1年目から大活躍!? ドラフト指名された即戦力候補たち

ドラ1大学生投手の知られざる高校時代【武内夏暉編】 西武1位の大型左腕、「芯を食われない直球」に才能の片鱗

加来慶祐

3球団が競合した武内(左)は、この左腕の1位指名を最初に表明していた西武が交渉権を獲得。背番号は21に内定した 【写真は共同】

 今年のプロ野球ドラフトは、1位指名12人のうち8人が大学生投手だった。そのなかでも特に人気を集めたのが、國学院大の武内夏暉と青山学院大の常廣羽也斗。ともに九州出身の2人には、甲子園出場歴はなく、東都大学野球で名を揚げるまでは全国的には無名だったという共通点もある。これからプロの世界に飛び込む両投手は、どんな高校時代を過ごしたのか。当時の監督の証言をもとに紹介する。最初にお届けするのは、西武が交渉権を得た武内の高校時代だ。

高校3年時の登板試合数はチーム3位だった

 國學院大2年秋に12イニングで防御率0.00という鮮やかな東都デビューを飾り、3年時からは先発に回ってエースとなった武内夏暉。MVPを受賞する活躍で同年秋の優勝に貢献すると、その後の明治神宮大会でも準優勝の一翼を担った。4年時には日米大学野球の日本代表にも選出されている。

 最速153キロのストレートに、落差の大きなツーシーム。さらにスライダー、チェンジアップ、カーブを器用に駆使した投球術が高く評価された185センチの大型レフティ。今秋のドラフトでは「大学ナンバーワン左腕」の呼び声にふさわしく、1巡目入札でヤクルト、西武、ソフトバンクの3球団が競合し、抽選の結果、西武が当たりクジを引き当てた。

 大学時代は4年秋に向かって目覚ましい成長を遂げた武内だったが、福岡県立八幡南高時代に甲子園出場はない。八幡南で武内を指導した福盛徳之監督は「いずれはプロに行く投手だと思っていた」と振り返るが、当時の武内は必ずしも傑出した大エースというわけではなかった。

「武内の3年時は彼を含めて左が3枚いて、ひとつ下にもキレのいい140キロ弱を投げる右の濵本建(九州産業大3年)という投手がいました。あの代は相手を見ながらローテーションを決めていたので、決して彼ばかりに頼っていたわけではありません。投手陣の登板試合数を見ても最多が濵本で、武内はチーム3位に過ぎませんでした。おそらく近隣の学校には、濵本がエースだと思われていたはずです」

 福岡大会では2年春秋、3年春の4回戦進出が最高で、3年夏は3回戦で涙を飲んだ。その試合で敗戦投手となったのは、先発して6回7失点の武内だった。

最初は打者としてのイメージが強かった

八幡南では絶対的なエースではなかったが、すでに才能の片鱗を覗かせていた。福盛監督が特に感心したのがストレートの質で、しっかりミートされたヒットは「あまり記憶にない」という 【武内投手の御家族提供】

 もちろん、福盛監督は185センチの長身左腕というだけで「いずれはプロに」と感じたわけではなかった。3年夏時点でストレートの球速は常時120キロ台後半に過ぎなかったが、初速と終速がほぼ変わらないため、「ストレートはまともに芯を食われないんです。打たれる時は、決まって変化球に頼る時。とにかく、真っすぐを綺麗に打たれたヒットは、あまり記憶にありません」と武内ならではの球質の良さを強調する。さらに「テイクバックがコンパクトでフォームも綺麗。制球力も高く、当時はチェンジアップが良かった」と続けた。

 中学時代の武内は、折尾愛真中軟式野球部の一期生としてプレーした。そして、同中学校の監督が八幡南OBだったこともあり、福盛監督と繋がったのである。

「第一印象は体の大きさ。そして、バッティングですごい飛距離を出していたので、打者としてのイメージが強かったです」

 高校1年時の武内は、夏までに練習試合で1イニングを投げたのみ。中学2年時に左肘を手術していたため、無理をさせられなかったからだ。

 1年秋の新チームからは4番・一塁手として出場した。3回戦でこの大会で優勝する東筑に1-11というワンサイドゲームで敗れたが、武内は相手エースの石田旭昇からタイムリーを放っている。石田はその年の夏に甲子園のマウンドで投げており、さらに翌年のセンバツでも登板し、高校卒業後は法政大でプレーした右サイドハンドだが、武内は持ち前のコンタクト能力の高さを見せて石田を攻略。打者としての非凡さをアピールしたのだった。

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著者プロフィール

1976年大分県竹田市生まれ。東京での出版社勤務で雑誌編集などを経験した後、フリーランスライターとして独立。2006年から故郷の大分県竹田市に在住し、九州・沖縄を主なフィールドに取材・執筆を続けているスポーツライター。高校野球やドラフト関連を中心とするアマチュア野球、プロ野球を主分野としており、甲子園大会やWBC日本代表や各年代の侍ジャパン、国体、インターハイなどの取材経験がある。2016年に自著「先駆ける者〜九州・沖縄の高校野球 次代を担う8人の指導者〜」(日刊スポーツ出版社)を出版した。

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