外国人はチーム状況に対して適切な補強だったかを鑑みて、総合評価とした。

※内容は2024年1月17日時点の情報をもとに執筆。表内で太字となっている選手は、チームに与える影響が大きいと思われる注目選手

日本ハム 評価A

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 2年連続の最下位から巻き返しを図る日本ハム。今オフはFA権を取得した加藤貴之の引き留めに成功すると、6球団の競合となった山﨑福也を獲得。FA市場で他球団をリードする動きを見せた。さらに新外国人では、メジャーでシーズン30本塁打を2度記録しているパワーヒッターのレイエスを獲得し、2020年まで2年間在籍したバーヘイゲンが電撃復帰を果たすなど、総勢8名の助っ人をそろえて体制を整えた。メジャー挑戦のため上沢直之が退団したものの、先発候補には根本悠楓や金村尚真といったブレークが期待される若手が控えており、今回の補強と合わせて非常に強力な陣容となりつつある。

 野手陣ではレイエスが指名打者のレギュラーとして期待されるほか、打力と走力に優れたスティーブンソンがセンターで起用される見込みだ。昨季はマルティネスを除く外国人野手が振るわなかったこともあり、両者が前評判通りの力を発揮すれば、打線に大きな厚みをもたらすだろう。

 また、ドラフト会議では1位指名の剛速球サウスポー・細野晴希をはじめ、スケールの大きな選手を中心に獲得。現役ドラフトでも移籍選手の中で最年少となる22歳の水谷瞬を選択するなど、今後を見据えた補強にも余念がなかった。昨季はファームで好成績を残した若手が少なかったため、ドラフト戦略においては即戦力よりも将来性を重視したと考えられる。3年目を迎えた新庄剛志監督へのサポート体制と将来性のバランスを見事に取った、日本ハムの補強戦略に高評価を与えても異論は少ないだろう。

西武 評価B

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 松井稼頭央監督の1年目となった昨季は5位に終わった西武。投手陣はリーグ2位の防御率を記録するも、打線がリーグワーストの得点にとどまったことがチームの低迷を招いた。その野手陣では、過去3度の本塁打王に輝いた山川穂高やチーム2位の15本塁打を放ったマキノンといった計算のできる強打者が退団。その代わりとして、爆発力を秘めた2人の助っ人スラッガーを新たに加えている。

 1人目のアギラーは、メジャー通算114本塁打を記録しており、今オフに各球団が獲得した新外国人野手の中でトップレベルの実績を誇る目玉選手。もう1人のコルデロも、メジャーの直近2シーズンで108試合に出場して14本塁打を放ったパワーの持ち主だ。チームに不足する長打力を改善するために、最大限の手を打った形といえるだろう。また、近年の西武は外野手の打力に大きな課題を抱えているが、新戦力として加わったのはコルデロのみ。その一方で主力級の愛斗を現役ドラフトで放出したが、二軍で好成績を残している蛭間拓哉や長谷川信哉など若手有望株を一軍で起用しながら成長を促す方針になりそうだ。

 一方の投手陣は、ドラフト会議で目玉選手の武内夏暉を3球団競合の末に獲得。強力な先発ローテーションに有力な左腕が加わったほか、即戦力の投手を数多く補強した。チームはFA権を行使した平井克典との再契約こそ果たしたものの、森脇亮介や佐々木健が長期離脱中のため、投手の層を厚くする必要があった。山川のFA補償で加入した甲斐野央、昨季メジャーで45試合に登板したアブレイユ、社会人ルーキーの糸川亮太ら、リリーフとして活躍が見込める選手を数多く獲得することに成功している。今シーズンは若手選手の成長と、助っ人スラッガー2人の打棒がチーム浮上のカギを握っている。

楽天 評価D

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 球団創設20周年を迎える楽天。今江敏晃監督率いる新体制がスタートを切るところだが、今オフの補強事情は寂しいものとなっている。チームにとって最も痛かったのは、絶対的なクローザー・松井裕樹のメジャー移籍だ。今江監督はこの対応策として新守護神に則本昂大を起用する構想を明かしているが、見立て通りに抑えの問題が解決したとしても、先発陣から昨季のチームで唯一規定投球回に到達したエースが抜けることになる。他にチームの退団者を振り返ると、炭谷銀仁朗や西川遥輝といった経験豊富な選手が数多く自由契約となった。高年俸の選手が複数退団し、昨季リーグ2位だったチーム総年俸において大幅なコストカットが行われている。

 一方で、チームに加わった新戦力に目を向けると、ここまで外国人の加入はポンセとターリーのみ。両者はNPBで一定の結果を残しているものの、昨季リーグワーストの防御率を記録した投手陣を立て直すには、やや心もとない補強内容だ。現時点で支配下登録の外国人選手は4名しか在籍していないため、追加の補強が行われる可能性はあるが、他球団と比較すると動きの鈍さは否めないだろう。ドラフト会議では、大学日本代表に選出された左腕の古謝樹を1位指名すると、2位と3位では坂井陽翔、日當直喜と高校生投手を続けて獲得。先発ローテーションの高齢化が課題となっているため、将来性に優れる投手を上位で固めて世代交代の準備を進めた。

 改めて今オフの補強状況を振り返ると、厳しい評価にならざるを得ないのは事実だろう。先述の守護神・則本に加えて主砲・浅村栄斗の三塁転向など、大胆なアイデアでチーム改革を試みる今江新監督の手腕に期待がかかるところだ。

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著者プロフィール

日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

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