初の四大陸選手権で銅メダル獲得の千葉百音 金メダリストを輩出したリンクで目指す理想は?

沢田聡子

「夢にも思っていなかった」銅メダル獲得

銅メダル獲得に「驚きと嬉しさが半々くらい」と、素直な心境を表した 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 成功を誓ったフリー冒頭のコンビネーションジャンプでは、3回転ルッツは決まったものの、セカンドジャンプの3回転トウループは4分の1回転不足と判定される。しかしそれ以降のジャンプはすべて成功させており、スピンもすべてレベル4を獲得した。会心の演技を終えた千葉は、ガッツポーズをみせている。

 キスアンドクライで137.70というフリーの得点を見た千葉は驚きの表情を浮かべたが、バーチャルミックスゾーンではすでに課題を見つけていた。

「ノーミスの演技ができてすごく嬉しいのですが、おのずと少しスケーティングが小さくなってしまったところが、今回の課題として見つかったところですね」

 千葉が常に心がけているのは伸びやかな滑りであることが、うかがえるコメントだった。フリーのみの順位では2位だった千葉は、ショート7位から順位を上げて銅メダルを獲得するが、メダリスト会見でも同じ反省を述べている。

「今日の演技は自分の中でもジャンプを全部降りることができて、少し滑りは小さくなってしまったんですけれども、自分の中で満足のいく演技ができてよかったです」

 千葉は記者会見で「今回銅メダルをとれるとは夢にも思っていなかったので、驚きの感情と嬉しい感情が同じくらい」とも口にした。

「年齢的にも、次のミラノが競技のピークを迎えるべきオリンピックかなと思うので、そこを目指して今頑張っているところです」

 また、憧れの選手についても語っている。

「女子選手も男子選手もたくさんの尊敬する皆様がいる中で、同じリンクの出身である羽生結弦選手は、そのうちの一人として名前を挙げるべき選手です」

「スケーティングとスピンとジャンプ、すべてが秀でているのが私の理想の選手像」という千葉の根底には、羽生のスケートが常に目標としてあるのかもしれない。

 今季、千葉はクープドプランタンにも出場を予定している。「満足のいくようなシーズンの締めくくりとして、最善の演技をしたい」とした上で、シニアに転向する来季を見据えた。

「来シーズン、もっとシニアで通用するようなスケーティングスキル、体を大きく使えるように。後は4回転やトリプルアクセルなど、大技の習得に向けてまた練習に励んでいきたいです」

 着実に培ってきた基礎を持つ千葉には、自らを高めようとする確かな意志も備わっている。名スケーターを生んできた仙台から現れた新星が、未来に向けて大きな一歩を踏み出した。

2/2ページ

著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント