黒田剛監督が選ぶ「青森山田ベストマッチ」

黒田剛監督が選ぶ「青森山田ベストマッチ③」【後編】 「本当にコイツらすげえな」と思った瞬間

吉田太郎
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大津を寄せつけず4-0で勝利。過去2年、準優勝に終わっていた青森山田は完璧な試合運びで通算3度目の優勝を飾った 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 J2・FC町田ゼルビアの監督就任が決まり、28年間率いた青森山田を今年度限りで去る黒田剛監督。すでに監督の座を退き、第101回全国高校サッカー選手権には総監督の立場で臨む。1995年に監督に就任し、同校を全国随一の強豪に成長させた名将は、過去に出場した26回の選手権で76試合の指揮を執った。その中から黒田監督本人に「ベストマッチ」と言える3試合を挙げていただいた。今回は最後の試合、2021年度大会決勝・大津(熊本)戦の後編だ。

勝負が決した終了間際に見せた勝利への執念

 4-0の後半45+2分、青森山田は右コーナーでキッカーの宇野禅斗が、ボールを小さく蹴り出して目の前の松木玖生に預ける。ゴール方向に背を向けてコーナーキープする松木と宇野に対し、激しく寄せてボールを奪おうとする大津のDFたち。青森山田はFW小湊絆とMF本田真斗、そしてMF田中栄勢も加わってDFをブロックし、マイボールのスローインを獲得した。

 続くスローインも、青森山田は松木がコーナー付近で身体をいっぱいに伸ばしてキープする。そして、マイボールのスローインになったことを確認すると、味方選手とハイタッチ。大津も3人、4人がかりでボールを奪って攻撃に繋げようとするが、青森山田の選手たちの強靭なフィジカルに阻まれてしまう。そして、青森山田はまた複数の選手でコーナーキープを試み、結局この間、1分近く時計の針を進めた。

 一般的にこうしたプレーは、試合終盤に1点差や2点差でリードしているチームが勝ちきるために行う“時間稼ぎ”だ。それを青森山田は、4-0の後半アディショナルタイムに実施。その光景を目の当たりにしたスタンドはどよめき、彼らの勝利への執念は国内外のメディアによって報じられた。

 「清々しくない」「なぜこんなことを?」「あれをこの場所でやる必要ある?」という否定的な意見があったことも確か。このプレーはコーチ陣が指示したものではなく、選手たちが自発的に行ったものだ。これまで報じられていなかったコーナーキープの理由。黒田監督は、「実は、我々しか知らないきっかけがあってですね」と言って明かしてくれた。
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