連載:WBCで話題!あの代表選手のいま

いまや「国際的スター」の侍戦士・ヌートバー MLBでの期待値はどれほど上がったのか?

村田洋輔

一流打者への階段を一歩ずつ着実に

開幕戦で負傷するものの、戦列復帰後は正外野手としてスタメン出場を果たしている 【Photo by Dilip Vishwanat/Getty Images】

 ヌートバーが昨季、平均打球速度やバレル率、四球率といった部門で優れた数字を残していたのは、WBCの大会前や大会中に日本の各メディアでも報じられていた通りだが、それだけに他球団からの評価も高く、オフにカージナルスがトレードで名捕手モリーナの後釜を獲得しようとした際には、トレードを打診されたブルージェイズとアスレチックスの両方がヌートバーに興味を示していたことが報じられている。

 ただ、当の本人は「僕はTwitterをやっていないから(トレードの噂は)気にならなかったよ」と笑い飛ばしていた。もちろん、カージナルスのチーム内における評価も高く、今年1月の時点でオリバー・マーモル監督は「ポジションはまだ決まっていないが」と前置きしつつも「外野で毎日プレーすることになるだろう」とヌートバーのレギュラー起用を示唆していた。

 そして、ヌートバーは指揮官の言葉通り、ブルージェイズとの開幕戦に「2番・左翼」でスタメン出場。1安打と2四球で3度出塁し、好スタートを切ったかに思われたが、三塁に滑り込んだ際に左手親指を突き指してしまう。数日間は故障者リスト入りせずに様子を見たものの、結局10日間の故障者リストに登録されることに。ヌートバーの離脱中にトップ・プロスペクトのジョーダン・ウォーカーをはじめ、ノーラン・ゴーマン、アレック・バーレソンといった若手打者たちが活躍していたこともあり、レギュラー争いの先頭を走っていたはずのヌートバーは一転して劣勢を強いられることになってしまった。

 しかし、マイナーでのリハビリ出場を経て戦列復帰を果たすと、2試合連続で3つの四球を選び、復帰2戦目では今季初本塁打も記録。この時点での打撃成績は打率.286、出塁率.667、長打率.714、OPS1.381という驚異的なものになっていた。日本時間4月20日のダイヤモンドバックス戦は相手先発投手が左腕だったため、休養を与えられて欠場したが、戦列復帰後はこの1試合を除いて全試合にスタメン出場。高い出塁能力に俊足好守を兼ね備えたヌートバーに対する指揮官からの高い評価は変わっておらず、センターを中心にライトとレフトも守りながらレギュラーとしての出場機会を与えられている。

名門カージナルス、そしてメジャーを代表するスラッガーへの成長を日本の野球ファンは期待してやまない 【Photo by Stacy Revere/Getty Images】

 日本時間4月27日には、開幕戦でのデビューから12試合連続安打の好スタートを切ったあと、メジャーの壁にぶつかっていた有望株ウォーカーのマイナー降格が決定。ヌートバー、ウォーカー、バーレソン、タイラー・オニール、ディラン・カールソンの5人が外野3枠を争う状況からウォーカーが脱落し、4人で3枠を争うことになったが、ジョン・モゼリアック編成本部長は「より独占的に」ヌートバーをセンターのレギュラーとして起用する方針を明らかにした。

 侍ジャパンで不動の「1番・中堅」を務めたヌートバーは、リーグ最多11度のワールドシリーズ制覇を誇る名門カージナルスでも正中堅手の座を手に入れたのだ。メジャー昇格以降の数字を見る限り、ヌートバーは左打者でありながらも特に左腕を苦にしておらず、今後は相手投手の左右に関係なく起用され、ゴールドシュミットやノーラン・アレナドのような不動のレギュラー選手に近い扱いを受けることが予想される。

 昨季はマイク・トラウト(エンゼルス)やフレディ・フリーマン(ドジャース)、ゴールドシュミットといった強打者たちを上回る平均打球速度を記録していたヌートバー。ポテンシャル的にはシーズン30本塁打も十分に狙えるはずだ。高い出塁率に長打率アップが加われば、一流打者の目安とも言えるOPS.900の大台も見えてくる。そうすれば、オールスター・ゲーム選出はもちろん、強打者の証であるシルバースラッガー賞も夢ではないだろう。もちろん、自慢の強肩と俊足を生かせばゴールドグラブ賞だって狙えるはずだ。

 超人気者の「国際的スター」になったとはいえ、まだメジャー3年目の25歳。ヌートバーの未来には無限の可能性が広がっている。

(情報はすべて日本時間5月1日の全試合終了時点)


(企画構成:株式会社スリーライト)

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著者プロフィール

神戸出身。2001年、イチローのマリナーズ移籍をきっかけに本格的にMLBに興味を持つ。2016年からMLBライターとしての活動を開始し、2017年から日本語公式サイト『MLB.jp』編集長。2021年にはSPOZONE(現SPOTV NOW)で解説者デビュー。ジャンカルロ・スタントンと同じ日に生まれたことが密かな自慢。

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