大阪体育大学で進む「スポーツ廃棄物」再利用 マネジメント専攻学生が折れたバットで箸制作 バレー・テニスボールは小中校へ スポーツSDGsサイト運用

大阪体育大学
チーム・協会
 大阪体育大学で、各クラブ活動で出るスポーツ廃棄物を再利用する取り組みが進んでいる。硬式野球では、スポーツマネジメントコースの学生が折れた木製バットを回収し箸として再利用するプロジェクトを企画、実施した。

廃棄バット再利用プロジェクトを企画・実施した福永晴翔さん(中)、正井信之介さん、大仲菜奈さん 【大阪体育大学】

 スポーツマネジメントコース藤本ゼミは数年前、大体大で1年間に廃棄されるスポーツ用品の量を調べた。テニスボール約2500球、バドミントンのシャトルコック約2900個、木製バット約360本、シューズ約200足、ウェア類約520枚で、これだけで購入時の総額は850万円に達するという。
 廃棄バット再利用プロジェクトは、藤本ゼミの福永晴翔さん(市立函館)、正井信之介さん(須磨友が丘)、大仲菜奈さん(久米田)=いずれも体育学部3年=が実施した。代表の福永さんによると、昨年夏ごろ、ゼミでスポーツとビジネスに関する発表内容を相談する中でスポーツSDGsで何かできないかとの話が出た。硬式野球部男子の正井さんらから「折れたバットの廃棄が大変」と話を聞いた福永さんが、廃棄バットの再利用を大学の「夢プロジェクト」として申請した。
 「夢プロジェクト」は、応募があった、学生が企画・実行するプロジェクトのうち年間数件を採択して助成金を交付し、積極的な社会参画や知的好奇心、豊かな創造力の醸成をはかる制度だ。
 福永さん、正井さん、軟式野球部女子の大仲さんがプロジェクト実施に向けて動き出した。

廃棄バットを再利用した箸「かっとばし!!」 【大阪体育大学】

 硬式野球部男子では、折れた木製バットは室内練習場に置いたケースに集められ、ケースがいっぱいになると、大学の廃棄物収集スペースに持っていく。大学が他の廃棄物とともに有償で廃棄物業者に処分してもらっていた。
 高校時代の金属バットとは違う木製バットの打ち方、扱い方に慣れずにバットを折る部員も多いという。3人が野球部にプロジェクトの趣旨を伝えると、松平一彦監督は「素晴らしい活動。ぜひ実現してほしい」と全面協力を申し出た。
 3人は廃棄バットを木材として再利用する会社を探した。神戸で行われた環境イベント会場に行って業者を探したり、各社のHPをチェックしたりし、8社をリストアップ。「回収費用は負担してもらえるか」「次年度以降も継続できるか」などの選定基準を電話やメールで確かめ、福井県小浜市の箸メーカー、株式会社兵左衛門との連携を決めた。

折れたバットを回収 【大阪体育大学】

【大阪体育大学】

 兵左衛門社によると、適度な堅さとしなやかさを併せ持つバット材は箸の素材としても最適といい、すでにプロ野球各球団の箸「かっとばし!!」を制作していた。福永さんらは運送業者の日本通運と連絡を取って回収マニュアルを作り、1月末に廃棄バット約100本を回収した。
 「かっとばし!!」への加工費用は、採択された夢プロジェクトの助成金を充てる。箸には大学のロゴマークなどを入れ、4月上旬に60膳が完成し、硬式野球部が野球部のPRツールや大学広報ツールとして使う予定だ。
 福永さんは「数多くの人にスポーツの価値や魅力を伝えたい」とスポーツマネジメントを学ぶために、大体大に入学した。次年度からは夢プロジェクトの助成金は下りないが、「廃棄バットの再利用を学内で広く知ってもらい、事業を継続する方策を考えたい」と話す。
 このほか、大体大ではテニス部女子とバレーボール部女子が2月、古くなり廃棄する予定だったテニスボール1050個、バレーボール24個を地元の熊取町の小中学校に寄贈した。テニスボールは小中学校の教室で机や椅子の脚用クッションとして再利用され、バレーボールは休み時間の遊びなどで使われている。

寄贈されたボールを手にする熊取町の中学生 【大阪体育大学】

寄贈されたボールを手にする熊取町の小学生 【大阪体育大学】

 また、昨年4月には「大体大スポーツSDGs」ウェブサイトが開設された。藤本研究室の調査では、全国の大学ウェブサイトでSDGs専用ページがあるのは35%、17目標記載のスポーツSDGs関連活動の報告があるのは12%にとどまるという。大体大ではサイトを通じ、スポーツSDGsに関する取り組みをニュースとして情報発信している。

大阪体育大学スポーツSDGsサイト 【大阪体育大学】

 スポーツはSDGsとは親和性が極めて高く、17の目標のうち、「3 すべての人に健康と福祉を」などに合致するが、一方で大量のスポーツ廃棄物が排出されており、負の要素もある。福永さんは「支える立場でスポーツに携わる者として、スポーツSDGsに取り組んでいきたい。自分の大学でSDGsの観点からスポーツの魅力や価値向上を推進していくことができたら、それは自分にとって大きな誇りになる」と話している。
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