“世界一マッチョなレフリー”が描く夢 ラグビー界の二刀流に挑む近藤雅喜

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現役選手とレフリーを両立させている近藤雅喜 【写真:本人提供】

 多くのスポーツで選手とレフリーがぶつかった場合、ほとんどの人はレフリーの体を心配するはずだ。しかし、7月に行われた全国高校7人制ラグビー大会のある試合では、「選手とレフリーがぶつかったら選手は大丈夫かな……」と思わされた。
 その試合で笛を吹いていたのは近藤雅喜、28歳。身長189センチ、体重100キロの鍛え上げられた肉体は、グラウンドの中で一際目立っていた。近藤は今季からリーグワンのディビジョン1で戦う三重ホンダヒート(三重H)の現役選手で、レフリーとの“二刀流”に挑戦している。

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リーグワンの現役選手がレフリーにも挑戦

「レフリーになるとは一切思っていなかったです」

 そう言って、朗らかに笑う近藤は東海大仰星高から明治大学に進み、U20日本代表など年代別の日本代表に選出。三重Hでは機動力のあるフォワード(FW)第3列として活躍し、7人制では世界最高峰の大会であるワールドシリーズに日本代表として出場した。

 選手として輝かしいキャリアを築いてきた近藤の転機となったのは、2019年から選手とレフリーを兼任した滑川剛人氏のチャレンジを知った瞬間だった。

「選手として試合に出ながらレフリーもする滑川さんを見て、初めて『あー、そういう道があるのか』と思いました。それまでは選手に100パーセント集中していたのですが、その後に関係者の方から『レフリー、どうだ?』という誘いがあったのでやってみようと」

 昨年の夏からレフリーとして試合を担当するようになり、12月に開幕したリーグワン(三重Hは当時ディビジョン2)では順位決定戦を含めて5試合に出場した。試合がない週にレフリーとして活動することもあり、体力的な負担だけでなく、週ごとに頭を切り替える力も求められた。

 それでも、近藤は“二刀流”のプラス面を口にする。

「両方やることによっていろいろな角度からラグビーを見られるようになりました。選手だけをやっていればその能力は徐々に上がっていくと思いますが、レフリーをやることによって選手をやっているだけでは見られない角度でラグビーが見えてくる、という感じです」

“二刀流”への外国人選手たちの反応は?

今季からリーグワンのディビジョン1に昇格した三重ホンダヒート。練習にも熱が入る 【写真:本人提供】

 三重Hにはワールドカップ(W杯)にアルゼンチン代表として出場するパブロ・マテーラや、南アフリカ代表のフランコ・モスタートら外国人選手が所属している。彼らは近藤のチャレンジをどう見ているのか?

「外国人選手たちの反応はすごく良かったです。『近藤はFWだからスクラムやブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)のこともよくわかるのは強みだと思うよ』と言ってもらえました。ふざけて『FWの気持ちはわかるだろう?』とプレッシャーをかけられることもありますが(笑)」

 選手からレフリーに転向した代表的な存在は豪州出身のニック・ベリー氏で、9月9日に開幕するW杯では、日本の初戦となるチリ戦で主審を務めることが決まっている。ベリー氏と滑川氏は現役時代にスクラムハーフだったが、FWの近藤はトップレベルのスクラムやラインアウトを日常的に体感し、15人制だけでなく7人制でも活躍した経験が、その存在をユニークなものにしている。

「今はすごくレフリーもアスリート化していて、フィジカル的な部分も向上しています。ただ、僕みたいな存在は稀(まれ)というか、世界的に見ても珍しいようです。FW出身者で7人制も吹ける。大型のレフリーとしての価値もあると思いますし、ここに新たな道を作れればというのが自分の励みになっています」

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