なぜJリーグは「実績も実体もなかった」DAZNを選んだのか? 村井満氏が今だから語る秘話(2)
複数社に対する、入札のオリエンテーションが行われたのは、2016年4月のこと。実はこの時点で、まだDAZNのサービスは始まっていなかった。当時のチェアマン、村井満氏の言葉を借りるなら「実績もなければ実体さえもなかった」状態だったのである。加えて、参加事業者の中では唯一の外資。これまでJリーグは、外資との交渉は一度も経験したことがなかった。
こうしたネガティブ要素があったにもかかわらず、Jリーグが最優先の交渉相手にパフォームを選んだのは、もちろん契約年数と金額が魅力的だったことは間違いない。が、村井氏によれば「決してそれだけではなかった」という。
なぜJリーグは「実績も実体もなかった」DAZNを選んだのか? 今回も村井氏に振り返ってもらおう。
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ファーストコンタクトは2014年のミャンマー
DAZN元年となった2017年のJリーグキックオフカンファレンスを終えて取材に応じる村井チェアマン 【宇都宮徹壱】
その時に現地で出会ったのが、パフォーム・グループのディーン・サドラーさん。ディーンはニュージーランド出身の元ラガーマンで、東芝では社員としてプレーしていたから日本語がペラペラでした。彼は僕に会うために、わざわざ出張先のミャンマーで待ち伏せしていたわけです(笑)。
当時はまだDAZNというブランド名はなく、OTT(オーバー・ザ・トップ=インターネット動画配信)のサービスを開始するのも、それから2年後の話。ただ、サッカーを中心としたコンテンツサービスの『Goal.com』や、スポーツのデータを扱う『Opta Sports』を買収していて、規模は小さかったですが日本にもオフィスを構えていたんですよ。
この時にディーンからは、自分たちのビジネスの説明とともに「いずれJリーグと一緒に仕事がしたい」というようなことを言われたように記憶しています。そういえば、当時のGoal.comはクリップ動画の配信をやっていたんですが、「いつかはフルマッチをやりたい」みたいなことも言っていましたね。
それがのちの大型契約に発展するなんて、当時は夢にも思いませんでした。だって、まだDAZNなんて影も形もなかったわけですから(笑)。
実はディーンたちは、複数のローンチ(新規事業立ち上げ)候補の中に、日本をねじ込んでいるんです。プレミアとかリーガとかセリエAといった、巨大マーケットについては厳しい。そこでパフォームは当初、ブンデスリーガをはじめとするドイツ語圏を想定していました。それとは別に、ヨーロッパから遠く離れていた日本も、候補に挙がっていたんです。
なぜ日本だったのか?
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