連載:元WBC戦士は語る―侍ジャパン優勝への提言―

福留孝介が考える侍ジャパン最強布陣は? 村上宗隆の“後”を打つ打者が相当なキーになる

小西亮(Full-Count)

史上最強と呼ばれる今回のメンバーを栗山英樹監督はどう束ねるのか? 過去2大会の連覇に貢献した福留孝介氏が理想のオーダーを展望する 【写真は共同】

 うれしい悩みか、苦しむ難題か――。野球日本代表・侍ジャパンが挑む3月の「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」では、そうそうたるメンバーの起用法が悲願への大きなカギとなる。1月26日には、栗山英樹監督が代表30人を発表。日米融合のオールスター軍団は、史上最強との呼び声も高い。

 平均年齢27.3歳(今年の満年齢)と際立つ若さ。投手は半数の15人に上り、WBCでは過去最多となった。2006年の第1回大会、2009年の第2回大会で連覇に貢献した福留孝介氏も「基本は守ること中心に、という戦い方になるのかなと思います」と分析する。短期決戦を勝ち切るための最強布陣はいくつも考えられる中、想定される理想の打順やキーマンを展望してもらった。

投手・大谷は「絶対的に後ろでというのもひとつ」

大谷翔平の先発起用が大方の予想だが、福留孝介氏はオプションの一つとしてクローザーでの起用を提案する 【写真は共同】

 選んだ30人の顔ぶれに、指揮官の覚悟がにじむ。大味の試合にはなりづらく、“短期決戦はまず投手力”というのが過去の経験則に基づくセオリー。序盤で試合を崩しては厳しい戦いとなる。福留氏は、メンバー選考の意図を汲み取って言う。

「これだけピッチャーを揃えたということは、点を取ることを先に考えているというより、守ることを考えているのかなと。そうでなければ、外野手をもう1人くらい入れていたでしょう」

 先発ローテーションの中心は、チーム最年長のダルビッシュ有(パドレス)と山本由伸(オリックス)、そして佐々木朗希(ロッテ)と想定。第2先発の候補には今永昇太(DeNA)や戸郷翔征(巨人)、チーム最年少の高橋宏斗(中日)を挙げる。左腕の高橋奎二(ヤクルト)や宮城大弥(オリックス)は、第2先発も見据えながら臨機応変な使い方もできるとみる。

 昨季までチームメートだった高橋宏には「真っすぐが強くなったし、球の軌道も良くなった。困っても真っすぐだけではなく、フォークで勝負にいけるのが大きい」と太鼓判を押す。ただ、フルシーズンを戦ったのは昨季が初めてで、このオフはWBCに向けて前倒しの調整。「どこまで仕上げているか」とキャンプでの姿に注目する。山本や佐々木に匹敵するボールを投じる逸材には「第2先発かショートイニングで火消し。勢いでいってほしい」と言う。

 投手陣全体に大きな影響を与えそうなのが、大谷翔平(エンゼルス)の配置。先発が基本線になると見られているが、福留氏は状況次第ではクローザーとしての選択肢も見出す。「特に(状態が完璧ではない)春先なので、球数を使ってしまうと思う。だったらショートイニングでもいいのかなと。頭(先発陣)がある程度イニング数を稼げるのであれば、絶対的に後ろ(守護神)でというのもまたひとつ」。自身も出場した2009年の第2回大会ではダルビッシュが準決勝以降のクローザーを担っており、侍ジャパンだから可能になる贅沢な起用法だ。

 大谷はあくまで“オプション”と考えると、守護神の筆頭候補には栗林良吏(広島)を推す。2021年の東京五輪で胴上げ投手になった経験値もさることながら「球種を持っているし、全球が勝負球になる」との強みを評価。ほかにも所属チームで抑えを任されている大勢(巨人)や松井裕樹(楽天)がいるだけに、分厚い“勝利の方程式”になるとみる。

1番・大谷に下位打線からいかにつなげるか

福留氏は、打線のカギは村上の後を打つ打者だという。その根拠とは? 【写真は共同】

 さまざまなタイプを網羅した印象を受けた投手陣の一方、野手陣は強打に軸足を置いた人選にも映る。「足を使うメンバーがあまりいない。第1ラウンドは(狭い)東京ドームでの戦いだと考えると、打ち合いもある程度頭に入れているのかなと思う」と福留氏は言う。

 機動力なら源田壮亮(西武)やラーズ・ヌートバー(カージナルス)、小技は甲斐拓也(ソフトバンク)ら捕手陣にも求められてくる。「この辺の選手たちがどれだけ細かいことをしてくれるかというのも、ひとつ大事になってくる」とキッパリ。その上で、“福留監督”が9人のラインアップをイメージした。

1(指)大谷翔平
2(中)ヌートバー
3(右)鈴木誠也
4(三)村上宗隆
5(一)岡本和真or山川穂高
6(左)吉田正尚
7(二)牧秀悟or山田哲人
8(遊)源田壮亮
9(捕)甲斐拓也

 「一番のポイントは、大谷選手をどこに持っていくか」。昨季エンゼルスでは3番で79試合、2番で40試合、1番で32試合出場した二刀流をリードオフマンに置く。4番は史上最年少3冠王の村上宗隆(ヤクルト)にどっしり座ってもらい、その前を鈴木誠也(カブス)。その後ろは岡本和真(巨人)か山川穂高(西武)の一塁手の“二者択一”とした。

 議論のひとつとして取り上げられることも多い二塁には、山田哲人(ヤクルト)より先に牧秀悟(DeNA)の名前を挙げた。「セカンドは守備と打撃、どっちを取るか。山田選手がどれくらいの仕上がりになってくるのか分からないのもありますが、逆に山田選手が元気なら2番に置いてもいいと思います」と含みを持たせる。

 二刀流の大谷を除く野手15人の懸念点をあえて挙げるとすれば、「誰も替えが効かない」とみる外野手陣。左翼が吉田正尚(レッドソックス)か近藤健介(ソフトバンク)と考えると「終盤にレフトの守備固めに誰か行くことになる」。外野手登録で周東佑京(ソフトバンク)が入ったが、想定されるのは代走のスペシャリスト要員。仮に誰かに不測の事態があった場合、一抹の不安が残るという。30人と限られた人員で、チーム内でのやりくりも重要になる。

 大谷、村上、鈴木と世界でも引けを取らない重量級の上位打線は、必然的に相手の警戒心も高まる。それだけに、福留氏が「相当キーになる」と断言するのが“村上の後”。選手で言うなら、岡本や山川になる。「点を取りたかったら、(村上の)後を打つバッターの調子が上がってくるかどうか。5番や6番で切れてしまうと、その後がつながってこない」。逆に下位打線にかけてもうひと山作れると、1番・大谷に回せるという青写真が描ける。

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著者プロフィール

1984年、福岡県出身。法大卒業後、中日新聞・中日スポーツでは、主に中日ドラゴンズやアマチュア野球などを担当。その後、LINE NEWSで編集者を務め、独自記事も制作。現在はFull-Count編集部に所属。同メディアはMLBやNPBから侍ジャパン、アマ野球、少年野球、女子野球まで幅広く野球の魅力を伝える野球専門のニュース&コラムサイト

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