磨き上げた滑りを見せた坂本花織と三原舞依、大技に挑んだ島田麻央 それぞれの輝きを放った全日本選手権

沢田聡子

ジュニア世代の台頭を感じる坂本は「この大変さを味わい続けていたい」

果敢に大技に挑戦した島田のフリーは、トップスケーターたちにも確かな印象を残した 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 記者会見では、ノービス時代から同じリンクで切磋琢磨してきた坂本・三原と、ジュニアからの推薦で出場した島田が並んで座った。坂本と三原に対してはジュニア世代が台頭していること、また島田には初めてシニアの選手達と一緒に滑ったことについての感想が問われている。

 坂本は「ジュニアの子が上がってきていることについては、10年前に自分もやってきたこと」と語った。

「10年前は、(浅田)真央ちゃん達が最前線で戦っていた時。今22になって、ジュニアが上がってくる恐怖をすごく感じていて。オリンピック選手として、また代表としていろいろなプレッシャーがある中で、上の人達はそれをひっくるめて素晴らしい演技をずっとやり続けていた。今この年になって初めてその難しさに気づくことができたし、こういう経験が今もできてすごく嬉しい。これからもずっと大変だと思いますが、『この大変さを味わい続けていたいな』と感じていて。ジュニアが育っているということは、本当に日本の未来は明るいなと思っています」

 三原は「ジュニアの子達と一緒にこうして同じ舞台で戦うことができて、間近で見ていても本当にすごいなと」と口にした。

「どこでもポンポコポンポコ、ジャンプを跳んでいて、本当にすごいという言葉しか出てこなくて。今朝も、『私もこれぐらい軽く跳びたいな』と思いながら練習していた」

 体が動かない状況も増えてきているという三原の率直な感想だったが、同時に昔の自分も重ねて見ているとも語った。

「ジュニアの子達は私達が小さかった頃よりもすごく緊張してこの舞台に来て、いろいろな経験を積んでいる時期だと思うので。『懐かしいな』とも思いながら、ただただ『すごいな』という思いでいっぱいです」

 一方、期待通りの活躍を見せた島田は、冷静に自己分析している。

「この大会でシニアの強い選手たちと一緒に出て、『自分はすべて、全部まだ追いついていないな。これからもっともっと追いついていけるように頑張っていきたいな』と思います」

 自分を追い込む練習で滑りを磨き上げて臨んだ坂本・三原と、大技に挑戦し失敗しながらその後の演技を完遂した島田。卓越した能力と向上心を持つ新星が、完成度の高い演技を追求する先輩達の姿勢を同じリンクで体感した、2022年の全日本選手権だった。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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