「大谷マニア」のシーズン総括

ゴングが鳴ったFA大谷翔平の争奪戦 「どこへ移籍するのか?」をベン・バーランダーが予想

丹羽政善

今オフにFAとなった大谷翔平は、果たしてどのような選択をし、どのような未来を選ぶのだろうか 【Photo by John McCoy/Getty Images】

 日本時間11月2日にワールドシリーズが終わり、翌日、大谷翔平は正式にFA(フリーエージェント)となった。5日間は、エンゼルスに独占交渉権があったが、合意には至らず、全チームとの交渉が解禁となっている。もっとも、今年の開幕までに再契約できなかった時点で、この流れは既定路線。

 8日から、アリゾナ州スコッツデールでGM(ゼネラルマネジャー)会議が始まり、そこに全チームのGM、GM補佐、代理人らが顔を揃えたが、有り体に言えば、ここで大谷争奪戦のゴングが鳴ったーーというのが一連の経緯だ。

 では、どこへ移籍するのか? FOXスポーツのベースボール・アナリストで、「翔平を追いかけて」という同局の特番で大谷にインタビューもしたベン・バーランダーに予想をしてもらった。

エンゼルス残留の可能性、東海岸へ移籍する可能性は?

 まずは、エンゼルスと再契約する可能性だが、「信じることは難しい」という。

「可能性という言葉を使うなら常に(そうなる可能性は)あるけど、現実的ではない。エンゼルスに戻るよりも可能性の高いシナリオが、(他に)いくらでもある」

 大谷が“勝てるチーム”、“プレーオフに行けるチーム”を選択するということが前提だが、そうなると、「エンゼルスはやはり選択肢から外れる」ときっぱり。

「もちろん(今季はチーム内に)多くのケガがあったけど、昔のように常に優勝争いができるチームではなくなってしまったから」

 2000年代は、02年にワールドシリーズ優勝。地区優勝を5度している。しかし、一転して2010年代は、14年に一度、地区優勝をしただけ。プレーオフ出場もそのときが最後。16年以降は、勝率がずっと5割を下回っている。

 大谷と再契約したとしても、その場合、大谷(5000万ドルと想定)、マイク・トラウト(約3712万ドル)、アンソニー・レンドン(約3857万ドル)の3人の年俸総額が、チーム総年俸予算(来季は2億3000万ドル前後と想定)の半分を超える。

 これでは補強もままならず、大谷が再契約することは、逆にチームの首を絞める。となるとやはり、残留という可能性は極めて低くなるというわけだ。

 となると、どこが名乗り挙げるかだが、「ヤンキースやメッツが絡んできても不思議ではない」とバーランダーは指摘する。多くは西海岸の球団との契約を予想しているが、「必ずしも西海岸のだけが選択肢ではないと聞いている」とのこと。

 ただともに、障害がある。バーランダーも「ヤンキースの状況は少々ややこしい」という。なぜなら、ヤンキースにはジアンカルロ・スタントンがいるからだ。

 仮に毎日、スタントンが右翼を守ることができるなら、指名打者の枠が空く。しかし、彼は故障がちで、ここ数年は指名打者での出場が増えている。バーランダーも「スタントンには多くのお金を払っているから、彼に外野をずっと守らせることは難しい」と話す。まだ33歳だが、投資を無駄にしないためには、少しでもリスクを減らす必要がある。それには指名打者がベストとなる。

 それでも彼らを選択肢から外せないのは、「彼らはヤンキースだから」とバーランダー。「莫大な資金がある」。

 スタントンの契約の一部はマーリンズが負担しているが、ヤンキースがさらに一部を負担して放出し、指名打者を空けるという荒業を繰り出すこともまた、否定できない。

 メッツは、再建モードに入った。今季46本塁打を放ったピート・アロンソの放出も噂される。プレーオフを争えるようになるには、少なくとも向こう数年はかかるのではないか。

 となると、大谷獲得レースからも撤回かーーと見られているものの、オーナーのスティーブ・コーエンには莫大な資金力があり、「翔平と契約できるなら、方向転換をするかもしれない」とバーランダーは予想する。「再建を撤回し、投資を続けることでチームを立て直そうとするかもしれない」。

 大谷が、再建中のチームと契約する可能性は低く、その時点でメッツは選択肢から外れるが、大谷と交渉し、脈があると感じれば、資金を投じてスター選手をかき集めるのではーーというわけだ。トレードの噂が燻るトラウトも同時に獲得、という、彼らにしか出来ないであろう補強策も考えられる。そこが、中途半端なエンゼルスとは異なる。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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