春季キャンプたけなわの2月中旬、朝から精力的に各チームの取材をこなした里崎智也さん、五十嵐亮太さんの２人が、沖縄・那覇市内でセ・パ両リーグの優勝争いについて激論を交わした。今年の注目チーム、注目選手を自身の目でチェックした2人の見解は？　後編の今回は、パ・リーグの展望を語り合ってもらった。

――続いてパ・リーグの優勝争いを占っていきたいと思います。優勝候補はやはり前年のリーグ覇者・ソフトバンクでしょうか？

五十嵐　昨年はあれだけ大差をつけて優勝したので、今年も打線が大きく変わることもないですし、安定して勝ち進むでしょう。よほどのことがない限り優勝に最も近いチームだと思います。

里崎　ソフトバンクが間違いなく優勝候補筆頭でしょうね。

――セ・リーグ編で巨人に移籍した甲斐拓也選手について話しましたが、ソフトバンクのポイントはやはり「ポスト甲斐」になりますか？

里崎　甲斐の存在意義が測れるシーズンなので、間違いなく面白いですよ。

五十嵐　でも、ソフトバンクが優勝したらしたで、なんか切ないですね。ソフトバンクは資金力があるし、どうしても甲斐に残ってほしいなら残せたと思うんですよ。「出してもいい」とまでは言わないけども、契約内容が届かなかった、引き止めることができなかったというのは、甲斐が抜けても補えるという考えがあったのではないかなと。

――注目の正捕手争いですが、里崎さんはどんなところが条件になると思いますか？

里崎　打つだけです。いい捕手は「打つか、勝つか」ですから。それ以外ないんですよ。捕る、止める、投げるが最低限の一軍レベルであれば、打つ選手がいいんですよ。

五十嵐　甲斐くらいの打撃レベルでも？

里崎　勝てれば別に打撃レベルはいりません。捕手の評価は打つか、勝つか。チームが勝てば、打たなくても評価されるんです。甲斐も「日本一にさせた」と言われるわけですから。

五十嵐　打つか、勝つかのどちらかということですね。打たなくてもチームが優勝さえすれば評価されると。守備力は評価になりませんか？

里崎　例えば守備の評価って何がありますか？

五十嵐　盗塁阻止率とか、ブロッキングとか。

里崎　最下位でも？　結局はチームの成績による結果論じゃないですか？

五十嵐　いや、僕は守備の面も評価につながると思いますけどね。

里崎　守備の評価というのは、自分以外の選手の力が必要なんです。他者の力がプラスアルファで加わらないと評価にならない。捕手の力だけではないんですよ。投手の良さ、チームの強さがないと勝てないし、投手の防御率も関係するわけです。

五十嵐　それを言ったら投手だってそうですよ。他者の力が必要になってくる。

里崎　投手の場合は、捕手が誰でも自分がよければ抑えられるでしょ？

五十嵐　いやいや、そんなことないですよ。ここ一番のところで「あの捕手よかったな」というのはありますよ。投手からしたら捕手の存在意義は大きい。打つ以外でも、気持ちの支えにもなったりしますから。

里崎　これまで打てない、勝てない捕手で「名捕手」と言われた選手はいないんです。野村克也さん、古田敦也さん、谷繁元信さん、阿部慎之助は2000安打を打って日本一になっているし、巨人V9時代の森祇晶さん、西武黄金時代の伊東勤さん、矢野燿大さん、城島健司、みんなそうですよね。

五十嵐　甲斐の打率はそこまでではない。やはりチームを勝たせているということですよね。

里崎　勝たせているのは大きいです。あれだけ日本一になる選手もいないですからね。