パリ五輪アジア予選がスタート…斉藤光毅や藤田譲瑠チマら常連組に松木玖生らU-20世代が合流した大岩ジャパンの見どころは?

飯尾篤史

松木玖生らU-20W杯組が新風を吹き込む

U-20日本代表でキャプテンを務めた松木玖生。大岩ジャパンへの合流は昨年6月のU23アジアカップ以来となる 【Photo by Marcio Machado/Eurasia Sport Images/Getty Images】

 右ウイングはカットインからのチャンスメイクが得意な左利きの山田楓喜(京都)と、6月シリーズに続く2度目の選出となる平河悠(FC町田ゼルビア)が担う。

 左ウイングはオランダリーグで昨季7ゴール・5アシストをマークした常連組の斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)と、左右両サイドをこなせるドリブラーの三戸舜介(アルビレックス新潟)のふたりだろう。

 センターフォワードはチームのエースである細谷真大(柏レイソル)、J2首位を走る町田で6ゴールをマークする藤尾翔太、スコットランドでプレーする小田裕太郎(ハーツ)が名を連ねた。藤尾と小田はサイドでプレーできるのも強みだ。

 残念だったのは、今年3月にA代表を経験した半田陸(ガンバ大阪)とバングーナガンデ佳史扶(FC東京)の両サイドバックが負傷の影響で招集できないこと。また、チェイス・アンリ(シュツットガルト)や髙橋仁胡(バルセロナ)などU-20W杯組がもう少し選ばれることが予想されたが、これまでの実績や最近の所属クラブでの活躍から、選ばれた23人は納得の顔ぶれでもある。

 注目は今遠征から本格合流となるU-20W杯組の松木と高井だろう。メンバーが固定されがちだったチームに、どれだけ上積みをもたらし、新風を吹き込めるか。なかでも松木は昨年6月のU23アジアカップのメンバーだったから、スムーズな融合が期待できそうだ。

 大岩監督は「いかにボールを奪い、いかに攻撃を組み立てるのか」をテーマにチーム作りを進めてきた。

 ボール保持時はディフェンスラインから攻撃を組み立て、立ち位置によって相手布陣とのズレを作ってボールを動かし、ボール非保持では前線から人数を合わせてボールを奪いにいくスタイルをチームに落とし込んできた。
 
 ミドルゾーンでのブロック守備も併せて磨いてきた守備に関しては、イングランド戦やオランダ戦で完封したように、ある程度の手応えを掴んでいる。アジア勢との対戦を振り返ってみても、サウジアラビアや韓国、オーストラリアの攻撃陣をシャットアウトしている。

 一方、ビルドアップの精度に関しては、改善の余地が少なくない。とりわけセンターバック陣は自信を持ってボールを動かし、ボールを持ち運び、縦パスを入れることが求められる。

 イタリア戦やドイツ戦、ベルギー戦、オランダ戦など、前半は相手に主導権を握られながら、ハーフタイムで修正して後半はほぼ互角の内容に持ち込んだゲームも経験してきた。もちろん、相手がメンバーチェンジをした面もあるが、ベンチの修正力や選手たちの対応力はストロングポイントのひとつと言えそうだ。

出場機会を掴んだ藤田譲瑠チマと鈴木彩艶

シント=トロイデンに合流してわずか10日でスタメン起用された藤田譲瑠チマ。ボール奪取力はベルギーでも十分通用する 【©︎STVV】

 今回はアジア勢を相手にした中東でのアウェイゲームとなるだけに、サッカーの内容も変わってくるだろう。相手がなりふり構わず戦ってくるだけでなく、気温やピッチ状態、レフェリングも考慮しなければならない。

「うまさよりも泥臭さやファイトが重要になってくると思うし、予選という緊張感の中でイージーなミスも出てくると思うので、チーム全体でカバーし合っていきたい」

 昨秋からキャプテンマークを巻く機会が増えている山本がそうイメージすれば、指揮官も警戒心を強めている。

「我々が予想していないようなことをスタートからやってくるかもしれないので、そのあたりも準備していきたい。選手には精神的な部分、チームとしての戦術、技術的な部分、いろいろな面でタフさを求めていきたいと思う」

 今年に入って藤田、山本、鈴木唯、木村、西尾、鈴木海、鈴木彩らが所属クラブで常時出番を得られていないことが懸念材料だったが、今夏、シント=トロイデンに移籍した藤田は8月20日のヘント戦、27日のセルクル・ブリュッヘ戦で2試合続けて先発。鈴木彩もセルクル・ブリュッヘ戦で先発デビューを果たした。

 同じくシント=トロイデンに加入した山本はまだスタメン起用がないものの、5試合連続で途中出場しており、3月シリーズや6月シリーズよりもゲームコンディションや試合勘の良い状態で予選を迎えられそうだ。

 このU23アジアカップ(当初はU23アジア選手権)は、13年に創設されたばかりの比較的新しい大会だ。2年に一度開催され、オリンピックイヤーに行われる同大会はアジア最終予選を兼ねてきた。

 日本は14年大会でベスト8、リオ五輪最終予選を兼ねた16年大会で優勝、18年大会はベスト8、東京五輪最終予選を兼ねた20年大会はグループステージ敗退(地元開催のため東京五輪の出場権は獲得済みだった)、そして大岩ジャパンが臨んだ22年の前回大会は前述したように3位の成績を収めている。

 当然のことながら、1次予選を突破できなかったことはない。アジア勢との対戦はチームにとって1年3か月ぶりとなるが、来年4月のアジア最終予選でパリ五輪出場権獲得と2度目の優勝を果たすべく、まずは確実に1次予選を勝ち抜いてもらいたい。

(企画・構成/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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