J1月間MVP 5月に続いて受賞の神戸・大迫勇也「日本に戻ってきたのはすごくいい決断だった」
A契約、B契約といった区別をなくすべき
日本プロサッカー選手会会長の吉田麻也と意見交換をしたという大迫。豊富な海外経験を持つだけに、その知見は貴重だ 【YOJI-GEN】
もちろんすごくいいことです。いろいろな考えの選手がいて、移籍に「これが正解」というのはないですけど、目の前に海外挑戦ができて、いいクラブに移籍するチャンスがあるなら、僕は絶対に行ったほうがいいと思っています。ただ、Jリーグのクラブとしては若くて優秀な選手がなるべく安く出ていかないようにしなければいけない。そうなると移籍元のクラブが損失を被るだけなので、どのように選手を送り出していくかはもっと考えていく必要があると思います。
――優秀な若手選手が安価な移籍金で、あるいはフリー移籍で海外に出ていってしまう現状を変えるにはどうしたらいいのでしょうか。
最近話題になっていますけど、僕はA契約、B契約、C契約と区別する契約形態をなくさなければいけないと思っています。プロになるときから若い選手にしっかりと実力に見合った報酬を渡す代わりに、契約期間中の移籍の際に必要な違約金を高めに設定するなど、時代に合わせた変化が大事かなと考えています。
――大迫選手がドイツへ移籍する頃とは若手選手を取り巻く状況が変わっているからこそ、Jリーグも変わらなければならないと。
日本に帰ってきてから、特にそう感じますね。海外のクラブからしたら、日本人なら若くていい選手が安く獲得できると感じているのが現状だと思います。もちろん何かを変えることで若手選手のチャンスを潰してしまう可能性もあるので、何が正解かをここで答えるのは難しいし、正直自分にもわからないところはあります。でも、日本サッカーのマーケットをより大きくしていくには、何かを変えていくことが必要だと思います。
――Jリーグにおける選手の契約形態に関しては、日本プロサッカー選手会会長の吉田麻也選手が先頭に立って変革していこうと動いています。大迫選手の目には、吉田選手の行動はどう映っていますか?
吉田さんとは彼がオフの期間に会って、いろいろなことを話しました。彼が動いて、いろいろな人と会って、巻き込んで、現状を変えようとしてくれているので、選手会はいい方向に進んでいると思います。少しずついろいろな人の考え方が変わってきているのかなという感覚もありますね。
日本に帰ってくる選手がもっと増えるといい
大迫や武藤(写真中央)ら元海外組の経験が存分に生かされている神戸が優勝すれば、海外組のJ復帰の流れが加速するかもしれない 【(C)J.LEAGUE】
僕はこうして発信することしかできません。やっぱりトップの人が動いてくれないと、何も変わらないと思います。とにかく僕たちは変化を受け入れて、時代に合ったことをしていかないといけない。ピッチ上のサッカーが変わっていくのと同じで、移籍や契約に関してもいつまでも昔と同じことを続けていくのではなく、新しくすべきところは新しくしていかないといけないのかなと、日本に帰ってきて今まで以上に思うようになりました。
――若手選手がどんどん海外に移籍していく流れが加速していくと、Jリーグでタイトルを獲る、結果を残すといったことに対する評価や価値が相対的に低くなってしまうのではないかとも危惧しています。そんな中で、大迫選手にとってJリーグのタイトルを獲得することの価値やそれに挑んでいくことの意味とは?
神戸が優勝することには、すごく大きな影響力があると思います。Jリーグ優勝によって神戸の街がすごく盛り上がるでしょうし、Jリーグ自体の盛り上がりにもつながるのではないか、と。僕たちが優勝することで、日本に帰ってくる選手がもっと増えて、海外での経験を活かしてJリーグで活躍するという新しい道を作ることもできるのではないでしょうか。Jリーグには素晴らしい環境が整っていますし、僕自身もドイツから日本に戻ってきたのはすごくいい決断だったと思っています。
――もし今年J1で優勝すると、大迫選手にとってはプロ1年目以来となります。チームの中心選手としてのリーグ優勝は、2009年の鹿島アントラーズでの優勝と意味合いが変わってくるのではないかと思います。改めてリーグ優勝への想いを聞かせてください。
もちろんリーグ優勝ができたら、それに代わる喜びはないですけど、タイトル獲得にこだわるよりも、毎試合1人ひとりが成長していくことが大事だと思います。全員が最後の34試合目にシーズンの初めよりも成長していることを実感できていれば、自然と優勝に近づくはずです。1人ひとりが成長してシーズンを終えられたら、来年も楽しい1年になると思います。神戸がこれからもっと強くなっていくために、日々成長することを目指して戦っていきたいです。