仙台育英が目指すのは“2度目の初優勝” 自慢の投手力だけでなく、打撃の成長も見せる
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歴史的な1年を経ても、現チームの敗戦と向き合う
東北勢初の甲子園制覇を果たし、新たな歴史を築いたメンバーが多く残るチーム。しかし、現チームで喫した敗戦と真摯に向き合い、成長を積んで戻ってきた 【写真は共同】
須江監督が2018年1月に就任して以来、「日本一からの招待」を掲げ、甲子園での優勝を目標としてきた。就任5年目で達成。通常なら、続けて優勝することを「連覇」というが、仙台育英は「2度目の初優勝」を目指すと表現してきた。1年春からショートのレギュラーである山田脩也主将(新3年)は「連覇をするというよりも、初優勝をもう1回やるんだという気持ちで臨む方が自分たちはやりやすいです」と語る。連覇も2度目の初優勝も同じ日本一に変わりはないが、言葉1つで心理的な負担は減るようだ。それに、いくら2年生がレギュラーの半分を占めていたとはいえ、チームの屋台骨は佐藤悠斗前主将ら1学年上の選手たちだった。1年秋から背番号2で正捕手に座る尾形樹人(新3年)は「先輩たちの“ちょっと後ろから”という感じでした」と回想する。甲子園の頂に立つ喜びを、今度は自分たちの代で――。きっと、見える景色は違う。
胴上げ投手の高橋は「あと1キロ」のスピードアップに成功
昨夏の優勝に大きく貢献した高橋は、投球フォームのバランスを立て直したことでさらなる成長を遂げている 【写真:高橋昌江】
秋から背番号1を背負う高橋は昨夏の甲子園胴上げ投手。183センチの長身から角度ある球を投げ込み、大きく崩れることのない制球力で試合を作る。甲子園優勝はもとより、甲子園出場の原動力である。仙台育英は昨夏の宮城大会で危機に陥っていた。大会直前にサウスポーの斎藤蓉(当時3年)が左肘を痛め、2回戦で登板予定だった仁田は大会中の練習でぎっくり腰を発症し、戦線を離脱した。そんな中で5試合中4試合に先発し、当初のプランをカバーしたのが高橋だった。夏に場数を踏み、秋も投手の柱となった。それでも、投球時の「上と下の連動がうまくいかなくて」と自身に関する明るい話は少なかった。投球フォームと向き合ってきた冬を越え、2月下旬にあった合宿で自己最速である「147キロが出ました」という声がわずかに弾んでいた。
「秋は144キロとか145キロ、出ても146キロ。なかなか1キロが上がらなかったので、冬場は球速アップに向けて頑張ってきました。1キロでも上がったのは、とても嬉しいです」
届きそうで届かなかった1キロ。その原因の1つが投球フォームにあったが、タイミングやバランスが整ってきたことで、出力が増してアベレージが上がってきた。もう1つ、悩みが解消した。「体が開いてボールが抜けてしまう」と、以前まで投げ切れなかった内角にも理想通りにコントロールできるようになってきたという。