連載:WBCで話題!あの代表選手のいま

いまや「国際的スター」の侍戦士・ヌートバー MLBでの期待値はどれほど上がったのか?

村田洋輔

WBCでの活躍を見て、多くの日本の野球ファンがヌートバーの虜になった 【写真:CTK Photo/アフロ】

「若手外野手の1人」から「国際的スター」へ

 昨年9月末、アルバート・プホルスとヤディアー・モリーナの大ファンである筆者は彼らの最後の雄姿をいちファンとして見届けるべく、セントルイスとピッツバーグでカージナルスのレギュラーシーズン最終6試合を観戦した。

 両雄の引退セレモニーも含めたセントルイスでの感動的な3連戦を観戦し終えた翌日、ピッツバーグのPNCパークに到着して開場と同時に入場すると、場内はビジターチームであるカージナルスの打撃練習が行われているところ。打撃ケージの横でチームメートと談笑していたラーズ・ヌートバーに「ラーズ! 日本から来たよ!」と呼びかけると、ヌートバーは笑顔でこちらに歩み寄り、「よく来たね!」とサイン、写真撮影に応じてくれた。

 筆者が手渡したボールにサインを書きながらヌートバーが「WBC楽しみにしてるよ!」と一言。このときに初めて、ヌートバーが侍ジャパンに加わるかもしれないということを認識したが、それから半年後、ヌートバーが超のつく人気者になっていようとは、そのときは想像もできなかった。

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ヌートバー(中央)はプレーではもちろん、侍ジャパンの盛り上げ役として世界一奪還に貢献した 【写真は共同】

 大会前には侍ジャパンとしてのWBC出場に一部から懐疑的な声も聞かれたヌートバーだが、大会後、いや大会序盤にはそんな声はほとんど聞かれなくなっていった。

 侍ジャパンの不動のリードオフマンとして自慢の出塁能力の高さを遺憾なく発揮しただけでなく、センターの守備でも印象的な好プレーを連発。「ペッパー・グラインダー」のパフォーマンスや試合前の円陣での声出しに代表されるように、チームを勢いづけるムードメーカーとしても見事な働きを見せた。筆者の行きつけのラーメン店ではヌートバーの名前を冠した限定ラーメンが販売され、MLB公式サイトでも「ヌートバー・ヌードル」として話題に。テレビでヌートバーの姿を見ない日はないと言っても過言ではないほどの大フィーバーとなった。

 MLB公式サイトでカージナルスの番記者を務めるジョン・デントン記者は、そんなヌートバーのフィーバーぶりを見て、ヌートバーのことを「国際的スター」、ヌートバーを熱心に応援する人々のことを「ヌート・マニア」と形容していた。球場での「ヌーイング」は昨年セントルイスを訪問したとき、すでにカージナルスファンのあいだに浸透していたが、東京ドームでも「ヌーイング」による応援が定着。WBCが終了してMLBのレギュラーシーズンが始まると、Twitterではカージナルスの球団公式アカウントだけでなく、MLBの公式アカウントまでもがヌートバーの本塁打や好守といった活躍シーンを映像付きのツイートで伝えるなど、日本だけでなくアメリカでもヌートバーへの注目度が高まっていることが見て取れる。カージナルスのレギュラー候補の若手外野手の1人に過ぎなかった昨季までのことを思えば、考えられないような状況だ。シアトル遠征でイチローさんと対面した際にもMLB公式サイトではトップニュースの1つとして扱われていた。

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著者プロフィール

神戸出身。2001年、イチローのマリナーズ移籍をきっかけに本格的にMLBに興味を持つ。2016年からMLBライターとしての活動を開始し、2017年から日本語公式サイト『MLB.jp』編集長。2021年にはSPOZONE(現SPOTV NOW)で解説者デビュー。ジャンカルロ・スタントンと同じ日に生まれたことが密かな自慢。

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