U-20日本代表がW杯で突きつけられた世界との差  2001年大会以来となるグループステージ敗退の理由は?

松尾祐希

イスラエル戦は残り15分までリードをしていたのだが…。まさかの結末に選手たちはうなだれた 【Photo by Buda Mendes - FIFA/FIFA via Getty Images】

 旅は呆気なく終わった。

 “世界一”という目標のもと、チームの強化をスタートさせて1年4ヶ月。コロナ禍の影響を受けた世代は、海外経験が乏しいところから積み上げ、世界の大舞台にたどり着いた。しかし――。強豪国との戦いはより険しい道のりだった。

 4年ぶりの開催となったU-20ワールドカップ(W杯)。開幕1ヶ月前にインドネシアからアルゼンチンに開催地が変わるアクシデントを経て、U-20日本代表は新たな景色を見るべく国際舞台に挑んだ。

 結果は1勝2敗の3位。厳しい現実を突き付けられ、2001年大会以来となるグループステージ敗退となった。奇しくも当時の開催地もアルゼンチンだが、22年後の若武者たちも地球の裏側で涙をのんだ。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

 野球界の名将・野村克也の好んだ金言だが、今大会はそんな試合の連続だった。

勝利したセネガル戦も内容は完敗

 日本時間5月21日に行われたアフリカ王者・セネガルとの初戦こそ1-0と勝利を手にしたが、開始15分にMF松木玖生(FC東京)が先制点を奪っていなければ、どんな結果になっていたか疑わしい。リード後も相手に相次いでチャンスを作られており、大量失点の可能性は大いにあった。フィジカル、個人技とも相手に圧倒され、自分たちの時間帯はほぼ作れなかった。

 もちろん、選手たちの頑張りは見られたし、今まで積み上げてきた柔軟な戦い方も少なからず機能した。押し込まれた最終盤は逃げ切るべく、4-2-3-1から中盤の守備に比重を置くシステムに変更。セントラルMFを3枚並べる4-5-1で最後の猛攻をしのいだ。

 本気モードのセネガルとW杯の舞台で戦い、勝利を掴んだことは財産だ。セネガル戦後、冨樫剛一監督はこう話している。

「自分たちの成長も感じ、自分たちが掲げる世界一という目標は、一つひとつクリアして、階段を登れれば届くのかな。それは選手たちも感じてくれた」

経験を次なる戦いに活かせればーー。しかし、ここから現実を突きつけられた。

第2戦はまたしてもコロンビアに屈する

セネガル戦は際先よく松木(中央)のゴールで先制。最後までリードを守り切ったが、内容は完敗だった 【Photo by Hector Vivas - FIFA/FIFA via Getty Images】

 24日のコロンビア戦。1年前のモーリスリベロトーナメント(旧・トゥーロン国際大会)で敗れた南米の雄に対し、先発メンバーを初戦から1人変更。山根陸(横浜FM)がボランチで初スタメンを飾り、佐野航大(岡山)を右サイドハーフに回すよりボールを保持ができる布陣で臨んだ。しかし、試合が始まると、まるで歯が立たない。時間の経過とともに相手の圧力に押され、自陣で耐える時間が続いた。それでも、セネガル戦同様に劣勢を跳ね返す。30分にショートCKから山根が先制点をもぎ取り、またしてもリードを奪った。

 だが、南米の雄は甘くなかった。後半開始から一段階ギアを上げ、猛然と攻め込んできた。日本の右サイドを崩され、53分と59分に連続失点。一気に逆転を許し、窮地に追い込まれる。そこから冨樫監督は交代策を講じ、決定機が徐々に生まれていく。そして、試合のターニングポイントが訪れた。

 78分、相手のハンドでPKを獲得し、松木が左足を振り抜いた。ただ、無情にもバーを叩き、同点のチャンスを生かせない。その後も何度か好機を得たものの、1-2で敗れてコロンビアの壁に跳ね返された。

「決めるところで決めきらないとこういう結果になりますし、立ち上がりは良かったけど、引いてしまう場面も多かった」(松木)

 試合の要所を締められ、勝負の厳しさをこれでもかと見せつけられた。とはいえ、まだ1勝1敗で2位。最終戦で勝利を挙げれば、2位以上に与えられるノックアウトステージ進出の権利を自力で決められる。引き分け以下でも他会場の結果次第で3位チームの上位4カ国に入る可能性もあり、優位な状況だった。

イスラエル戦で起きてしまった「悪夢の15分」

 大一番となった27日のイスラエル戦。日本は3名スタメンを変更する。よりボールを動かすべく、安部大晴(長崎)、松村晃助(法政大)をそれぞれ左と右のサイドハーフに抜擢。最前線には坂本一彩(岡山)を置き、出場時間が短いフレッシュな選手を起用しながら勝利を目指した。

 その策が見事にハマる。松村と安部がトップ下の松木とうまく絡み、好機を演出。過去2試合とは比べモノにならないようなパフォーマンスで試合の主導権を握った。前半の終了間際にはFKの流れから坂本がネットを揺らし、ここまでは考え得る限り最高の展開だった。

 ただ、ここから悪夢が訪れる。開始15分はセネガル戦の反省を踏まえ、5バックで相手の攻撃を跳ね返す布陣を選択。うまくやり過ごすと、自分たちのペースに再び持ち込んだ。しかし、徐々に運動量が落ち、自陣で守る展開に。68分に相手に退場者が出たことでアドバンテージを得たが、ここから日本はトーンダウンしてしまう。

「1人少ない状況でしたけど、相手はすごく勢いを持っていた。自分たちがビルドアップのところで焦ってしまって相手の裏を突くことができなかった」(松木)

 キャプテンの言葉通り、日本は引き分け以下で敗退が決まるイスラエルの反転攻勢に尻込みした。76分に不用意なファウルからFKを与え、同点ゴールを献上。一気に盛り返した相手に防戦一方となり、90+1分にゴール前の混戦から逆転弾を決められてしまう。いずれの得点もオフサイドを取れそうな場面ではあった。しかし、安部と高井が低い位置に残っており、最終ラインを揃えられなかった。

勝負は紙一重――。アディショナルタイムは懸命に攻め込んだが、付け焼き刃のパワープレーは機能せずに終わった。同時刻に行われていたコロンビア対セネガルの一戦は土壇場でコロンビアが追い付き、1−1のドロー。日本は辛うじて3位に滑り込んだものの、次のステージには進めなかった。

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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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