新たな力も加わって競うフィギュア世界選手権 さいたまスーパーアリーナで新たな伝説が生まれる
頭一つ抜けた強さをみせる現世界王者・宇野昌磨
連覇がかかる宇野昌磨は、挑戦者の姿勢で臨む 【写真は共同】
2014年世界選手権では、浅田真央が同年のソチ五輪で痛恨のミスをしたショート「ノクターン」を完璧に滑り切り、フリーも1位になって優勝を果たしている。また2019年世界選手権では、優勝したネイサン・チェンと銀メダルを獲得した羽生結弦がフリーで展開した、圧巻の演技が印象深い。
北京五輪の翌季となる今シーズン、新しい力も加わった中で、日本人選手が地元開催の世界選手権でどのような活躍をみせるのか、期待される。
今季の男子シングルでは、宇野昌磨が頭一つ抜けた強さをみせている。今シーズンの試合は全勝しており、今季の合計点を見ても現時点で300点を超えているのは宇野だけだ。昨季の世界選手権を制したが守りに入ることなく、今季も4回転4種類5本の高難度構成に挑み続けた。一方スケーティングや表現には自信を漂わせる25歳の宇野には、風格すら感じられる。連覇がかかっているものの宇野自身は挑む姿勢で臨むと思われる世界選手権で、どんな滑りを見せてくれるか楽しみだ。
頂点を狙えるポテンシャルを持つのが、シニアデビューシーズンから世界トップクラスに躍り出た18歳のイリア・マリニン(アメリカ)だ。昨季世界ジュニア選手権王者であるマリニンは、昨年9月のUSクラシックにおいて世界で初めて4回転アクセルを成功させ、一躍時の人となった。グランプリファイナルにも進出し、ショート5位と出遅れながらフリーで追い上げて銅メダルを獲得している。まだ滑りは粗削りだが、ジャンプ構成の難易度は世界最高といっていい。ショートとフリーをノーミスでそろえることができれば、驚くようなハイスコアをたたき出す可能性がある。
ジュニア時代から期待されながら、右足首の怪我により長く雌伏の時を過ごしてきた山本草太は、今季ようやく実力を発揮している。グランプリファイナルに進出して銀メダルを獲得し、世界選手権代表にも選ばれた。4回転が安定した今季は、深みのあるプログラムで魅せている。初の大舞台でジャンプをまとめることができれば、持ち味の伸びやかなスケーティングがより映えるだろう。
“代打の神様”として国際試合で実績を残してきた友野一希は、今季の全日本選手権で3位に入り、念願だった自力での世界選手権代表入りを果たした。観客と一体になるコレオシークエンスは、友野が持つ唯一無二の魅力だ。昨季の世界選手権も補欠からの繰り上げ出場で、ショートでは3位につけ、総合でも6位に入っている。今季こそショートとフリーをそろえ、より良い順位を目指したい。
また2月の四大陸選手権で銀メダルを獲得したキーガン・メッシング(カナダ)は今季限りの引退を表明しており、最後の世界選手権となる。欧州選手権王者のアダム・シャオ イム ファ(フランス)もメダル争いにからむ力を持つ。