日本代表の主力、古賀紗理那と石川真佑 攻守で会場沸かせた注目のエース対決
皇后杯決勝、レギュラーラウンド初戦の同カードはNECが勝利
激戦に終止符を打った東レのエース・石川真佑 【©V.LEAGUE】
「(1、2セットは)どこに打ってもNECのディフェンスがよかったので流れがつかめなかった。でも最後は絶対に決めてやる、という気持ちがあったので、とにかく強い気持ちを持って打ち切りました」
昨年末の皇后杯決勝でも対戦した両チーム。皇后杯は3対1でNECが勝利し、年明けに再開したVリーグでも前日21日の試合はNECが勝利した。レギュラーラウンドは3回総当たりでもう一度対戦機会があるとはいえ、同じ相手に負け続ければ知らぬ間に苦手意識も芽生えかねない。
何より互いに首位のJTマーヴェラスを2位、3位で追う状況だ。短期決戦のファイナルラウンドを制し、目標と掲げる日本一をつかむためには、レギュラーラウンドの戦いぶりがその後を占う要素にもなる。
その大事な一戦、石川の言葉にもあるように2セット目まではNECがほぼ完璧に近い展開で試合を進めた。中心は、エースで日本代表でも昨季から主将を務める古賀紗理那だ。公式帳票での数字を見れば圧倒的な決定率というべき数字には見えないかもしれないが、攻守においてコート内を統率し、「この1本が勝負を分ける」という重要な場面では着実に決める。2セットを連取し、勝利まであと1セットと迫る第3セットも、古賀の連続得点からスタートした。
試合の流れを変えた東レの大胆なメンバー交代
NECの古賀紗理那は試合を通してエースとしての存在感を発揮 【©V.LEAGUE】
1セットも落とせない状況で、ミドルブロッカーの井上奈々朱、セッター対角にアウトサイドヒッターの西川吉野を投入。レフトサイドのアウトサイドヒッターの石川とヤナ・クランも前後の位置を変える新たな布陣で臨んだ。
NEC・金子隆行監督は「試合の中でここまで東レさんがガラッと変えてくることはあまりなかった。何か変えなければ、というのが伝わってきた」と言い、東レ・越谷章監督は「スタートの選手もそれぞれ役割を果たしてくれていたけれど、流れを変えたかった。プレッシャーがかかる中、選手がよく頑張って応えてくれた」と交代理由と成果を明かす。
両監督の言葉からもくみ取れるように、メンバー交代から少しずつ流れを引き寄せる東レに対し、優勢に試合を進めていたNECにほころびが生じる。前半はブロックとレシーブが連携して上がっていたボールもつながらなくなり、長いラリーを東レが制する機会が増える。
その都度、「落ち着こう」とばかりに、両手を下に向けながらコート内で声をかけ続けていたのが古賀だ。スパイクやレシーブがミスになった選手に対しても「切り替えて次」と声をかけ、今何をすべきか、その都度明確にする。
2対2で向けた第5セットも古賀のブロックやサービスエースで一時は6対3と3点のリードを得たが、サーブで崩し、レフトに集まる攻撃を着実にブロックで抑え、チャンスボールからエースのヤナ、石川にボールを集めた東レが連続得点し、最後も石川の連続スパイクで15対10。フルセットの末に敗れると、古賀は「悔しい」と言いながらも冷静に、敗戦を振り返りながら前を向いた。
「サーブで崩して(相手のレシーブ)1本で直接返ってきたボールを決めきれなかったり、2本目をどこに上げるのかハッキリせずに崩れてしまった。そういうところに隙があったのかな、と。たとえ点差が開いても強さが拮抗しているチームはすぐにひっくり返す力を持っているし、実際私たちも逆の状況からひっくり返したこともあります。ほんのちょっとの隙で、すぐに足元をすくわれるとチーム全体で反省して、もっと厳しく。私自身も3セット目以降、一本で決められるボールを(ブロック)タッチで取られて相手に決められた場面も多かったのは個人的な反省で、もっと決め方を増やすことが課題。まだ試合は続くので、1人1人が課題と向き合って、試合を通して強くなっていけるチームを目指して頑張っていきたいです」