昨季のB1王者・宇都宮に連勝して5連勝 川崎ブレイブサンダースを浮上させている戦術と新戦力

大島和人

川崎はヤングジュニア(左)と篠山竜青(右)の活躍で宇都宮に連勝 【©B.LEAGUE】

「1勝1敗ペース」から抜け出す

 川崎ブレイブサンダースは8勝6敗で、年の瀬の12月を迎えていた。今季のB1は3シーズンぶりに東中西の「3地区制」に戻り、川崎は激戦の東地区から中地区に移っている。昨シーズンの順位をもとに考えれば、川崎は中地区制覇の筆頭候補だ。ただ我々の評価、本来持ちうる力と照らし合わせると、彼らは明らかに苦戦していた。

 金土、土日の連戦で連勝できないことも彼らの課題だった。12月16日・17日の宇都宮ブレックス戦に至るまで、8回あった2連戦カードのうち連敗が2回、連勝が1回で、残る5回は「1勝1敗」に終わっている。1試合目で成功しても、2試合目で対応されてしまう――。川崎が自信を取り戻し、チャンピオンシップで彼らが目指すものを手に入れるためには、そんな壁を乗り越える必要があった。

 宇都宮戦は、今後へつながる2試合になったはずだ。16日の第1戦を97-86で取った川崎は翌日、苦しみつつ70-66の勝利をつかんだ。相手は2021-22シーズンのB1王者に連勝をしたのだから、これ以上ない収穫だ。12月の川崎はここまで6勝1敗で、開幕からの通算が14勝7敗。三遠ネオフェニックスの失速もあり、中地区首位に浮上してきた。

宇都宮のDFに戸惑う時間帯も

 佐藤賢次ヘッドコーチ(HC)は17日の試合後、こう語っていた。

「前半から相手の対策がすごくて、全く的を絞らせてもらえず、苦しい試合になりました。我慢してつかんだ勝利だと思います。今日の勝利は本当に大きいし、この先につながるいい試合ができた」

 苦戦の要因は宇都宮が見せた変幻自在のディフェンス(DF)だったという。

「ウチのピック&ロールに対して激しくショウ(出て戻る守備)に出てくる場面と、一歩で終わる場面と、スイッチする場面と……。スイッチした後のミスマッチでトラップ(=ダブルチーム/1人に2人が行く対応)に行く場面と、トラップに行かない場面がありました。それだけ色んなことをやると、守っている選手は迷うはずですけど、(宇都宮は)むちゃくちゃ精度高くやってきた。ウチの選手たちは迷わされて、なかなかいい起点を作れなかった」

 川崎には昨シーズンのMVPプレイヤーである藤井祐眞と、元日本代表キャプテンの篠山竜青がいる。この2人のポイントガードは、ニック・ファジーカスを中心にしたインサイドとの連携もいい。インサイドが相手をスクリーンに引っ掛けて、ビッグマンがガードに対応する状況になれば、一般的にはオフェンス有利な状況が生まれる。しかし宇都宮の守備には“秩序あるカオス”があり、川崎は困惑していた。

 結果として指揮官は前半、エースの藤井を敢えてベンチに下げる時間帯が長かった。

「前半はみんなコートに立たせたいし、前半の(藤井)祐眞は完全に迷わされていて、1回ベンチに下がって冷静に状況を見たほうがいいと思いました。あれだけ苦しい前半だったので、後半勝負になる読みもあった。だから後半に少し引っ張ろうかなという意図で、前半は休ませていました」

 前半終了時点のスコアは22-32の10点ビハインド。川崎はマット・ジャニング、宇都宮は比江島慎が負傷で不在という事情もあり“重い”展開になっていた。とはいえ“前半22得点”はオフェンスが停滞していた証明となる数字だ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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