ドジャースキャンプレポート2025(毎週木曜日更新)

日本でのメジャー開幕に選手たちの反応は? 投手・大谷翔平の早期復帰への影響も

丹羽政善

昨年3月、MLB開幕戦に向け韓国入りした大谷翔平。今年の来日はさらなる大フィーバーが予想される 【Photo by Han Myung-Gu/Getty Images】

「韓国開催って、どういう経緯なんですかね? みんな、(来年)日本で開幕戦を開催することは、理にかなっていると考えていますが、なぜ韓国で? と思っているみたいです」

 実はこれが、大谷翔平(ドジャース)の元通訳・水原一平と交わした最後の会話である。昨年3月、韓国に出発する前日のことだった。その1週間後、彼の痕跡はドジャースから消えた。

 その後明らかになった様々な虚言に照らし合わせれば、彼が本当にドジャースの選手らの思いを代弁していたのかどうかわからないが、実際、それほど日本開催に対する選手の抵抗は感じない。

 巨人との親善試合(15日)に登板予定のタイラー・グラスノーは、「本当は去年のシーズン後、プライベートで日本に行こうと思っていたんだ」と明かし、苦笑した。

「そしたら、日本で開幕戦が行われることが決まったので、『あっ、ラッキー』って思って、バケーションで行くことをやめたんだ」

 カブス側でも、ダンスビー・スワンソンなど、「大学のとき、日本の映画を通して侍文化を学ぶ授業を選択していた。日本にはいつか行きたいと思っていたから、楽しみ」と話す。

 一方で、ちょっとがっかりした選手も。イアン・ハップ(カブス)は一昨年12月、新婚旅行で日本へ。数カ月後、日本で開幕戦が行われることを聞いた。

「もう少し前にわかっていればね……」

 とはいえ、こう続ける。

「でも、楽しかったから、またこういう形で日本に行けるのは、嬉しいけどね」

 リリーフのアンソニー・バンダ(ドジャース)などは、「夢が叶った」と興奮気味だ。

「子どもの頃から、ずっと日本に憧れていたから」

――なぜ?

「ポケモンが大好きだった。今もカードを集めている。まだ、インターネットがダイアルアップだった頃から、日本にポケモンスタジアムっていうのがあるって聞いて、調べたりしていた」

 実は、意外にもメジャーリーガーの中にポケモンファンは多い。元阪神のピアース・ジョンソン(ブレーブス)も熱心なコレクターだが、同じブレーブスのクリス・セールのロッカーには、アタッシュケースのようなカードの保管ボックスが、腰ぐらいの高さまで積み上げられている。

 バンダは今回、ポケモン本社を訪問することになっている。

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海外開催による選手たちの体への負担

先月のキャンプ中、ブルペンで投球する大谷を見守るロバーツ監督(写真左) 【Photo by Christian Petersen/Getty Images】

 とはいえ、体への負担は小さくない。現行の労使協定(2022~26)では、5年間で3回以上、特別イベントに参加することはできない、との規定がある。特別イベントとは、海外開催、フィールド・オブ・ドリームス・ゲームなどを指すが、2年連続は不可、という文言はない。よって規定の範囲内ではあるが、メキシコなどで試合を行うのとは、わけが違う。昨年、何人かのドジャースの選手は、韓国から戻ってきてから、しばらく時差ぼけに悩まされた。デイブ・ロバーツ監督もこう明かす。

「米国での開幕戦が始まる頃には、みんな体調が戻っていたが、フリーウェイシリーズ(エンゼルスとのオープン戦)のときには、まだ、アジャストに苦労している選手がいた」

 カブスは11日の試合後、日本へ出発する。日本到着は12日の夜。一方のドジャースは、12日早朝にキャンプ地を発ち13日の午後、日本に到着する。そして、夕方から練習をするそう。その方が時差ぼけになりにくいという睡眠の専門家のアドバイスによって、そういう日程が組まれた。

 グラスノーによれば、昨年は飛行機に乗ると、睡眠に関する小さなポーチのようなものが用意されていたとのこと。「中にはサプリメントのほか、機内ではどのタイミングで寝るべきかという小冊子が入っていた」。おかげで、「韓国に着いてからは、体が楽だった」というものの、アメリカに帰ってきてからは、「体が重かった」と振り返った。

 結局のところ、そうした体への負担、配慮が大谷の投手としてのリハビリをスローダウンさせる一因ともなった。

 当初ドジャースは、日本へ行くまでに1回は、大谷をライブBPで投げさせる予定だった。そのペースに沿って大谷も2月中旬以降、2〜3日に1回の割合でブルペンに入った。しかし、25日に30球を投げたのが最後となっている。

 3月5日朝の会見でロバーツ監督は、「ライブBPの予定はわからない。なぜ、ブルペンに入っていないのか、聞いていない」と話したが、翌6日の試合後、「トレーナーに確認した」として、こう明かした。

「試合が始まったので、少しペースを落とそうということになったようだ。ブルペンでの強度を考えると、試合への準備、出場が負担になる。いまは、打者として開幕に間に合わせることを優先することにした」

 投手コーチのマーク・プライアーが、こう補足している。

「オフに左肩脱臼の手術もしている。あれは、決してマイナーなものではない。そこが、復帰プロセスを複雑なものにしている」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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