男子バレー、ミドルの熱いマッチアップに注目 代表主力や昨季ブロック賞、42歳レジェンドも躍動

田中夕子

日本代表で活躍する山内晶大はV1リーグでも屈指のミドルブロッカー 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 10月に開幕したVリーグは後半戦に差し掛かり、プレーオフ進出をかけ各チームが僅差でしのぎを削る。1試合ごとの勝敗や、セット率、先を見据えれば勝敗はもちろん勝ち方にも注目が集まる中ではあるが、試合の楽しみはそれだけではない。

 チームスポーツの中で繰り広げられる「個」と「個」のぶつかり合い。マッチアップも醍醐味の1つだ。

 トップカテゴリーのV1リーグでは各チーム1名ないし2名(1名はアジア枠)の外国人選手を擁し、オポジットにはアウトサイドヒッター、逆もしかりと高い攻撃力と決定力を誇る外国人同士のマッチアップも多く見られるが、それ以上に心躍るのがミドルブロッカー同士のマッチアップ。中でも、共に日本代表選手として活躍する山内晶大(パナソニック)と髙橋健太郎(東レ)の激突は、実に見ごたえがあった。

山内vs.髙橋、代表でも活躍する2人は互いに闘志を燃やす

「追いつけ、追い越せの気持ちが常にある」と山内とのマッチアップを楽しむ髙橋 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 29歳の山内と27歳の髙橋、学年は1つ違いでどちらも身長は2m超え。両選手ともに大学在学時に日本代表へ初選出されており(共に14年)、Vリーグでも日本代表でもミドルブロッカーとして長年、ライバル争いを繰り広げてきた。

 1月21日のVリーグレギュラーラウンド、パナソニックのホームで行われた両チームの対戦でも山内、髙橋がネット越しに幾度もぶつかり合う。セット序盤に高い打点からのスパイクを放つ山内に対し、髙橋もブロックで応戦。サーブレシーブの返球位置や質、ローテーションの違いはあるものの、山内が攻撃態勢に入るたび髙橋がブロックで反応し、また逆も然り。攻守が目まぐるしく展開されるバレーボールで見どころはいくつもあるが、両者の動きを見ているだけでミドルブロッカーが担う役割は何か。ミドルブロッカーの攻撃回数が増えれば、サイドの選手へのマークが手薄になり、結果、自チームが得点するのにどれだけ有利になるのか、といったなかなか数字には表れにくい貢献度にも気づかされる2人のマッチアップは、実に面白かった。

 セットカウント3対1。勝利したのはパナソニックで、両者のプレーに目を向けても7本中3本のスパイク決定で42.9%、2本のブロックを決めた髙橋に対し、12本中9本のスパイクを決め75%という高い決定率を残しただけでなく、4本のブロックポイントも叩き出した山内に軍配が上がった。

 だが何より、互いの“対決”を楽しんでいたのは、見る者だけでなく、山内、髙橋自身でもあった。

 試合後、先に記者会見に現れた髙橋は、僅差の敗戦に悔しさを滲ませながらも、山内とのマッチアップを楽しそうに振り返った。

「尊敬できる部分がたくさんあるので、追いつけ、追い越せの気持ちが常にあるし、マッチアップで当たるだけで刺激をもらえます。山内さんもブロックがいい感じになってきたし、ライバルがいるって楽しい。僕自身もモチベーションが上がって、自分のプレースタイルや、エナジーが出せるので、結果的に自分のプレーもよくなる。そういう相手と戦えるのはすごく貴重だし、何より本当に楽しいです」

 山内も同様だ。ブロックの話を向けると「昨シーズンブロック賞を取った(髙橋)健太郎に言われると皮肉にしかならない」と笑いながら、髙橋と戦う楽しさを語る。

「健太郎のスパイクはブロックしてやろうと思うし、攻撃でも自分に(トスが)上がってこなくてもおとりで入って、そこに健太郎が飛んで、違うところを使う。もちろん東レのブロックオプションもあると思いますが、そういう駆け引きの中でうまくひっかけると嬉しいし、健太郎のブロックが来ているところで自分のクイックが決まるのも嬉しい。他のチームや他の選手ではできない場面で、味わえない感情です」

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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