初の四大陸選手権で銅メダル獲得の千葉百音 金メダリストを輩出したリンクで目指す理想は?

沢田聡子

千葉にとって初のISUチャンピオンシップとなった四大陸選手権で、堂々とした滑りを見せた 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 四大陸選手権・女子フリー、ショート7位につけた17歳の千葉百音は、緊張した面持ちでリンクの中央に向かう。『バタフライラバーズ』が流れ、長い手足をしなやかに動かして滑り出した千葉は、3回転ルッツ―3回転トウループを着氷させた。

 東北高校2年生の千葉は今季の全日本ジュニア選手権で2位に入り、推薦選手として全日本選手権に出場した。ショートプログラムではミスのない演技で3位につけ、フリーの最終グループに入っている。フリー冒頭の3回転ルッツで転倒したこともあり総合では5位になったものの、ジュニアスケーターでありながら四大陸選手権の代表に抜てきされた。

 伸びのあるスケーティングと上品な所作が魅力の千葉は、たおやかさの中に芯の強さが感じられるスケーターだ。基礎から積んできた鍛錬がうかがわれる千葉は、2006年トリノ五輪金メダリストの荒川静香や2014年ソチ・2018年平昌五輪を連覇した羽生結弦を輩出したアイスリンク仙台で練習している。

 千葉はトリプルアクセルや4回転といった大技はまだプログラムに入れていないが、エッジを深く倒すステップや美しい姿勢で回るスピンで、フィギュアスケート本来の魅力を感じさせてくれる。今季のショート『シンドラーのリスト』では哀愁を漂わせ、またフリー『バタフライラバーズ』では東洋的な曲調を体現して、ジュニアの枠におさまらない表現を披露してきた。正統派と呼びたくなる千葉のスケートは、来季転向するというシニアでも高く評価されるだろう。

 千葉にとって、この四大陸選手権は初のISU(国際スケート連盟)チャンピオンシップだった。ショートに臨む千葉の表情はやや強張ってみえたが、コンビネーションジャンプが回転不足と判定されたものの、演技をまとめた。ショートのスコアは67.28で、7位発進となっている。

 バーチャルミックスゾーンで、千葉は安堵した様子だった。

「初めてアメリカに来て、時差調整も初めての経験で少し手こずってしまったのですが、なんとかショートプログラムを大きいミスなく終えることができて、ちょっとほっとしています」

 アップの時間帯には眠気に襲われ「頑張って自分をたたき起こしました」という。

「ショートプログラムは全日本のフリーほど緊張しなかったのですが、それでも今まで出た中で一番大きい大会ということを肌に感じていたので、緊張しました」

 ひと安心しながらも「(回転不足になった)ショートのルッツが今すごく悔しい」とも口にした千葉は、フリーへの意気込みを語っている。

「とにかく完璧な、まっすぐなルッツを跳んで。(3回転)ルッツ―(3回転)トウ(ループ)をクリーンに降りて、他のジャンプも全部完璧な、ノーミスの演技がしたいです」

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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