「男子は弱い、つまらない」はもう終わり ブラジルに30年ぶり勝利、快進撃続く男子バレー

田中夕子

海外リーグに参戦する選手も増え、「世界と戦う」ことが明確に

コーチ時代も含め、2017年から日本代表を指導するフランス人のブラン監督 【(c) FIVB】

 果たすべき役割を理解し、全うすることができる理由。もちろん選手個々の能力の高さはさることながら、チームとしてコンセプトがあり、遂行するために自分は何をすべきか。すべてが明確に描かれ、共有されているからに他ならない。

 そしてもう1つ。「強さ」につながる変化をもたらしたのは、選手たちにとって戦う、目指すべき“世界”が明確に示されたことだ。

 世界のトップがどんなバレーをしていて、そこに追いつき、追い越すために何が足りていて、何が足りないのか。言葉にすればごく当たり前のことだが、ブラン監督がコーチに就任した2017年以前は日本代表で外国人指導者が長期的に指揮を執ることもかなわず、海外リーグを主戦場とする選手も少なかったため、「世界と戦う」といってもその“世界”がわからず、見上げるばかりだった。

 だが今は違う。世界のバレーボールのスタンダードをブラン監督が説き、選手に植え付け、徹底させる。加えて、石川や西田、関田、髙橋藍、宮浦、イタリアやポーランドリーグで戦う選手も増えた。日本のVリーグに所属する選手も、自チームを外国人指導者が指揮することや、所属するチームメイトが世界トップクラスの選手であることもプラスに働き、日々の練習から常に“世界”がリンクした。

 まさにそれこそが、日本の強さ。だからこそ、名古屋ラウンドでの最終戦となったフランス戦の勝利後、石川は言った。

「(今季は)宮浦選手、髙橋藍選手が海外へ行き、他の選手もそれぞれのリーグでたくましくなったことは、代表チームの合流前から映像で感じていました。誰が出ても変わらないバレーをする、強い日本を見せるということが1つのテーマであり、この(名古屋での)4戦で課題は出ながらも行動、結果で示したことを皆さんに見ていただけたと思っています。これがスタンダードになってくるとより強い日本バレーになると思いますし、全員がそれぞれの役割を理解してチームのために動くことでより強い日本のチームが発揮できる。個人の能力は上がっているので、チーム力をこれからの戦いでつけ、(9月の)OQTに臨みたいと思います」

 新たな歴史を切り拓き、もっともっと強くなる。そう確信させる力が、男子バレー日本代表にはある。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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