「男子は弱い、つまらない」はもう終わり ブラジルに30年ぶり勝利、快進撃続く男子バレー

田中夕子

強豪ブラジルにも勝利し、8戦負けなしの日本。主将の石川(写真)を中心に各選手が存在感を発揮している 【(c) FIVB】

 男子バレー日本代表の勢いが止まらない。

 6月6日に愛知で開幕し、世界を転戦するネーションズリーグ。8戦を終え8連勝で負けなし、堂々の首位を走るだけでなく、22日にはバレーボールの強豪と言えば常に誰もがその名を挙げるブラジルから、公式戦で実に30年ぶりとなる勝利を収めた。
 長年、バレーボールを話題にするたび飽きるほど聞いてきた。

「女子は強いけれど、男子は弱いんでしょ」

 海外勢の高さとパワーは圧倒的で、1本ドカンと決められたら終わる。ラリーが続く女子に対して男子は簡単に得点が決まってしまうからつまらない、というのも同じく何度も聞いた。

 だからこそ言いたい。今の男子バレー、日本代表が見せるバレーボールはまさにその逆。高さとパワーで勝る海外勢に対しても、ブロックとレシーブが連動したディフェンスから、セッターの関田誠大が確かなセッティング技術でアタッカーにつなぐ。たとえ相手のサーブや強打でレシーブが崩され、ハイセットになろうとも打ち切れるアタッカーが揃っている。バレーボールに詳しくても、詳しくなくても見ればきっと「面白い」と感じる。そんな魅力を備えている。

スタメンの組織力に加え、完璧な準備をして待つリザーブ

 世間の下馬評を覆す“強さ”の理由は何か。組織力だ。

 誰が出ても、それぞれの役割を完璧に果たす。当たり前のことが、高いレベルでより当たり前にできている。それが現在の男子バレー日本代表の強さといっても過言ではない。

 集団球技のバレーボールだが、やはり目が向けられがちなのは得点を挙げる選手でありポジション。エースと言われるアウトサイドヒッター、オポジットが注目を浴びることが多く、実際に日本でこのポジションを担う主将の石川祐希はアルゼンチン戦を終えた段階で142点とベストスコアラーランキングで1位と3ポイント差の2位、137点の髙橋藍も3位と具体的な数字が好調さの裏付けをしているのも事実だ。加えて、オポジットも西田有志と宮浦健人がそれぞれの長所を発揮して攻撃の柱となり、ミドルブロッカーの小野寺太志、山内晶大、髙橋健太郎もブロックだけでなくサイドアウトにブレイク、さまざまな局面で攻撃面でも存在感を発揮している。

 そして忘れてはならないのが、そんな彼らを活かすにはどんな強打も正確かつ次のプレーにつなげやすい質のレシーブを提供するリベロの山本智大がいること。そしてそのボールをトスにしてアタッカーが打ちやすい場所に提供するセッターの関田誠大がいること。活躍を数字で示しているのは攻撃陣のみならず、強烈な打球を好レシーブで何度もチャンスを演出した山本はベストディガーランキングで3位、世界中を魅了する攻撃を組み立てる関田はベストセッターランキングで1位。陰の立役者というにはあまりに過分すぎるほどの活躍を見せている2人の存在は、現在の日本男子バレーを語るうえで不可欠だ。

 それぞれのポジションに、まさに日本を代表する選手たちが揃う。なるほど、さすがの組織力と思われるかもしれないが、それだけではない。むしろスタートで出る選手だけでなく、リザーブとしてベンチでいつ出番が来ても己の力、役割を果たすのみ、と完璧な準備をして待つ選手たちの存在も大きい。

 象徴的なのが名古屋ラウンドのブルガリア戦とフランス戦だ。

 ブルガリア戦の第1セット、序盤からリードを得た日本だが中盤にブルガリアはサーブから猛追、20対19と1点差に迫られた。関田のトスが上げにくい場所へ、しかも攻撃の選択肢を減らせる位置を巧みに狙うサーブ戦術に加え、セッターの関田がサーブを打った後のS1ローテーション。本来はレフト側から攻撃する石川がライト側、オポジットの西田がレフト側から攻撃する、いわば変則を求められるローテーションだ。

 ここでフィリップ・ブラン監督は大塚達宣を投入。アウトサイドヒッターでレフト側から攻撃するのを主とするが、オポジットでの起用経験もあり、サーブレシーブもできる。ウィークローテーションを切るための切り札が大塚で、サーブレシーブからの攻撃をラリーの末に最後は大塚が決め、期待に応える働きを見せた。

 第3セットにはまた別のシーンがあった。

 20対19と日本が1点をリードした終盤、サーバーはブルガリアのエース、アレクサンダル・ニコロフ。セリエAのチヴィタノーヴァでもエースとして世界に名を馳せるニコロフの武器でもあるサーブに対し、日本は石川に代えて富田将馬を投入した。

 交代直後に狙ってやる、とばかりに放たれたサーブを、富田は身体全体で上げ、つないだボールをレフトから髙橋藍が決め21対19。直接得点につながった1本ではないが、与えられた役割を完璧に果たした富田は渾身のガッツポーズで喜びを表現した。

 特筆すべきは、富田も大塚もネーションズリーグの2週前には、アジア大会に向けて合宿を続ける日本代表のBチームで親善試合にも出場していたこと。富田は開幕前日、大塚は開幕後の9日に急遽岩手から合流したにも関わらず、見事な働きを見せた。

 そしてフランス戦ではセットカウント1対1で迎えた第3セット中盤から関田、西田に代わって宮浦、セッターの深津旭弘を投入。練習から細部まで確認して合わせてきた、という成果を存分に発揮した。リリーフサーバーで投入され、ブレイクにつなげた甲斐優斗や常にアップゾーンの最前列でそれぞれの選手に情報を伝えるリベロの小川智大の力も大きく、すべての試合で勝利した後に選手全員が喜ぶ姿は、チームで戦い、勝ちをつかみとっている充実感の象徴でもあった。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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