W杯戦士とコンビを組むJ2町田の大卒新人 平河悠の“三笘”を感じる強烈なプレー
J2開幕戦でフル出場を果たした平河悠(写真左) 【(C)FCMZ】
開幕戦で存在感
町田は19日の開幕戦で、ベガルタ仙台を相手に五分以上の戦いを見せつつ、0-0のスコアで勝ち点1をつかんだ。先発11名のうち、6名が他クラブからの移籍選手。現時点の登録は35名で、J1からの新加入選手、昨季の主力がベンチ入りから外れるほどの激しい競争状態だ。
ただ、平河は大卒新人ながら開幕戦の先発で起用され、タイムアップまでピッチに残った。特別指定選手として町田でのプレーは既に経験しているが、2001年1月生まれの彼はこの試合のチーム最年少。世代的にはパリ五輪の出場資格がある。前線ならどこでもこなせるタイプだが、現時点のポジションは右サイドハーフ(ウイング)だ。
仙台戦の活躍にはインパクトがあった。28分には相手の背後を取る超高速スプリントから右足クロスを上げると、29分に高橋大悟に1点もののラストパスを供給。44分にもカットイン、縦突破の気配を感じさせつつ横パスを送って高江麗央のミドルをお膳立てした。81分、87分と彼自身が迎えた2つの決定機も含めてゴールには結びつかなかったが、町田の決定機には高頻度で絡んでいた。
大卒新人がデュークやエリキ、高橋大悟といった実力者とともにピッチに立っているというだけで、それなりの価値はある。しかも平河は脇役でなく、完全に主役級の働きを見せていた。
「1枚だったら簡単に剥がせる」
「スペースのある中で(相手が)1枚だったら簡単に剥がせる」
平河は加速がスムーズで、相手を面白いように剥がせるドリブラーだ。右利きながら左足のキック、左方向への抜け出しもハイレベルで、仕掛けの選択肢が多い。突破して終わりではなく、味方に点で合わせる感覚も持ち合わせている。川崎フロンターレの新人選手として2020年前半のJリーグを騒然とさせ、W杯で世界にセンセーションを巻き起こした“あの男”とそのプレーは似ている。
スピードがあって、しかも縦へのスプリントと、内側へのカットインがどちらもいい。それは守備側から見ると、対応に困るタイプだ。この試合の町田は仙台の3バックに対して、サイドバックやトップ下との連携で平河が1対1になるように上手く仕向けていた。
黒田監督は試合後にこう語っていた。
「J1相手にもやれていたので、やはりいけるなと思いました。1つのポイントとして、平河を有効活用することは考えていました」
しかし山梨学院は都リーグながら2021年夏の総理大臣杯で関東予選を突破し、全国のベスト4進出という快進撃を起こす。攻撃の中心として活躍を見せた平河は当時3年生だったが、町田はすぐオファーを出して21年9月に“2023年の契約”を済ませた。昨シーズンも町田の特別指定選手として16試合に出場しているが、大学でのプレーを優先。チームを関東2部に昇格させて、晴れてプロになった。