男子バレー世界最高峰の舞台イタリア 石川祐希はホームの大歓声を背に堂々とプレー

田中夕子

イタリアでも多くの声援を受け、活躍する石川 【平野敬久】

 世界最高峰の舞台。イタリア・ミラノのホームアリーナ、アリアンツクラウドの5000名を超える大歓声の中でも、石川祐希は風格すら漂わせていた。

 2月19日、ミラノ対トレンティーノ。20時半の試合開始直前、スターティングンメンバーがコールされ、石川の名が呼ばれると最も多くの歓声と拍手が沸き起こる。

「ユーキ! ユーキ!」

 声出し応援も当たり前に日常に戻ったホームアリーナで、石川自身も「アリアンツ(クラウド)でこれだけ人が入った中で戦うのは自分も初めて」と言う環境下、浮つくことも臆することもなく堂々とコートに立つ。

 その前節、12日のピアツェンツァ戦ではチーム主将のマッテオ・ピアーノが欠場し、急遽キャプテンマークをつけた。もちろん日本人選手としては初めてのことであり、これまでも石川は通算得点や出場試合数など日本人選手として初めての快挙を成し遂げてきた。だが目に見える数字だけでなく、すでにミドルブロッカーのピアーノが後衛での不在時にはゲームキャプテンを務めている事実はチームの中でリーダーシップを持つ選手として認められた証でもある。

 そしてプレーオフを争う大事な一戦でも、チーム内で主軸として出場するだけでなくコート内も完全に石川はリーダーとしてチームの中心にいた。現在3位のトレンティーナとの試合でも、サイドアウトの応酬が繰り広げられながらも相手にブレイクされた場面や、絶好のチャンスでブロックポイントを喫した場面など、一気に流れが傾いてもおかしくない状況をその都度流さず、選手をコート内に集め、声をかける姿が見られた。

負けられない一戦のマッチポイントで迎えた絶好の場面

前節の主将不在時にはキャプテンマークをつけており、プレーだけでなく、リーダーとしてもチームの中心だ 【平野敬久】

 リーグ戦も終盤に差し掛かり、上位8チームが進出するプレーオフ争いも佳境を迎える中、3位のトレンティーノに対し、石川が所属するミラノは現在8位。より多くの勝ち点を得て、プレーオフ進出を確かなものにするためにも負けられない一戦だった。

 だが序盤、まず先行したのはトレンティーノだ。5対10と5点を先行した場面でミラノは最初のタイムアウトを要求する。追う展開が続く中、石川の冷静なプレーが流れを引き寄せる。

 前衛レフトから攻撃に入るも、トスがやや短く低くなったところで無理に打つのではなく的確にリバウンドでチャンスボールをつなぐ。そのラリーをミラノが制し12対15と点差を縮め、続いて石川のブロックポイントで13対15と追い上げる。サーブでプレッシャーをかけ、スパイクコースをふさいで相手のミスを誘い、ジワジワと点差を縮め、終盤に逆転すると、3枚ブロックが立ち並ぶ中を自ら決め24対21。会場からのミラノコールが響く中、最後は相手のサーブミスで25対22と逆転で第1セットを先取。続く第2セットも前半はリードされたが中盤に追いつき、デュースの末に26対24で連取し、勝利に王手をかけた。同じく僅差が続いた第3セットは23対25で落としたが、第4セットは石川のサーブからブレイクを重ね、前衛だけでなくバックアタックやブロックが3枚揃う中でハイセットを打ち切る活躍で得点を重ね、石川のレフトからのスパイクで24対21とマッチポイントをつかむ。

 勝利まであと1点。会場の熱気も最高潮に盛り上がる中、点差を詰められたが23対24の場面で、フィニッシュを決めるべきトスは石川に上がった。

 これ以上ない絶好の場面――。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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