古賀紗理那が振り返る五輪予選 各試合の局面で感じていたこととは

田中夕子

トルコ、ブラジル戦での局面を振り返って

「この経験ができてよかった」と心から言える1年後に 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――トルコ戦の2、3セットはどちらも競り合いでした

 2セット目の最後、競り合った場面でもトルコはすごくいいサーブを打ってくる力がありました。サービスエースを取られる前の1本はアウトだと思ったんです。結果的に崩されて相手の得点になったので「伸びてきているね」という話をしていて、次の1本を見逃したらインだった。監督からも「勝負所でのメンタルが足りない」と言われて、確かにそうだな、と思ったし、タラレバなんですけど、勝負所で普段の練習では絶対にしないようなジャッジミスや、ラインクロスが出たのも大きな経験だと思うんです。だから「この経験ができてよかったね」と心から言える1年後にしないといけないと思います。

――翌日はブラジル。しかも勝てば五輪という大一番でした

 不安は全然なかったです。自分で言い聞かせたのももちろんあったんですけど、私は変わらず楽しみのほうが大きかった。私たちより世界ランキングは上だからブラジルが勝つだろうと予想されていただろうけど、それで勝ったらめっちゃ面白い、というマインドで臨みました。

――4セット目、古賀選手は交代してベンチスタートでした

 コンディションの問題はありません。でもシャットされる本数が多かったので、後がないからリズムを変えるために代えたんだろうなと思っていました。チームで勝てばいいと思ったし、自分が入っていなくても(オリンピック出場の)切符が取れれば何でもいいと割り切っていたので、いつ呼ばれてもいいように準備していました。

――3セット目終盤、打ち切れない場面も多くありました

 確かにフェイントは多かったです。ですが、もしあの時に打ったらシャットされていたと思います。少し細かい話になってしまうんですけど、トスが来た時点で上からブロックに囲まれていて、クロスに抜いてもリベロがいるのが見えた。ブロックに当てて飛ばそうとも考えたのですが、上から来ているブロックに対して下から打っても、どシャットされていたはずです。ブロックに対してトスが中に入っていたので、そこからだとブロックに当てて外にも出せない。結果的にティップ(軟打)しかできない状況で、自分で修正できればよかったのですが、決める方法が考えられませんでした。

 でも実は、合宿中から試合でそういう状況になった時、どうやって決めるかというのはずっと考えて取り組んできたんです。徳元(幸人)コーチにも「トスが内側に入って、その時点でブロックに上から囲まれている状況になったら、どうやったら決めますか?」と聞いたら、「それは決められないからリバウンドをもらうほうがいい」と。トスが(ネットに)近ければリバウンドもできるけれど、トスが(ネットから)離れて低いとリバウンドしようとしてもはたかれて落とされる状況だったので、その選択肢も通せなかった。ああいう状況になった時、もっと自分の選択肢を持っておかなきゃ厳しいというのも自分の課題と反省になりました。

――3セット目の終盤、デュースの場面でサーブミスもあった

 あのサーブは決めに行ったんです。スピードを出すためにゾーン1に打て、という指示が出ていて、そこにリベロがいたのでできるだけスピードを出す、崩すサーブを打つように軌道を低く打とうと意識していました。多少の力みはあったかもしれないけれど、迷いはなかったですね。打った感じも悪くなかったけれど、ネットか、という感じでした。あーやってしまった、という感情はなかったです。

――結果的にそのセットが取れず、試合に負けた、と批判を向けられる立場でもあります

 いろいろ言う人もいるだろうし、ネットで書いたりする人もいると思うんですけど、全然気にしない。でも、自分の責任だとは思っています。サーブミスも勝負しにいったミスではあるけれど、結果的にミスはミスだしセットも取れなかった。スパイクもシャットされるとわかっていても勝負すればよかった、とも考えます。負けたのでそういう思考になっているのかもしれませんね。

 今シーズン、勝つためのチーム、勝てるチームにしたいとずっと思っていたのでそのためのチームづくりはすごく頑張って、力を入れてきました。だけど今考えると、チームのことと自分のことのバランスが難しかったし、チームのことにいきすぎてしまったのも反省です。チームはもちろんですが、自分にも矢印を向けて取り組んでいかないといけない、と思いましたね。
――終わってすぐに円陣をつくり、中心で話をしていました

 負けは負けだから、来年取るしかない。私たちの最大の目標はパリオリンピックでメダルを獲ることだからね、と話しました。終わったばかりなので悔しさもあったし、泣いている選手も多かったので響いたかはわからないですけど、でもちゃんと目標は明確に、という思いで伝えました。

――五輪出場権をかけた戦いはまたここから。とはいえ同じアジアの中国が今回出場権獲得できなかったことも含め、厳しい戦いが続きます

 VNLとパリオリンピック、ピーキングを2回持って行かなければいけないのは大変ですね。VNLも世界ランキングを考えると全部勝たないと、ぐらいの気持ちなのですが、いろいろ考えますよ。出場権を獲得したチームが私たちとランキングを争う相手にメンバーを落として臨むかもしれないとか、イタリア人の監督が率いる国が多いので、監督同士で調整するかもしれない、とか。何があるかわからない。だから地力をつけないといけないと思います。まずは1人1人、個の力がないと組織的なプレーもできないし、絶対にオリンピックへ出たいから、やるしかないですね。

最大の目標はパリオリンピックでのメダル獲得、最後に改めて決意を語ってくれた 【写真:田口有史】

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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