矢野燿大氏インタビュー「阪神にはまだまだ伸びしろがある」 前半戦MVP、18年ぶりVへのカギは?
スポーツナビの取材に応じる矢野燿大氏。近本光司、中野拓夢、村上頌樹ら、矢野氏が阪神の監督時代に見出した選手が今季、躍動している 【画像:スリーライト】
中野のコンバートを支える木浪の活躍
阪神らしい野球ができていると思うので、特に驚きはありません。プラスアルファの戦力として、大竹(耕太郎)投手、村上(頌樹)投手の活躍がありますが、基本的には昨年と同じメンバーで、それぞれがこれまでの経験を生かしながら、自分の良さを発揮しています。年齢的に若い選手が多く、今後の伸びしろに期待ができる布陣です。
――野手陣では中野拓夢選手をセカンドにコンバートしたことが、成功しているように感じます。矢野さんはどのように見ていますか?
「わからない」というのが正直なところです。このままショートをやり続けていたらどうなっていたかは、誰にも見えない部分ですからね。コンバートがうまくいっているように見えるのは、木浪(聖也)選手がショートでしっかりと役割を果たしているからです。これでショートのレギュラーが決まらない状態であれば、「ショートは中野で良かったのでは?」という声が上がっていたと思います。
開幕前、矢野氏が「復活に期待する選手」として名前を挙げた木浪。小幡竜平とのし烈な争いを制して、ショートのレギュラーの座をつかんだ。 【写真は共同】
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ここまでの投打のMVPは?
難しいですね……。強いて挙げるなら、近本(光司)選手、中野選手、大山(悠輔)選手。この3選手の頑張りが、打線に相乗効果をもたらしたのは間違いありません。1、2番の出塁率が高いからこそ、大山選手の勝負強い打撃が生きています。
――今季の近本選手、中野選手はそれぞれ.391(リーグ4位)、.363(同10位)と、高い出塁率を誇っています。四球数もかなり多く、近本選手はキャリアハイまであと1つとなる40個(リーグ3位)、中野選手は31個(同5位)とすでにキャリアハイをマークしています。
私が監督を務めていた昨季までは「超積極的」にいくことが、選手の可能性を伸ばすことだと考えていました。さまざまなことにチャレンジして、プロで生きていく道を見つけていく。中野選手はそうした経験をしたうえで、今季が3年目。積極的にバットを振るだけでなく、状況に応じた打撃やボールの見極めができるようになった結果が、今季の出塁率の高さにつながっていると感じます。
――近本選手にも同じことが言えますか?
目標のシーズン200安打に向け、超積極的な打撃を見せることが、昨季までの近本選手の中で大きなウエイトを占めていたはずです。今季は四球にヒットと同等の価値を見出し、チームの勝利につながる大きなプレーだと感じているのではないでしょうか。野球選手として成長しながら、チーム全体を俯瞰して見る。これは、自分の形が身に付いてきたからこそできることです。
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今季は出塁率の高さが際立つリードオフマンの近本。リーグトップの12盗塁をマークするなど、自慢の足も健在だ。 【写真は共同】
それは自分からは言いにくいことですけどね(笑)。ボールは積極的に打ちに行く姿勢を見せながら見極められないと意味がありません。私が阪神の監督をしていた頃は、選手全員の成長を後押しすることを第一に考えていました。
――主砲の大山選手は早くも7年目を迎えます。今季は打率.288、7本塁打、39打点をマーク。四球は42個でリーグ2位、出塁率は.399とリーグ3位の好記録です。
選手として成熟しつつあります。私が監督時代に大山選手によく言っていたのが、「自分のことを客観的に見られることが大事やぞ。この場面でこんなボールは来ないだろうと思えるかどうか。それがわかれば、ボールの見極めができてくる」ということ。大山選手のボールを見極める技術は、着実に上がってきています。