22歳の河村勇輝が直面したW杯の壁 ドイツ戦で語った悔しさと「ワクワク」
シュルーダーとの対決で感じたこと
守備では河村の「らしさ」も出ていた 【(C)FIBA】
「シュルーダーは本当に素晴らしい選手だったと思うし、簡単には止められません。チームとしていろいろな準備してきたんですけど、止められた部分もあれば、やられてしまった部分も多くあった。準備を出し切れなかったことは悔しいです」
シュルーダーは日本の流れができそうな場面で、それを断ち切るオフェンスを繰り出してくる。そんな凄みを河村は実感していた。
「クレバーな選手、スマートな選手だと思いました。スピードだけではなくて、ミドルジャンパーだったり、自分たちのビッグマンを引き寄せてロングパスでアリウープを演出したり、そういった流れを持っていくようなプレーができる。そこは本当にスマートだなと思いました」
河村が悔いる単調なオフェンス
「僕自身がシュートを狙っていたのもありますけど、オフェンスで崩せなかった。最終的に1対1になってからのスリーポイントが増えてしまったのはオフェンス停滞の原因。もっとオフボールのところで、ズレを作り出すことであったり、1個1個のオフェンスの組み立てをしっかりとしないと、ああいった単調なオフェンスになってしまう。僕の強みはやはりペイントアタック(ゴール下に切れ込む、ボールを送るプレー)だと思うし、チームが停滞しているときには、そういったところで打開しないといけない時間帯が必ずある」
チームとして見ても、ドイツ戦の3ポイントシュート成功率は17.1%。35本という本数は十分だが、この成功率では勝てない。日本がドイツのような相手に番狂わせを起こすなら40%、50%といった数字が必要になる。もちろんタフショットでも決めればいいのだが、相手のマークが剥がせない状態では不可避的に成功率が落ちる。シュートに至る過程はチームとしての課題だ。
ホーバスHC「(今後は)彼の特別なプレーを見られる」
「ドライブのスピードは絶対に通用するなと思っていましたけど、チームとしてオフェンスがうまくいかなかったときのオンボールからの1対1、スイッチされたときに1対1やゲームの組み立ては本当に何もできなかった印象が強いです」
河村がシュルーダーに「やられた」こと、プレーメイクに苦しんだのは悔しい現実だ。ただ守備面は彼の潜り込む、食らいつくプレーが相手を嫌がらせている様子も見て取れた。何より彼はまだ成長途上の若者だ。
ホーバスHCは試合後に述べている。
「もっともっと彼はできるかなと思います。悪くないですけど、僕は彼の特別なプレーをよく見ている。(ドイツ戦では)まだまだ見ていないです。でも僕は彼について自信があります。間違いない。だから本当に彼はステップバイステップですし、この試合の経験は大きい。3ポイントシュートが(2本)入ってDFも良かった。相手は彼のDFが本当に嫌だったと思う。ターンオーバーは少しあったけれど(勝負は)これから。彼の特別なプレーを見られると思います」
「ワクワク感」と悔しさと
ドイツ、シュルーダーのような世界のトップクラスと対峙して、果たして何を感じたのか。「楽しさと苦しさ」のどちらが大きかったのかーー。河村に尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「どっちもありますね。このW杯に出るワクワク感、どれくらいできるのか?という楽しさはあって、コートに立ってもすごく楽しかったです。ただそれ以上にチームの勝利に貢献できなかったこと、自分のターンオーバーやシュートの精度の悪さでチームに流れを持ってこれなかったことが悔しいです」
世界のトップに「本気」でぶつかる過程から得られるものはきっとある。河村のような学習能力が高い選手ならば、なおさらそれは大きいはずだ。彼は困難な挑戦に怯えでなく「ワクワク感」を持って向かえるタイプでもある。ドイツ戦の敗戦と悔しさ、決して無意味なものにはならないだろう。