「大谷マニア」のシーズン総括

ゴングが鳴ったFA大谷翔平の争奪戦 「どこへ移籍するのか?」をベン・バーランダーが予想

丹羽政善

「ドジャースだけにはその要素が考えられない」

この6年間でエンゼルスの「赤」を自分のものにした大谷翔平。来季は何色のユニフォームに袖を通すのだろうか 【Photo by Tim Nwachukwu/Getty Images】

 ダークホースにはマリナーズを挙げる。「移籍候補先としては常にトップ3〜4だ」。その理由については、「(戦力的に)一番フィットするからだ」とバーランダーは話す。

 マリナーズの戦力を見ると、先発にはローガン・ギルバート、ルイス・カスティーヨ、ジョージ・カービー、ロビー・レイ、マルコ・ゴンザレスらがいて、質、量とも豊富だ。ただ、来年のオフにはゴンザレスがFAとなる。その穴を埋める先発もいるが、ここに投手として復帰する大谷が入れば、ブライス・ミラー、ブライアン・ウーらをトレードして、懸念となっているオフェンスを補強できる。

 なによりここ何年も指名打者が不在。そのためにも大谷が必要で、再来年以降は、豊富な投手陣を使ってさらなる打線強化を目論んでいる。よって、「チーム編成の面で理にかなっている。完璧にフィットする」とバーランダーも強調するのである。

 マリナーズの年俸総額は、2023年が約1億8000万ドル。今のところ、来季はさらに下がる。大谷と年俸5000万ドルで契約しても、ぜいたく税がかかるライン(24年は2億3700万ドル)を下回る。彼らは予算面でも大谷獲得の準備をしてきたと言えるのかもしれない。

 とはいえ、バーランダーはドジャースを本命とした。

「いろんなチームが候補に挙がっている。それなりに納得できる理由もあるけど、"やはり違うな"という理由が少なくとも一つはある。ただ、ドジャースだけにはその要素が考えられない」

 現実的にドジャースが必要なのは先発投手だ。家庭内暴力で逮捕されたフリオ・ウリアスはFAとなり、そもそもメジャー復帰が絶望的。ダスティン・メイは夏にトミー・ジョン手術に踏み切り、早くても復帰は来季後半。フリーエージェントとなったクレイトン・カーショーは左肩の手術に踏み切り、再契約したとしても復帰は夏の見込み。

 大谷を加えても、来季は投げられないが、「ウォーカー・ビューラーが復帰する」とバーランダー。それでももう一人は必要だが、「そもそも彼らには、先発と翔平の両方を獲得する十分な資金がある」と指摘した。

「もしも翔平と山本が(由伸)がドジャースと契約して、(2年後に)同じ先発ローテーションで投げているとしたら、それはなかなかクールだよね」

 彼らは昨オフ、まったく補強に動かず資金をセーブした。一気につぎ込むということか。

 本命ドジャースに対し、資金力のあるヤンキース、メッツがどう揺さぶりをかけるのか。対して、戦力的にフィットするマリナーズは、どうアピールするのか。

 大谷獲得レースに絡む顔ぶれが、早々に見えてきた。

2/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント