U-20日本代表がW杯で突きつけられた世界との差  2001年大会以来となるグループステージ敗退の理由は?

松尾祐希

この悔しさに本気で向き合えるか

U-20代表の旅は終わった。しかし、この経験が近い将来に役立つかは選手たち次第だ 【(Photo by Buda Mendes - FIFA/FIFA via Getty Images】

 全試合で先制点を奪いながら、初戦以降は2試合とも逆転負け。初戦の内容も含め、実力不足だったと言うしかない。さまざまな組み合わせも可能な陣容だったが、世界基準で見れば、それは叶わなかった。選手層が薄く、中2日で行われた3試合を通じてほとんど同じメンバーで戦っている。疲労度が濃くなるのは無理もない。右SB不在の問題も解決せず、CBの高井を回して対応したが、最終的には穴になった。

 確かにコロナ禍で国際大会の経験値は不足していた。2021年に開催予定だったU-20W杯が中止となり、飛び級で大舞台を経験した選手はいない。一つ下の2004年生まれの選手たちも2021年のW杯の中止によって、真剣勝負の場を味わえていない。

 さらにアジアのレギュレーションが今大会から変わった点も状況を難しくした。今まではU-18年代の11月にアジアカップの予選、U-19世代の10月にアジアカップを経験して、3月に海外遠征を挟んだ上でW杯に挑んでいる。しかし、この年代からU-19年代の9月にアジアカップの予選を実施。U-20年代の3月に最終予選を兼ねてアジアの戦いに挑むため、W杯まではショートキャンプメインで、Jクラブで試合に出ている選手や海外組はほとんど活動に参加できなかった。

 だが、それは言い訳にならない。シンプルに力がなかったのだ。

 昨年2月にチームが立ち上がってから、選手たちは様々な経験をしてきた。国内での活動を経て、6月にモーリスリベロトーナメントで海外勢と初めて対戦。未知との遭遇に対し、選手たちは口々に「海外勢と戦うのは久しぶり」と話した一方で、「間合いが違っていた」(CB田中隼人/柏)と異国の選手とのマッチアップから学んだことも少なくない。

 そこから9月にラオスでアジアカップの予選を戦い、泥濘んだピッチや大雨といった悪天候と戦いながらタフさを身に付けた。11月のスペイン遠征で現在地を確認し、今年3月のアジアカップ本戦では準決勝に進出。上位4カ国に与えられるW杯の出場権を掴んだチームは見違えるようにたくましくなった。

 しかし、その経験が世界基準で照らし合わせた時に、本当に身になっていたのか――。福井太智の言葉が全てを物語っている。

「世界との差を感じた大会というより、自分たちの弱さを感じた大会。まだまだ自分たちは(力を)もっと引き出せたと思いますし、自分たちの能力も負けていない部分は多かったと思うけど、メンタル面や試合運びの弱さが出た」

 W杯は親善試合とは違う。本気モードの相手には技術だけでは勝てないのだ。だが、この経験は今までにできなかったことでもある。U-20代表での旅は終わったが、パリ五輪、その先のW杯に向けて、この悔しさと本気で向き合うしかない。彼らの新たな旅路はもう始まっている。

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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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