黒田剛監督が選ぶ「青森山田ベストマッチ③」【前編】 理想を実現した“パーフェクトゲーム”
黒田監督は11月の青森県予選決勝(写真)を最後にその座を退いた。「あれが理想のサッカー」と語るのが、監督としての選手権ラストゲームとなった前回大会の決勝だ 【吉田太郎】
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高校サッカー史上最強と言えるチーム
2021年度の青森山田は、“高校サッカー史上最強”と言っても過言ではないチームだった。インターハイで1大会最多得点記録を更新する30得点(6試合)を叩き出し、16年ぶりの優勝。その一方で、4人がプロ入りした静岡学園(静岡)との準決勝など3試合で被シュートゼロを記録し、米子北(鳥取)との決勝では後半終了間際と延長後半終了間際のゴールで勝ちきる勝負強さも示した。さらにプレミアリーグEASTでも強豪・FC東京U-18をシュートゼロに封じ、名門・市立船橋(千葉)を9-0と圧倒。13勝1分2敗で堂々の2冠を達成した。
迎えた選手権は、準々決勝まで対戦相手を警戒しすぎた面があった。2-1で東山(京都)に競り勝った準々決勝直後、黒田監督はピッチ上で選手たちに檄。「攻守にわたって終始相手にボールを握らせずに圧倒していくだけの力がありながら、東山に先制されて際どい試合をしてしまったことを反省しました。『相手じゃなくて、強かった青森山田を存分にやろうぜ』、と切り替えてやった準決勝、決勝でした」と説明するように、青森山田は高川学園(山口)との準決勝を6-0の大差で制すると、決勝でも別次元の強さを見せつけた。
相手に前を向かせずシュートを打たせない
攻→守の素早い切り替えで大津の選手の動きを封じた青森山田は、37分にCKから先制すると、その4分後に加点。前半で2点のリードを奪った 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
だが、青森山田は立ち上がりから攻守の切り替えの速さが際立ち、相手のビルドアップを封鎖。キャプテンでFC東京入団が内定のMF松木玖生と、「彼みたいな選手がいることはチームにとって有効なこと」(黒田監督)という町田内定のMF宇野禅斗のダブルボランチが次々とセカンドボールを回収し、DF陣も出足の鋭い守備で相手に前を向かせない。
そして、意図を持って相手の背後へロングボールを入れ、繋げる状況であれば確実にボールを繋いで大津を押し込んだ。だが、大津は簡単にはクロスを上げさせず、ゴール前でも身体を張ってシュートをブロックする。それでも、青森山田は前半だけで9本を数えたコーナーキックから先制点。前半37分、MF藤森颯太の左コーナーキックをニアへ飛び込んだDF丸山大和が頭でゴールに突き刺した。
丸山はインターハイ決勝の2ゴールに続く大舞台でのゴール。畳み掛ける青森山田は、41分にも左サイドから仕掛けたMF田澤夢積のクロスをFW名須川真光がスライディングシュートで決めて2-0と突き放した。
国立競技場のピッチで躍動する青森山田に対し、大津は後半、森田を中心に相手を見ながらビルドアップ。セットプレーの数を増やす。だが、青森山田はシュートを全く打たせない。逆に後半10分、藤森の左ロングスローの流れからエース松木が頭でゴールを決め、大会期間中に亡くなった名将・小嶺忠敏監督(長崎総科大附)に捧げるゴールパフォーマンスを行った。