連載:大谷翔平が席巻するMLB後半戦の行方

大谷翔平の魔球はこうして生まれた 本来の“投手・大谷”が戻ってきている

丹羽政善
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復活の兆しを見せる投手・大谷翔平は終盤戦、プレーオフに向けて、どんな伝説を残してくれるのか 【写真:Getty Images】

決してまねできないジャイロ回転

 今年7月(以下、すべて現地日付)、シアトルで行われた大リーグのオールスターゲーム。「ホームランを狙う」と公言していた大谷翔平(エンゼルス)に、「あの1球は惜しかった。捉えた! と思った球はあったか」と聞くと、「2打席目の初球ですかね、カーブ。これはまぁ、惜しかった」と試合途中で行った会見で明かした。

 紙一重か? バットを通す位置は悪くなかった?

「そうですね。打ったかなと思ったんですけど、ちょっとカーブの曲がりが大きくてファウルになったって感じですかね」

 その時のマウンドには、2021年にチームメートだったアレックス・コブ(ジャイアンツ)がいた。やはり試合途中で取材に応じたコブに、「大谷は、あの初球を捉えたと思ったようだ」と伝えると、笑いながらいった。

「ヒヤッとしたよ。ここで翔平が、3階席に打つのを見たことがあるから、恥をかかなくてすんだよ。できれば、歩かせたくなかったけど」

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 そのコブの決め球はスプリットだが、2年前、大谷がブルペンに入ると、度々、そこへ足を運んだ。なぜ、大谷のスプリットがあそこまで落ちるのか知りたかったからだ。ある日、彼が見学を終えて下がってきたときに、やはりジャイロ回転をしているのか? と聞くと、「している」と興奮気味に教えてくれた。

「一般的なスプリットはバックスピンだ。自分は横回転をさせたい。バックスピンよりは落ちる。翔平の回転は、一番落ちるジャイロ。理論的には分かっていても、簡単に投げられる球ではない。実際に投げているのを初めて見た」

 コブは、手にしていたボールを使って回転の様子を示してくれたが、大谷はそれを意図的に投げていると思うか? と聞けば、即答だった。

「もちろんだ。翔平は1球1球、データを確認しながら投げている。ボールの回転する様子も、ハイスピードカメラを使って把握している」

 大谷は、普段からキャッチボールでも真後ろから、通訳の水原一平氏に球速を測ってもらっている。それは日によって強度のメニューが異なるからで、その日の上限が70%だとしたら、それを越えないよう、あるいは、下回らないように球速を設定して投げている。
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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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