琉球ゴールデンキングスが証明した「団結の力」 Bリーグ初優勝を支えたコート内外の強みとは?

大島和人

Bリーグ発足7シーズン目で琉球が初優勝を成し遂げた 【(C)B.LEAGUE】

 20年前、日本のバスケットボールファンが「沖縄にプロバスケットボールチームが誕生する」「1試合平均で7千人近い観客を集めて優勝する」という予言を聞いたら、どう思っただろうか? よほど楽観的な人でなければ、悪い冗談と受け取っただろう。そもそも当時は日本のトップチームが次々に活動を休止し、リーグもプロ化構想は浮上しつつ進展しない冬の時代だ。

 2005年にbjリーグがプロとして発足し、琉球ゴールデンキングスは2007-08シーズンからそこに参入した。初年度こそ西地区の最下位にとどまったものの、翌シーズンには桶谷大・新ヘッドコーチのもとでプレーオフを制覇。彼らは沖縄に根ざした存在として、日本を代表するチームに発展していく。

 ドラフト制、サラリーキャップ(年俸総額制限)があったbjリーグから、自由競争のBリーグへ合流したことで、キャッチアップには少し時間がかかった。ただ琉球は西地区をこれまで6シーズン連続で制している。チャンピオンシップ(CS)は2018-19シーズンにセミファイナル(準決勝)進出、2021-22シーズンにファイナル(決勝)進出を達成。階段を地道に上がり続けた末に、2022-23シーズンのファイナルで初優勝を成し遂げた。

 今季のCSを無敗で勝ち上がった琉球だが、最後に対峙(たいじ)した千葉ジェッツは強敵だった。レギュラーシーズンでは53勝7敗と史上最高勝率を記録し、日本代表のポイントガード(PG)富樫勇樹を筆頭にエース級のオフェンス力を持つ選手が6人、7人と揃っている。下馬評は明らかに千葉優勢だった。

 しかし琉球は2戦先勝のファイナルで、27日の第1戦をダブルオーバータイム(延長)の激闘で96-93と制すると、第2戦は88-73と快勝。ついにBリーグの“キング”になった。

“地味”なメンバーが持つ強み

桶谷大HCは昨シーズン、9年ぶりに復帰した 【(C)B.LEAGUE】

 桶谷HCは第2戦の展開をこう振り返る。

「今日はディフェンス(DF)を強調して、特にトランジション(スティールやリバウンドからの速攻)と3ポイントを警戒しました。3ポイントが入りだすと、千葉は止まりません。富樫くんが3ポイントをポンポンと決めて、モメンタム(流れ)を持っていかれそうな時間帯もありました。しかしチームとして我慢しながら、DFを頑張って、最後にコー(フリッピン)が爆発してくれた。最後は去年の(ファイナルで敗れた)自分たちを見ているようで、負けている方がリスクを負ってオフェンスもDFをもしないといけない状況でした。逆に自分たちがいいDFをして、オフェンスでも点数を重ねて、こういう点差になったと思います」

 琉球のロースターを見るとジャック・クーリーはリバウンド、インサイドの得点力とBリーグ最強のセンターだし、アレン・ダーラムや今村佳太、岸本隆一とオフェンスの柱もいる。ただ言葉を選ばずに言うと、彼らは千葉より地味なチームだ。一方で攻撃ならボールやスペースを分け合う、守備は悪い流れを耐えられる強みがある。

 琉球は「ボールを持たなくても貢献できる」選手が多い。富樫の密着マークで奮闘していたシューティングガード小野寺祥太のような“仕事人タイプ”が、どの時間帯も誰かしら必ずコートに入っていた。

 昨季はファイナルで宇都宮ブレックスに2連敗を喫したものの、今季に比べて華のあるロースターだった。ただし並里成、ドウェイン・エバンス、小寺ハミルトンゲイリーといった主力級が今季は他クラブへ移籍している。昨シーズン、9年ぶりに琉球へ復帰した45歳の指揮官は、昨季と今季の違いをこう説明する。

「怪我をしていた田代(直希)と牧(隼利)が帰ってきた、(ジョシュ)ダンカンや松脇(圭志)が入ってきたところです。新しい選手が入ってくるなかで、去年と違うバスケットを目指さないといけなかった。最初はみんなのエゴや思いもあって、なかなか一つにまとまらなかったんですけど、とはいえそれぞれがチームメイトをリスペクトして、『今は誰が攻める』というような波長がどんどん合ってきた。最後の舞台はチームとして一番いい状態で、ピースがハマったというのが僕のイメージです」

ベンチメンバーが大一番で活躍

松脇圭志(中央)はクリストファー・スミス(右)を相手に持ち味の守備力を見せた 【(C)B.LEAGUE】

 千葉を上回った強みがベンチから出てくる“セカンドユニット”の貢献だ。琉球は2試合合計でベンチメンバーが90点を挙げていて、これは千葉(21点)の4倍以上。第1戦はダブルオーバータイムにもつれ込む展開で、千葉は富樫、原修太、ジョン・ムーニーが40分を超す出場で消耗していたのに対して、琉球は最後の“足”が残っていた。

 バスケは交代自由の競技だが、ビッグゲームになるとプレータイムの偏りが起こりやすい。しかし琉球はレギュラーシーズンのポリシーを変えなかった。

 桶谷HCは初戦後の会見でこう語っていた。

「選手をしっかり使いながらみんなで成長することを、このチームでずっとやってきました。チャンピオンシップだからということでなく、自分たちがやってきた普段通りを、今日の試合は出せたかなと思います」

 28日の第2戦は、第3クォーター途中に千葉の逆転を許した。ただ第3クォーター終盤のコー・フリッピン、松脇圭志、牧隼利らセカンドユニットが入った時間帯に、琉球の流れが来た。桶谷HCはこの3人を第4クォーターの終盤まで引っ張っている。

「いつものローテーションですが、あの時間帯から流れがよかった。DFでコーが富樫くん、松脇がスミス選手に付く相性もハマっていたし、オフェンスもコー、松脇が点を取っていました。ベンチに(岸本)隆一や今村(佳太)はいたんですけど、流れを自分で切るのでなく、このまま選手に任せようと思いました」(桶谷HC)

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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