高校サッカー選手権・出場校ランキング
記事
第101回大会と“新たな章”に突入する全国高校サッカー選手権。予選から波乱が相次ぎ、混戦必至の今大会で頂点に立つのはどのチームか。ここでお届けするのは、出場校のチーム力ランキングだ。「得点力」「守備力」「選手層」「経験値」「完成度」という5項目について各20点満点で採点し、その合計点をもとにトップ25校を導き出した。
(著者:松尾祐希、企画・編集:YOJI-GEN)
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解説
昨季は松木玖生(現FC東京)らを擁した青森山田が頭ひとつ抜けた存在で、他の追随を許さないほど絶対的な力を誇った。実際、選手権でもライバルたちを圧倒。夏のインターハイ、U-18高円宮杯プレミアリーグEASTに続いて優勝を成し遂げ、高校3冠に輝いたのは記憶に新しい。
あれから1年。打って変わって今年の高校サッカー界は各校の実力が拮抗しており、101回目を迎える今回の選手権もどこが優勝しても不思議ではない。しかも予選から波乱続きで、流経大柏、市立船橋、静岡学園、東福岡といったU-18高円宮杯プレミアリーグ勢や、インターハイ準優勝の帝京といった有力校が相次いで敗退。冬の覇権を巡る争いは、まさしく混沌としている。
では、群雄割拠の今大会を制するのは、はたしてどこなのか──。
現時点で最も頂点に近いのは、夏の王者・前橋育英だろう。今年のチームはタレントぞろいで、春先から好調を維持してきた。とりわけ攻撃の破壊力は凄まじく、キャプテンのMF徳永涼(3年)を軸にテンポ良くボールを回しながら敵陣に迫り、ゴールを重ねてきた。崩しのバリエーションは豊富で、MF大久保帆人(3年)などがサイドから仕掛けたかと思えば、中央からは2トップを組むFW高足善(3年)、FW小池直矢(3年)らが局面を打開していく。
今季開幕前には副主将で攻守の要を担うMF根津元輝(3年)が重傷を負ったものの、代わってMF青柳龍次郎がボランチとして台頭。充実の戦いぶりで夏のインターハイに臨むと、暑さに苦しみながらも分厚い選手層を支えに、準決勝で米子北、決勝で帝京を下して13年ぶり2度目の優勝を飾った。
以降は山田耕介監督が、「過去にインターハイを制した年の選手権は1回戦で負けている。ふわっとした雰囲気にならないようにしたい」と懸念していた通り、夏のフェスティバルなどで苦戦を強いられた。それでも、根津の復帰でポジション争いが激化したこともあってチームの雰囲気が引き締まると、今予選では安定した戦いを見せて出場権を手にしている。5年ぶりの選手権制覇に向けて抜かりはない。日本一の座を勝ち取る資格は十分にあるはずだ。
そんな前橋育英を追う各校も実力的にはそん色がなく、どこも大会の主役を担う可能性を秘めている。
ランキング2位に推す昌平は対抗馬の筆頭で、とりわけ攻撃力は今大会ナンバー1と言っていい。伝統のテクニカルなスタイルは健在で、FC東京に入団が内定している右サイドハーフの荒井悠汰(3年)を中心に、変幻自在な仕掛けを見せる。さらにトップ下の篠田翼(3年)、左サイドハーフの長準喜(2年)も個人技で局面を打開できるアタッカー。この2列目の3人を軸に展開するテンポの良いアタックが生命線となる。
また、今年のチームはセットプレーも大きな武器だ。右足なら2年生のMF土谷飛雅、左足なら荒井がキッカーを務め、高精度のボールを蹴り込んでゴールをお膳立てする。これまでは守りを固められて得点を奪えない試合も少なくなかったが、強引にゴールをこじ開けられる飛び道具を持っているのは心強い。
一方の守備陣は、夏のインターハイ準々決勝で右足首に重傷を負ったDF津久井佳祐(3年/鹿島入団内定)が今予選から復帰。GK上林真斗(3年)とともに最終ラインを支えるキャプテンのカムバックにより、安定感はグッと増した。今大会の昌平は最激戦区のDブロックに組み込まれ、順当に行けば3回戦で前橋育英と当たる公算が高い。さらにここを突破しても、準々決勝では大津との対戦が予想される。ただ、厳しい戦いが続くとはいえ、頂点を目指せるだけの戦力は有しているはずだ。
その大津は、今年も隙のないチームに仕上がっている。前回大会の準優勝メンバーはFW小林俊瑛(3年)、MF田原瑠衣(2年)など数名のみで春先はチームがまとまらず、U-18高円宮杯プレミアリーグWESTでも勝ち点を伸ばせなかった。それでも、目先の結果に囚われずに戦ってきたことで、選手個々が着実に力を付けていく。
188センチと上背がありながらフィード力にも定評のあるCB碇明日麻や、180センチの大型左SB田辺幸久ら2年生がレギュラーに定着すれば、最上級生も意地を見せ、ボランチの浅野力愛やGK西星哉らが成長。夏のインターハイでは一体感のある戦いでベスト8まで勝ち進んだ。「秋までにまとまってくれれば」と平岡和徳総監督が目論んでいた通り、夏以降も右肩上がり。今予選も3試合で12得点・0失点の盤石ぶりで、危なげなく全国切符を手に入れた。厳しいブロックに入ったが、決勝で涙を呑んだ前回大会の悔しさを晴らしたい。
そんな大津よりも上位にランクインしたのが、履正社と青森山田だ。
3位の履正社は攻守のバランスが良く、優勝候補の一角に推せるチームの1つ。大会屈指のドリブラー、MF名願斗哉(3年)ばかりに目を奪われがちだが、高円宮杯U-18プレミアリーグWESTで得点ランク2位につける主将のFW古田和之介(3年)など、攻撃陣には他にも個性的なタレントがそろう。
また守備陣もGKのジョン・カミィ信バー(3年)を中心にまとまっており、簡単には崩れない安定感が備わってきた。夏のインターハイはベスト16で姿を消したが、高円宮杯U-18プレミアリーグWESTで揉まれた経験を活かすことができれば、冬の巻き返しは可能だろう。
一方、前回王者の青森山田は、1年を通じて苦しい戦いを強いられた。開幕前からメンバーを固定できず、シーズンが始まってからは主軸に負傷者が続出。主将でCBの多久島良紀(3年)やMF中山竜之介(3年)といった昨季の栄光を知る面々が安定して試合に関われず、伝統の“ゴールを隠す守備”にも綻びが見られた。
夏のインターハイも初戦となった2回戦で帝京に1-2で逆転負け。高円宮杯U-18プレミアリーグEASTではもがきながらも何とか勝ち点を拾ってきたが、今予選も決勝で八戸学院野辺地西に粘られ、延長戦の末に辛くも出場権をつかんでいる。ただ、厳しい試合が続く中で、どんな状況でもタフに戦う術を身に付けてきたのも事実。今大会終了後、J2町田ゼルビアの指揮官に転出する黒田剛総監督のために一致団結できれば、連覇の道も切り開けるはずだ。
トップ5からは漏れたが、神村学園と東山にも注目したい。
6位の神村学園はMF大迫塁(3年/C大阪入団内定)、FW福田師王(3年/ボルシアMG入団内定)の2枚看板を軸に、攻撃的なサッカーを展開する。ボランチの笠置潤(3年)もサッカーIQが高い実力者で、下級生には技巧派FW名和田我空(1年)、攻撃センスに優れる左SBの吉永夢希(2年)というU-16日本代表コンビも擁している。長年の課題だった守備にも粘り強さが出てきた。ここ一番で勝負強さを発揮できれば、悲願の日本一も見えてくるだろう。
東山は前回の選手権でベスト8に入ったメンバーが多く残り、経験値は図抜けている。来季からC大阪でプレーするサイドアタッカーの阪田澪哉(3年)、U-17高校選抜にも選出された経験のあるボランチの真田蓮司(3年)が中心となって、スピード感のある攻撃を展開する。守備陣も簡単には崩れない強さがあるだけに、日本代表の鎌田大地(フランクフルト)を輩出した古都の強豪校が旋風を巻き起こしたとしても、驚きはない。
その他、FW森重陽介(3年/清水入団内定)を擁する日大藤沢、総合力に秀でた丸岡も、勢いに乗れば上位躍進が狙える好チーム。はたして、混戦必至の今大会でも伝統校や常連校が底力を発揮するのか、それとも新興勢力が新たな歴史の1ページを記すのか。101回目を迎える真冬の祭典から目が離せない。