大会の行方を左右するポイントは? WBC特有のルールを紹介
タイブレークは延長10回無死2塁から
2017年のWBC・2次ラウンドで侍ジャパンは中田翔(左)のタイムリーヒットでオランダとの延長タイブレークを制した 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
なお、同じ条件のタイブレークを採用したMLBでは、2022年にレギュラーシーズンで2430試合を行い、タイブレークまで持ち込まれたのは216試合で約9%。最長は延長15回までもつれ込んだ。同じ確率でタイブレークが発生したとすると、全47試合のうちの4試合がタイブレークとなる。先攻の戦術と、それを受けての後攻側の取る作戦。侍ジャパンも含め、各国がどのような戦術を取るか注目だ。
初戦から適用のリプレー検証
侍ジャパンが2006年2次ラウンドのアメリカ戦で物議をかもす裁定がくだされたことを覚えているファンもいるかもしれない。(編集注:8回に西岡剛のタッチアップの離塁が早いと判断され、勝ち越しの得点が取り消された)今大会ではこのようなシーンがあったとしてもチャレンジ権が残っている限り、ビデオ判定を要望できる。準々決勝までは1度しかない権利のため、試合が動きそうな場面で使うか、それとも我慢するか。該当プレーをどう判断するかの目も含めて、采配とは違ったベンチワークが問われることになる。
2次ラウンドが一発勝負に変更
2次ラウンドが廃止される今大会、侍ジャパンにとっての山場は準々決勝になりそうだ 【写真は共同】
1次リーグ最終戦が3月12、13日なので準々決勝が行われる15、16日(日本は勝ち上がれば16日)までは一定の間隔が空く。また準決勝は、アメリカへの長い移動時間があるとはいえ日本時間20日、21日のいずれかであり、こちらも間隔がある。つまりプールA、Bの準々決勝進出チームは、その後の準決勝、決勝の2試合よりも制約なく勝利のためにリリーフ投手を投入できるのだ。
例えば、侍ジャパンの準々決勝の相手がキューバだった場合、日本で実力を証明済みのリバン・モイネロ、ジャリエル・ロドリゲス、ライデル・マルティネスの3人で5イニング近く投げることが可能となる。この展開を許さないよう試合中盤までにある程度のリードを奪いたいところで、侍ジャパンにとって準々決勝は一つの山場になりそうだ。
他にも2022年にMLBで採用され、23年からはNPBでも取り入れられることになった先発投手が指名打者を兼任し、投手として降板後も継続して打席に立てる「大谷ルール」なども加えられているが、このルールはおそらくその名を冠した大谷翔平以外で適用されることはないだろう。短期決戦においては指名打者の枠がレギュラー野手の休養に使用されることはほぼなく、純粋に強打者が配置されるはずである。その強打者を差し置いてまで起用したい打撃力を持つ先発投手は、実質的に大谷以外にほぼ存在しないからだ。もし他国に大谷ルールを利用して打席に立つ先発投手がいた場合は、その時点で注目に値する存在と言える。
プロ野球や甲子園などの試合とは違った独特なルールの下で行われる第5回WBC。ルールを味方につけ、栄冠を勝ち取るのはどのチームになるのか。独特のレギュレーションを踏まえた各国の代表監督の采配も見どころとなるだろう。