220センチのフィリピン代表が河村勇輝と横浜で競演 NBA候補2人が生む阻止不可能なプレーとは?

大島和人

止めようがないアリウープ

河村(中央)の精度が高いパスがカイ・ソットを生かすだろう 【(C)B.LEAGUE】

 さらに30日の試合で河村がチャレンジしたように、ソットには「上」のパスコースがある。220センチのソットが腕を伸ばしてジャンプした場所にピンポイントでパスが合えば、誰もそこには届かない。河村や他選手との連携が合えば、カイ・ソットのアリウープは阻止不可能なプレーとなるだろう。

 河村は言う。

「これまでやってきた中でも、あれだけロブパスをキャッチして、リングにアリウープできる選手はなかなかいなかったです。バスケットを彼とやっていて、すごく選択肢が広がって、面白いし楽しみです」

 カイ・ソットも二人のプレーを楽しみにしている様子だった。

「横浜に来て(河村)勇輝と会う前から、もちろん彼が非常に素晴らしい選手だと知っていましたし、一緒にプレーすることを楽しみにしていました。得点能力が高く、プレーメイクもアシストもできる素晴らしいポイントガードだなと思っていました。ビッグマンとして、そういった能力のあるポイントガードとプレーできることは、すごくワクワクする、楽しみな状況です。これから試合を積んでいく中で、さらにコンビネーション連携が良くなるし、自分も試合勘やコンディションは上がっていくはずです。勇輝とカイのコンビネーションを高めていけたらなと思います」

 現場で取材していた筆者にも「この二人は合うな」「カイ・ソットはビーコルで生きるな」という第一印象はあった。青木HCは選手の強みを引き出してノビノビとプレーさせる手腕に長けた指揮官。だからこそ河村のブレークも実現したわけだが、カイ・ソットにも同じような現象は起こり得る。

守備、外国籍との併用とチームへの影響大

 守備についても彼への期待は大きい。ゴール下のレイアップやジャンパーに対するリムプロテクションは圧倒的で、チームは「ハンドラーにゴール下で打たせる」ところから逆算して守備ができる。

 さらにカイ・ソットは「アジア特別枠」なため、外国籍選手2名と同時にコートに立てる。横浜BCにはジェロード・ユトフ、デビン・オリバーらハンドラーのスキルを持つ外国籍選手がおり、彼らを3番(スモールフォワード)に配置した上でカイ・ソット、ジョシュ・スコットと併用するオプションもあるだろう。

 もちろんそこが極めて高い壁であることは大前提だが、若く能力に恵まれた二人はアジアのバスケット界における稀少な「NBA候補」でもある。いつかこの港町から大海に出ていく日も来るだろうが、だからこそ2人の競演を楽しめる日々は貴重だ。アジアを代表するヤングスターが、どんな相乗効果を生み出すのか――。2023-24シーズンの後半戦を楽しみに見守りたい。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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