昨季のB1王者・宇都宮に連勝して5連勝 川崎ブレイブサンダースを浮上させている戦術と新戦力

大島和人

「ツーガード」で打開に成功

藤井と篠山(写真右)のツーガードが17日の勝因に 【©B.LEAGUE】

 しかし川崎は後半に48得点を挙げて、逆転勝利を飾っている。篠山竜青、藤井祐眞と起点になれるガードを2枚起用する“ツーガード”が効いたからだ。

「ウチの大きな武器がピック&ロールから始まる、起点を使って、そこでできたズレを大きくしていくボールムーブです。(前半は)一個目で迷わされて、何もできなくて終わるオフェンスが多かった。ツーガードにして1個目がダメでも、ボールを動かした先にもう一回ピック&ロールがあるようになった。一個目のところでヘルプに寄っている分、二個目の(守備対応は)精度が落ちます」(佐藤HC)

 それでも第4クォーターは、最大8点のビハインドを負う苦しい展開だった。篠山が2本の3ポイントシュートで流れを変え、逆転勝利をもたらすヒーローになった。もっとも彼は“チームが作ったシュート”であることを強調する。

「ボールムーブのところでも、いいフィーリングがかなり増えてきている。ビッグラインナップがリバウンドでもすごくエナジーを出して、ハードワークをしてくれたので、迷いなく打ち切るだけでした」

ゾーンDFが新外国籍選手を生かす

チームへの適応を見せるヤングジュニア(右) 【©B.LEAGUE】

 チーム力の底上げも見て取れる。川崎は昨シーズンの主要メンバーをそのまま残したチーム編成だが、外国籍選手が新たに加わった。新加入のマイケル・ヤングジュニアは206センチ・105キロのビッグマンで走力とスキルに優れ、ハンドラーもできるタイプだ。徐々に思い切りよく仕掛ける場面が増えている。

「彼自身が(川崎の)プレーと、チームメイトを知らなければいけません。自分がどこに行くのかとか、いつ仕掛けるか、10月はそれを考えながらプレーしていました。でも考えている分、足が動いてなかった。バイウィーク(中断期間)にしっかり練習を積み重ねて、ビッグラインアップの3番(スモールフォワード)で出る時間が長い中で、やることが明確になってきた。それがいい影響を及ぼしているかなと思っています」(佐藤HC)

 川崎が速攻につながりやすいゾーンDFの割合を増やしたことも、いい波及効果を生んでいる。佐藤HCはこう説明する。

「ゾーンから走ればマッチアップがズレるので、そこにJ(ジョーダン・ヒース)のリムランと、マイク(ヤングジュニア)のサイドアタック、(藤井)祐眞のボールプッシュ、ハセ(長谷川技)のコーナースリーがあって、ニックのセカンドトレイル(後からファジーカスが走り込んで来て、オフェンスの選択肢が増える状況)もある。トランジション(からの速攻)が5連勝の一番大きな要因です」

 篠山は守備に加えて、ヤングジュニアの適応を口にする。

「DFはゾーンとか、色々やってきていて、調子は上がってきていていました。2日目に対応されて、勝ち切れていなかった。ただ、やっていることが間違いでないという手応えはみんなあったと思います。個人的に大きいと感じるのは、マイケル・ヤングジュニアが3番、4番(パワーフォワード)で、ボールプッシュやローポストのところで起点になって、オフェンスの効率がぐっと上がったことです。彼はチームを落ち着かせられるし、勢いをつけられる。チーム全体にすごくいい影響を与えている」

 ゾーンDFの活用と、それに伴うヤングジュニアの本領発揮――。12月に入って川崎が浮上している背景をシンプルに説明すれば、そういう結論になる。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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