仙台育英が目指すのは“2度目の初優勝” 自慢の投手力だけでなく、打撃の成長も見せる

高橋昌江
 昨夏の甲子園で初優勝した仙台育英(宮城)。2年ぶり15回目のセンバツで21日に初戦を迎える。チームの強みは投手力。高橋煌稀、湯田統真、仁田陽翔、田中優飛(いずれも新3年)と140キロ超えの投手がそろい、それぞれが球速以外の特徴も持つ。対戦する慶応(神奈川)は昨秋のチーム打率が・382、15本塁打と大会屈指の打力を誇る。冬場の成長に手応えを感じている仙台育英にとっては申し分ない相手。強打を封じ、「2度目の初優勝」へのスタートを切る。

歴史的な1年を経ても、現チームの敗戦と向き合う

東北勢初の甲子園制覇を果たし、新たな歴史を築いたメンバーが多く残るチーム。しかし、現チームで喫した敗戦と真摯に向き合い、成長を積んで戻ってきた 【写真は共同】

 日本一から7ヶ月。仙台育英が甲子園に帰ってくる。昨夏、東北勢初となる甲子園優勝。ベンチ入り18人のうち、2年生が8人いた。決勝のスターティングメンバーには4人が名を連ね、勝利に貢献。優勝メンバーが残る中、すぐに始まった秋の公式戦では足元を見つめて東北大会を制し、明治神宮大会4強で歴史的な1年を終えた。冬を越え、再び、聖地での戦いに挑む時が来た。この過程を振り返り、須江航監督は「夏、秋、冬、春と停滞せずに成長してきたので、選手たちは立派だなと思います」と話す。仙台育英の選手たちは全国制覇に驕ることなく、満足も過信もせず、ついてまわる「夏春連覇」も受け止め、現チームで喫した敗戦や自己と向き合ってきた。

 須江監督が2018年1月に就任して以来、「日本一からの招待」を掲げ、甲子園での優勝を目標としてきた。就任5年目で達成。通常なら、続けて優勝することを「連覇」というが、仙台育英は「2度目の初優勝」を目指すと表現してきた。1年春からショートのレギュラーである山田脩也主将(新3年)は「連覇をするというよりも、初優勝をもう1回やるんだという気持ちで臨む方が自分たちはやりやすいです」と語る。連覇も2度目の初優勝も同じ日本一に変わりはないが、言葉1つで心理的な負担は減るようだ。それに、いくら2年生がレギュラーの半分を占めていたとはいえ、チームの屋台骨は佐藤悠斗前主将ら1学年上の選手たちだった。1年秋から背番号2で正捕手に座る尾形樹人(新3年)は「先輩たちの“ちょっと後ろから”という感じでした」と回想する。甲子園の頂に立つ喜びを、今度は自分たちの代で――。きっと、見える景色は違う。

胴上げ投手の高橋は「あと1キロ」のスピードアップに成功

昨夏の優勝に大きく貢献した高橋は、投球フォームのバランスを立て直したことでさらなる成長を遂げている 【写真:高橋昌江】

 この春、「2度目の初優勝」を成し遂げるために須江監督がポイントとして挙げるのは投手力だ。「それに依存してはいけないんですけどね。夏を経験し、秋の戦いで投手の軸となった3人がもう1つ、2つ上がれるかどうか。そして、4人目、5人目に入る投手の成長が望まれますね」。そう話したのはセンバツ出場校が決まった1月27日。「3人」とは高橋、湯田、仁田を指す。

 秋から背番号1を背負う高橋は昨夏の甲子園胴上げ投手。183センチの長身から角度ある球を投げ込み、大きく崩れることのない制球力で試合を作る。甲子園優勝はもとより、甲子園出場の原動力である。仙台育英は昨夏の宮城大会で危機に陥っていた。大会直前にサウスポーの斎藤蓉(当時3年)が左肘を痛め、2回戦で登板予定だった仁田は大会中の練習でぎっくり腰を発症し、戦線を離脱した。そんな中で5試合中4試合に先発し、当初のプランをカバーしたのが高橋だった。夏に場数を踏み、秋も投手の柱となった。それでも、投球時の「上と下の連動がうまくいかなくて」と自身に関する明るい話は少なかった。投球フォームと向き合ってきた冬を越え、2月下旬にあった合宿で自己最速である「147キロが出ました」という声がわずかに弾んでいた。

「秋は144キロとか145キロ、出ても146キロ。なかなか1キロが上がらなかったので、冬場は球速アップに向けて頑張ってきました。1キロでも上がったのは、とても嬉しいです」

 届きそうで届かなかった1キロ。その原因の1つが投球フォームにあったが、タイミングやバランスが整ってきたことで、出力が増してアベレージが上がってきた。もう1つ、悩みが解消した。「体が開いてボールが抜けてしまう」と、以前まで投げ切れなかった内角にも理想通りにコントロールできるようになってきたという。

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著者プロフィール

1987年、宮城県若柳町(現栗原市)生まれ。中学から大学までソフトボール部に所属。東北地方のアマチュア野球を中心に取材し、ベースボール・マガジン社発刊誌や『野球太郎』、『ホームラン』などに寄稿している。

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