「BVG」の予言通りに覚醒した大谷翔平 MVP予想は極めてハイリスク、ローリターン
大谷は6月に大爆発を続けて月間打率.394、15本塁打、29打点の成績を残した 【Photo by Ronald Martinez/Getty Images】
突然始めた「BVG」での大胆予言から大谷が覚醒した
「ここでBVGをします」
番組のパートナーで、かつてエンゼルスでフィールドリポーターを務めていたアレックス・カリーが聞く。
「BVGってなんですか?」
それに対してバーランダーが「よく聞いてくれました」とばかりに、ニヤリとして叫んだ。
「ベン・バーランダー、ギャランティ(Ben Verlander Guarantee)です!」
意訳すれば、バーランダー予想ということになるが、そのとき「このところ打席では苦しんでいる翔平だが、今週必ず、1本、いや、2本はホームランを打つ。そして来週のこの時間で、本塁打の話をすることになる」と大胆に予言した。
すると実際、大谷は番組が配信された30日に本塁打を放ち、31日には2本塁打を放った。その後、6月だけで15本塁打を記録したが、小さな世界の話をすれば、あの予言以来、大谷は覚醒したのである。
そのまま、文句なしで月間MVPも獲得したが、「月間の成績としてみた場合、過去最高の成績だった」とバーランダーは興奮気味に語る。
「(オフェンスの数字に)投手成績も加わると、他に比べられる選手は皆無だ」
例えば、ルー・ゲーリックは1930年6月に打率.496、10本塁打、41打点、37得点、OPS1.501をマークしたが、対して大谷は打率.394、15本塁打、29打点、27得点、OPS1.444。打者としての数字は甲乙つけ難いが、大谷は投手として5試合に先発し、2勝2敗ながら、防御率は3.26。中盤以降、内容も良くなった。バーランダーがいうように投手としてのパフォーマンスも加えたら、ゲーリックでも及ばないのである。
そもそも、4、5月はなぜ苦しんでいたかだが、彼は「6月から7月にかけて捉えていた球を、4月は打ち損じていた」と分析した。「紙一重だけど」。
打撃では構えを重視する大谷。そこがしっくりせず、わずかなズレを招いていたか。
影響したピッチクロックへの適応
「翔平はどちらかといえば、投球間に時間をかけるタイプ。ピッチクロックが導入され、それに適応を求められたが、決して簡単ではない。翔平だけじゃなくて、他にも苦しんでいる投手がいた。自分の兄ジャスティンも、見ていてピッチクロックに苦労しているなと感じた」
多くの投手は、オープン戦を通して慣れていったが、大谷はピッチクロックの適用が見送られたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に出場していたため、その時間がなかった。
「ただ、気にならなくなって、もう無意識に投げられるレベルでは」とバーランダー。6月中旬には影響を感じなくなったそうだが、その後、すでに触れたように右中指の爪が割れた。それは誤算だった。
ちなみに序盤、大谷はビッグイニングを作ってしまうことが多かったが、「それもピッチクロックの影響では」と推測した。
「走者を背負うと、考えることが増えるのに、それでも早く投げなければならない。となると、以前よりも疲れを感じるだろう。20秒間隔で投げるのと、40〜45秒間隔で投げるのとでは、ぜんぜん違う。ピンチのときに急いで投げると体力を消耗し、疲れが増す。それを回復させる時間もなく、悪循環となる」
もはやピッチクロックへの適応は終えているが、今後は、爪の回復が復調のバロメーターとなるのではないか。