“世界一マッチョなレフリー”が描く夢 ラグビー界の二刀流に挑む近藤雅喜

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W杯でポイントになるのは?

7人制の大会でレフリーを務める近藤雅喜 【写真:本人提供】

 近藤にとって今回のW杯は選手の視点からだけではなく、レフリーの視点からも見る大会となった。そして、ここにきてプロ野球や高校野球、Jリーグにおいても判定への注目度が高まっている。テレビカメラの質が上がったことで映像がクリアになり、スロー映像はより滑らかになった。ファンが画面上でそうした情報を手に入れられることで、審判への負荷は高まっている。

 ラグビーにおいても同様で、今夏の日本代表ではサモア戦の前半30分にリーチ マイケルがハイタックルで退場。フィジー戦では前半7分にピーター・ラブスカフニが同じくハイタックルで退場。2試合ともに数的不利となった日本代表が敗れたこともあって、ファンからは判定への賛否の声があがった。

 日本と同組になるイングランドでは主将のオーウェン・ファレルがウェールズ戦においてハイタックルで退場になり、その後に取り消し、さらに審議が行われて再びレッドカードで4試合出場停止が決まるなど、混乱を呼んだ。

 近藤もW杯では判定への対応がポイントになると指摘する。

「ハイタックル、頭頚部へのコンタクトは日本代表の試合でもありましたし、世界的にも注目度が上がっています。試合を左右する可能性もあるので、そうしたペナルティをしないように規律を守ることができる、自滅しないようなチームが勝ち上がっていくのではないでしょうか。日本代表も規律を守ることができれば上位が見えてくると思います。
レフリーにとってもW杯は大舞台で、いかにデジタルの力があっても最後に判断するのは人間なので、かなりのプレッシャーとストレスがかかると思います」

レフリーとして28年のロス五輪へ

選手としてチームに貢献しつつ、レフリーとして世界を目指す 【写真:本人提供】

 日本ラグビー協会は35年以降のW杯招致に動いている。近藤もレフリーとして自国開催のW杯でピッチに立つ可能性があるが、「10年以上先にはラグビーも変わっていると思います。もし吹けるチャンスがあるならターゲットに変わっていくのかな」と冷静に語った。ただ、中長期的な目標は明確になっているようだ。

「レフリーとして世界に出て行かないといけません。期待してもらっている分、僕にも覚悟があるので。28年のロサンゼルス五輪(7人制ラグビー)にレフリーとしてピッチに立つ。そのためにワールドシリーズで実績を重ねたいです。ワールドシリーズに選手とレフリーの両方で出場した日本人男子はいないので(女子では桑井亜乃氏が出場)、まずはそこに対してチャレンジしたいです。
僕の存在をどうパスウェイ(世界への道筋)に上げていくかを多くの方々に考えていただいています。滑川さんが作ってくれた二刀流という道を、さらに新しい方向に追及していきたい」

 身長189センチ、体重100キロの数値だけでなく、現役として国内トップレベルで戦い、チーム内の練習ではW杯代表選手とぶつかり合う近藤は、“世界一マッチョなレフリー”と言っても過言ではないだろう。

 ストイックなトレーニングによって手に入れた筋骨隆々な肉体を誇り、選手としては視野の広さや、味方がいてほしい場所にいるような「数値化しづらい能力」にも優れている近藤にとって、レフリーは天職にもなり得そうだ。
 世界的に見てもユニークな存在となっている近藤。その可能性は無限に広がっている。

(取材・文:安実剛士/スポーツナビ)

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