ドジャースキャンプレポート2025(毎週木曜日更新)

大谷翔平の今季オープン戦初打席から見えたもの 菊池雄星から先頭打者HRも「スイング軌道にまだズレがある」

丹羽政善

菊池雄星から左越えに先頭打者本塁打を放つ大谷翔平 【写真は共同】

 大谷翔平(ドジャース)が打席に立つと、多くの人の足が止まる。

 2月28日(現地時間、以下同)、試合中に取材の予定が入っていた関係で、センターの奥にあるドジャースの練習施設から大谷のオープン戦初打席を見守ったが、大谷の名前がコールされた途端、それまで目の前を行き交っていた多くの人が立ち止まり、打席に目を向けた。

・昨年は2年連続3度目のMVP。今年は同じような活躍ができるのか?
・昨年のワールドシリーズで脱臼した左肩の回復は?
・日本での開幕戦に向けての調整は順調か?

 いろんな意味で耳目を集め、そこに菊池雄星(エンゼルス)との同門対決という要素も加わり、平日にも関わらずチケットが早々に完売したのは、当然だった。

 果たして結果はといえば、おそらく多くの予想を上回った。フルカウントからの6球目。菊池の外角高めの真っ直ぐを捉えた大谷の打球は、キレイな弧を描き、レフトのドジャースブルペンへ。

 打球を見送ったテーラー・ウォード(エンゼルス)は、「最初は、捕れると思った。しかし、まったく打球が落ちてこなかった」と苦笑し、続けた。

「相変わらず、翔平の打球は美しい」

 これまで、メッツ、ジャイアンツでプレーし、オフにドジャースに移籍してきたマイケル・コンフォート(ドジャース)は、別の視点で驚いていた。

「オープン戦のナイターは照明が暗いからボールが見にくい。きょうは、薄暮の時間に試合が始まったから、最初の1〜2回は、暗さ以上に夕陽が空全体を染め、さらにバックスクリーンに光が反射して、ボールが見づらかった」

 その時間のフライは見えづらいと、守っている野手が口にすることがある。それは打者も同じ。

「でも、翔平には関係なかったみたいだ」

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捕手・オハピーが要求した外角高めの根拠とは

外角高めをホームランにされた菊池雄星 【写真は共同】

 さて、あの場面で、捕手のローガン・オハピーが外角高めを菊池に要求したことが一部で批判されているよう。それに対して菊池が、捕手を擁護しているが、個人的にはやはり、オハピーはよく大谷のことを理解している、と感じた。

 克服した感はあるものの、2021年と22年、大谷は1本も外角高めを本塁打にできなかった。打球初速も他のコースに比べればやや低く、バレル率※/スイングも低い。

※打球初速と打球角度の組み合わせ。 打球初速が99マイルの場合、打球角度が25〜31でバレルゾーンに入る。打球初速が1マイル上がると角度の範囲も上下に広がり、打球初速100マイルの場合のバレルゾーンは打球角度24〜33度。過去7年、大谷の打球がバレルに入った場合の打率は.785。

 以下は、バレル率/スイングの比率だが、ストライクゾーンの中では一番低い。

2021年 バレル率/スイング 【参照:Baseball Savant】

2022年 バレル率/スイング 【参照:Baseball Savant】

 昨年は8%だったが、外角高めはフルカウントからストライクゾーンに投げるとしたら、長打になる可能性が非常に低いコースであり、四球を出したくないのであれば、その選択肢は“あり”である。

 ただ、欲を言えば、球速がもう少し欲しかった。打ったのは93.9マイルだったが、メジャー入り以来、左投手の外角高め真っ直ぐに対する大谷の打率は、94マイル以下と95マイル以上に大きな分水嶺がある。

94マイル以下  打率.350
95マイル以上  打率.200

 1マイルの差で、1割5分も打率が違うのである。あの試合で菊池は95マイル以上の球をコンスタントに投げていただけに、そこに誤算があった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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