「バレーボールが堅い」柳田将洋が考える今の日本代表の強さ、東京GB移籍理由も明かす

田中夕子

現在の日本代表、今後のビジョンについて語ってくれた柳田 【写真:田中夕子】

 4月7日に発表された今季の日本代表登録選手37名の中に「柳田将洋」の名があった。
 2021年以来2年ぶりの代表復帰で、若手選手に向け、柳田の取り組む姿やプロ意識、覚悟を伝えてほしい、と選考理由が述べられ、合宿当初からアジア大会に向けたB代表で活動してきた。
 ネーションズリーグで銅メダルを獲得した日本代表が強くなったのは、一朝一夕の取り組みではなく、柳田が見せ、つなげてきたものが活かされているのはまぎれもない事実だ。だからこそ、再びあの場所へ。そう願う声も少なくない中、柳田は「これから」をどう描いているのか。
 独占インタビュー後編では、ネーションズリーグで銅メダルを獲得した日本代表について、そして地元・東京を拠点にするグレートベアーズへ移籍の背景、新たなシーズンに向けた熱い思いが語られた(取材日:8月上旬)。

海外挑戦、移籍のメリット

――どの選手が出ても活躍する。だからこそ日本代表でプレーすることが他人事ではなく、自分事になる。なぜこのような流れができてきたと柳田選手は考えていますか?

 個人的には、海外へ出ていく選手が増えていることがデカいと思います。一定の場所にいるだけでなく外へ出る。Vリーグでも移籍が活発になっているのもそこに起因していると思うし、新しいことにチャレンジする、環境から変えたいと一歩踏み出す選手が増えた。そして新たな場所で初めてプレーする選手たちの中でも自分の力が発揮できるようになった、というのが大きいと僕は思います。今のこの状況を見ていたら、これからはもっと海外へ行きたい、移籍をしたい、試合に出たい、というハングリー精神を持った選手が増えてくると思うので、レベルももっと上がると思いますね。

 Vリーグも来シーズンから新リーグ構想を打ち出していて、SVリーグでは外国籍の選手が3人までプレーできるようになるという話も聞きますが、そうなれば単純に試合へ出るための競争も高まるし、出られなくなる日本人選手も増えるかもしれない。そうなった時に「出られなくてもここにいればいい」と思うのではなく、試合に出る場を求めて、世界を1つのフィールドにして日本人選手が戦っていくのもアリだと思います。

――実際に海外移籍を希望、実行する選手も増えてきました

 国内外を問わず、移籍に対してはネガティブな意見を持つ方もいますが、物事は常に賛否両論あるので、ネガティブな意見ばかりに耳を傾けなくてもいいと思うし、そういう考え方もあるよね、と思えばいい。海外市場を見ても、日本人選手の評価は世界でもかなり高いレベルに達しています。飛び込んで、自分の意識で切り開いて変えていく。その象徴が宮浦(健人)選手ですよね。

――確かに。このネーションズリーグ、アジア選手権での活躍、意識、すべて素晴らしかった

 まず顔つき、体つきが変わりましたよね。なかなか試合に出られなかったとはいえ、練習であれだけの選手たちと常にできるというのは絶対的に大きい。彼らが練習中から常に本気でやっているかといえば、体験した立場からすれば半分ぐらいかもしれません。でも相手がどうこうではなく、自分が本気でやればいいわけだし、外国人枠があるポーランドへ外国人として行った。そのプレッシャーを受けながら戦うというのは、簡単なことではありません。プレッシャーを受けながら必死で頑張ってきた分、今代表で爆発させているのを感じるし、彼を見ていると競争の大切さがよくわかる。もともと素晴らしいプレーヤーですけど、意識も身体づくりも取り組み方も、競争の中でいろいろと変わって帰ってきたな、と感じさせられました。

――それがネーションズリーグにもつながった。柳田選手はネーションズリーグもご覧になりましたか? 男子バレーが面白い、という声が高まっていることに関してどのように感じますか?

 面白いというか、バレーボールが堅いですよね。世界で一番じゃないかと思わせるぐらいフロアにボールが落ちない。いろんなポジション、ポジションでピースがはまっているし、その結果、面白いですよね。

――今主軸として戦う選手たちはもちろんですが、柳田選手や藤井(直伸)選手、李(博)選手、これまで代表で戦ってきた選手たちが築いてきたものがつながっている印象も常々受けます

 何かしらのつながりがあっての今だと思うし、そう思っていただけることは嬉しいです。とはいえ、それがあったとしてもみんなうまい(笑)。そこは間違いないです。高さという面はまだ劣るかもしれませんが、そこを含めても個の力は間違いなく世界でもトップレベルだと思います。どれだけの意識、戦術があったとしてもやっぱり個の力がないと実現できないですから。

――例えばどんなところでより感じますか?

 あれだけのビッグサーブを(髙橋)藍がアタックラインの中にちゃんとセーブしてレシーブできたり、そこから縦のB(クイック)が使えて、ライトにも引っかけられる関田(誠大)もいる。ハイボールになれば石川(祐希)がリバウンドを取るし、切り返したところでファーサイドから西田(有志)、宮浦が打てて、ラインを開けたら山本(智大)が待っていてレシーブを上げる。すべて個で解決できるゴールがあるからこれができる、あれができる、とチームとしての強さにつながっていますよね。
 実際僕がやっていた時も全く同じで、コースを開けておけば山本が拾ってくれるし、彼も自信満々に「開けて下さい」と言ってくれるから、ブロックに跳ぶ側もものすごく楽なんです。しかも反対側のサイドには関田がいるから、極端な話、ブロックは(ゾーン)6だけ抑えておけばいい、と自分の仕事に集中できるんです。これは楽だし、何より楽しいですよ。

 ブロックをする時も「止めに行こう」という意識ばかりでなく、どうすれば関田に打たせられるか、という感覚だったので、それぞれがポジショニングを調整して、上がったボールをトランジションでどう取るか、というところまで発展する。個の力が高まるとできることの幅も広がるし、自分たちで自信持って展開が立てやすくなる。それが今のA代表の強さだと思うし、B代表も同じような形にしていけたらいいなと思って取り組んでいます。
 ディグに関しては(深津)旭弘さんも上手だし、リベロの(高橋)和幸も井手(築城智)さんも「ここは開けてくれたら拾うから」と言って、実際拾えるリベロなのでレベルが高い。ミドルも含めてもう少し詰めていけたら、と今まさに取り組んでいるところです。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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