“ストイックな男” A東京のライアン・ロシターが月間MVP初受賞…コート上のリーダーとしても活躍

大島和人

オールラウンドな活躍を評価され、11月の月間MVPを受賞 【提供:アルバルク東京】

 Bリーグの月間MVPに相当する「B.LEAGUE Monthly MVP by 日本郵便」は、選考委員長の佐々木クリス氏をはじめとした選考委員による合議で決定している。2023-24レギュラーシーズンの11月はアルバルク東京のライアン・ロシター選手が受賞した。

 ロシターは34歳で、2013年の来日から今季で11シーズン目。2019年12月には日本国籍を取得し、「帰化選手」としてプレーしている。206センチ105キロとビッグマンにしては小柄だが、それを補ってあまりあるスキルと「ウイニングメンタリティ」を持つプレーヤーだ。

 11月は5試合すべてで2ケタ得点をマークし、1試合平均12.6得点7.4リバウンド3.2アシストを記録。同月の5連勝など、A東京の好成績を支えている。今回はそんなロシター選手がインタビューに応じ、チーム好調の理由や自身のメンタリティ、日頃の生活などについて率直に語っている。

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11月のチームを5連勝に導き、自身は初の月間MVPに

――2023年11月の「B.LEAGUE Monthly MVP by 日本郵便」受賞、おめでとうございます。ロシター選手は(Bリーグ発足以前に)NBLで月間MVPを受賞していますが、Bリーグでは2020-21シーズンにこの表彰が始まってから初受賞です。ご感想はいかがですか?

 非常に光栄なことだと感じています。個人的な表彰を受けたこともうれしいですが、やはりチーム全体がいい成績を残した結果が、月間MVPとして反映されているのだと思います。11月(のアルバルク東京)は5連勝でしたが、もしチームが負けてしまったら、おそらく月間MVPにはならなかったはずです。だから、チームとして感謝したいと思います。

――月間MVPは昨シーズンから佐々木クリス氏、A東京でプレーしていた正中岳城氏といった専門家が議論して決めています。正中さんは「ディフェンス、オフェンス問わないオールラウンドな活躍」、「リーダーシップと仲間を生かすプレーによってチームレベルを引き上げた、安定感の拠り所となる貢献」を選出理由に挙げています。こういった表彰は個人のスタッツが重視されがちですが、今回は「それ以外」が重視されました。

 そのようなコメントをいただけてうれしいです。自分としてもオフェンス、ディフェンスの両方でチームを生かすことをしっかり考えながら、コート上でプレーしています。得点、リバウンドだけでなく、相手の中心選手に対するディフェンスも自分の役割です。そこにプラスして、リーダーシップも取って、チームが必要とすることを心がけて毎試合プレーしています。

――11月はサンロッカーズ渋谷との2試合、水曜の茨城ロボッツ戦、秋田ノーザンハピネッツとの2試合で合計5試合ありました。特に印象に残っているカードはありますか?

 もちろんSR渋谷戦です。ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチがいて、田中大貴、小島元基といったかつてA東京に在籍した選手もいる相手との戦いでした。自分の(ブレックス時代の)元チームメートであるジェフ・ギブスもいましたよね。アリーナ立川立飛でプレーしたこともあって、いろいろな思いがこみ上げる試合になりました。

 SR渋谷戦はそれぞれの試合の前半で、アグレッシブにプレーする、テンポアップすることを心がけました。「前半」、「スタート」が重要でした。深い意味があるこの2試合をしっかりと取れたことは、非常に大きかったと思います。水曜日の茨城戦を挟み、秋田と戦いました。ここは非常にフィジカルなチームですし、秋田は難しいアウェイです。それでも5連勝できたことは、チームをいい方向に向ける素晴らしい結果でした。

SR渋谷戦では日本代表のジョシュ・ホーキンソンとマッチアップ 【提供:アルバルク東京】

――11月11日の秋田戦は相手を48点に封じる驚異的なディフェンスを見せました。A東京の失点数はB1全体でも圧倒的な少なさですが、秋田戦に限らずなぜこれだけディフェンスが機能しているのですか?

 個人もそうですけど、チーム全体で「ディフェンスを楽しむ」気持ちを持てています。我々のチームは得点能力のある選手が多くて、どの選手も高いスキルを持っています。スキルを生かすためにはまずディフェンスです。しっかりと相手を食い止めてからのファストブレイク、トランジションからのイージーバスケットにつなげるためにも、まずはディフェンスからという感覚があります。「チーム全体で止めてやろう」という意思が我々にはあります。

――スイッチ、ローテーションといった部分でA東京は他チームよりも複雑な戦術を取り入れているように見えます。遂行する選手としてはどう受け止めていますか?

 選手の特徴が大きいと思います。バックコートに小酒部泰暉、安藤周人、ザック(・バランスキー)、吉井裕鷹といった選手がそろっていて、セバス(セバスチャン・サイズ)や自分もそうですけど、スイッチしたあと、ミスマッチにならないケースが多いです。ガード陣もサイズがありますので、相手のビックマンに対してしっかりと守りきれます。逆にセバスと自分はクイックネスに自信のあるビッグマンですから、戦術、ディフェンスのストラテジーを変えても、それをチーム全体で遂行できる下地があります。

――ロシター選手はA東京に加入して3シーズン目で、デイニアス・アドマイティスHCは2シーズン目です。選手のコンディションもあると思いますが、今シーズンの戦績や試合内容は明らかに上向きです。「ここが良くなった」と感じる部分はありますか?

 チームケミストリーは勝手に良くなるものではありません。アドマイティスHCはチームワークを最優先させる指揮官です。少しでも下を向くとか、ネガティブなボディーランゲージを見せたら、ミーティングでもそういった映像を見せつつ「こういったことをやってはいけない」、「我々はそのようなチームではない」と選手に指摘します。今はチーム全体で、それをしっかりと理解していると思います。試合中もスターター、ベンチ関係なくお互いを応援して、盛り上げています。一人ひとりが犠牲心を持って、素晴らしいチームワークを実現させています。

日本でのプレー経験が長く、コート上でも積極的にコミュニケーションを取っている 【(C)B.LEAGUE】

――ロシター選手も間違いなくエナジーを出す、周囲を鼓舞するという姿勢があるタイプです。アドマイティスHCは東欧のリトアニア出身で、ロシター選手はアメリカ出身ですけど、同じ感覚を共有できていそうですね。

 アドマイティスHCと似ている部分は、本当に多くあると思います。HCが求めていることをしっかりと受け止め、そのメッセージをチームメートにも伝えられるよう努力しています。HCとの信頼関係がありますし、コミュニケーションも非常によく取れていると思います。HCが考えていることを自分でも察知した上で、チームに「プラスメッセージ」を届けています。

――今シーズンのA東京はいくつか変化がありましたが、ポイントガードはテーブス海、橋本竜馬などが新戦力として加わりました。テーブス選手は宇都宮でチームメートでしたし、仲がいいと聞いていますが、彼の加入についてはどうですか?

 昨シーズンはなかった要素が(テーブス)海の加入から生まれたと思います。非常にスピーディーなガードですし、ペースも非常にアップテンポにできる選手です。速い展開は昨シーズンになかった強みですよね。海は毎試合ハードにプレーしてくれるし「学ぼうという姿勢」が素晴らしい、伸びしろのある選手と思います。彼の調子がチームを上向きにしてくれています。

――毎年新加入選手が入るなかで、ロシター選手はどの選手ともコミュニケーションをしっかり取れているように見えます。コミュニケーションの部分で、何か気をつけていることはありますか?

 本人に「正直にプレーすること」、「正直にチームと接すること」を最初に伝えます。もちろん自然に溶け込める選手もいますし、なかなか溶け込めない選手もいます。セバスと小酒部は性格が対照的な人間ですけど、コート上に入ったら同じ目標のなかで、ポイントをしっかりと合わせていく仲間です。最初に「正直になれば必ずチームに溶け込める」と話しています。

――「正直になる」という意味を、もう少し具体的に説明していただいてもいいですか?

「アカウンタビリティー(責任感を持つこと)」が大事だと思います。チームのなかで、例えばチームメートがミスをしたら、自分はお互いを正しい方向へ向くように「それをやってはいけないと」と正直に言っています。それがお互いのためになってくると思います。腹を割って、正直に話していくことが大事です。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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