【福西崇史のスコア予想】日本vs.スペイン「勝利のカギを握るアンカー潰しと三笘の“壊す力”」

吉田治良

ダブルボランチの一角には田中碧を

まずは守備を重視した布陣でスタートしたい。ダブルボランチの一角には、ボール奪取能力と運動量に優れた田中碧(写真左)を、福西氏は推す 【Getty Images】

──スペイン戦のシステムはどうしましょうか。

 最初から3バックで行ってもいいでしょう。スペインはコスタリカに7-0で大勝しましたが、相手が4バックから3バック(実質5バック)に変更してからは、スベースを使い切れない時間帯もありましたから。スペインはとにかくギャップを突いてくるので、そこをある程度人数をかけて埋めるやり方はありだと思います。結局、過去の2戦も3バックにしてから良い流れができましたし、最初からはっきりさせるのも1つの手でしょう。

──3バックの人選は?

 吉田麻也、板倉滉、伊藤洋輝の3選手じゃないですか。

──伊藤洋輝選手は、コスタリカ戦で逃げのパスが多かったと批判もされましたが……。

 三笘選手にパスを出さず、中へのパスやバックパスばかりだったと言われていますが、僕は(あの選択が)分からないでもないんです。単純に三笘選手に預けて、あとはお願いしますでは厳しいし、まずは中に入れて、相手を揺さぶった後に勝負させてこそ、三笘選手の良さは生きる。そういった展開を考えた上での選択であったなら、別に悪くはなかったと。問題は、そうした意図がチーム全体で共有されていないことであり、三笘選手を有効に使おうとしていなかったことなんです。

 ただ、3バックの人選は伊藤洋輝選手でも、コンディションさえ良ければ冨安健洋選手もいいんですが、何はともあれラインの作り方は徹底した方がいいですね。スペインはライン間への選手の出入りが激しいし、足もとがダメだったら裏にも走れるので、とにかくギャップだけは作らないようなラインコントロールが重要になります。いずれにしても守備時は5バックにして人数をかけた方が、横や縦のズレにも対応できるので、危険な場所で自由に持たれるリスクは軽減できると思います。

──ボランチですが、負傷欠場も噂される遠藤航選手がスタメンで使えた場合、コンビを組むのは守田選手になりますか。

 僕は田中碧選手でいいと思います。まずはボールを奪う、守り切ることを考えれば、スタートは運動量も多い田中碧選手で行く。ボールを持てる守田選手は途中投入で変化をつけたいですね。

──ウイングバックは?

 左が長友佑都選手、右はコンディションに問題がなければ、酒井宏樹選手で行きたい。コスタリカ戦で右サイドバックとして先発した山根視来選手も、W杯初出場とは思えないほど落ち着いていて、攻撃に関しては斜めのパスを積極的に入れていました。ただ、やはり守備のことを考えたら、酒井選手かなと。

──前線の構成は?

 右のウイングバックに伊東純也選手という選択肢もありますが、そこに酒井選手を使えるのであれば、2シャドーは鎌田選手と伊東選手、そして1トップが前田大然選手。スタートはやはり守備重視で、前からどんどん追ってもらいたいですね。

──コスタリカ戦では鎌田選手になかなかボールが収まりませんでした。

 確かに、そこが大きな問題でしたね。これは、ボールを持てる守田選手が積極的に上がって、相手のボランチのところを崩そうとしたために、遠藤選手との距離が開きすぎてしまったことも影響したと思います。ダブルボランチの距離感、ボランチと鎌田選手の距離感は、スペイン戦に向けての修正ポイントでしょうね。

抑えたいブスケッツの“経由のパス”

勝てば自力で決勝トーナメント進出を手繰り寄せられるスペイン戦。司令塔のブスケッツは温存の噂もあるが、相手のアンカーからのパス供給をまずは抑えたい 【Getty Images】

──スペイン戦のキープレイヤーは誰になりますか?

 怪我の状態は気になりますが、スタメンで出てくれば遠藤選手でしょう。守備に関してはすでに世界でも通用するレベルですが、プラス今回は勝利を求められるなかで、攻撃面でも相手に怖さを与えていかなくてはならない。周りを使いながら、あるいは自分で持ち運んでラインを上げていく仕事も必要になりますから、そうした攻守のバランスをどれだけ航が上手く取れるかが、スペイン攻略のカギになると思います。

──そして、流れを変えたいときに、三笘選手や浅野拓磨選手を投入する?

 そうですね。三笘選手の局面打開力というのは、世界でもトップクラスだと思います。ならばスタートから使えばいいという意見はたくさん耳にしますし、その気持ちは僕も分かります。ですが、途中から出きて、相手が一番嫌がるのは、やはり三笘選手なんです。もちろん三笘選手をスタメンで使い、あとで相馬選手という手もありでしょうが、最高の切り札は手元に残しておきたい。相手を“壊す力”は、ドイツのザネ選手にも匹敵します。かなり研究もされているでしょうが、ザネ選手がスペイン戦で果たしたような役割を、三笘選手には期待したいですね。

──スペインで一番警戒すべき選手は?

 ブスケッツ選手ですね。あの“経由(のパス)”は本当に嫌だし、あそこを抑えないと、前も後ろも左右もやりたい放題にパスを通されてしまう。ブスケッツから自由を奪い、ある程度はパスコースを限定したい。さもなければラインを上げられなくなって、自陣に釘付けにされてしまうでしょう。仮にブスケッツが温存となっても、アンカーからのパス供給を封じるのは最優先事項。その意味でも、遠藤選手の立ち位置やボールの動かし方がポイントになってくるんです。

──では最後に、スコア予想をお願いします。

 2-1で日本の勝利。めちゃくちゃ願望が強いですけど(笑)。ただ、ゼロに抑えるのは難しいかもしれませんが、日本が得意とするカウンターから2点はありうる。大前提は先制点を奪うこと。1点取れば、相手が出てきたところをカウンターでもう1点、というシナリオも見えてきます。

──先に取られると厳しいですね。

 ボールを回され始めたら、どうしようもないですからね。あのスピードで、あの距離感で回されると、やられている方は相当きつい。ショートパスだけでなく、ミドルレンジのパスもバンバン入れてきますから。だからこそ、まずは司令塔のブスケッツを潰し、パスコースを限定しないと、勝ち筋は見えてこないんです。

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福西崇史(ふくにし・たかし)

1976年9月1日生まれ、愛媛県出身。新居浜工を卒業後、95年にジュビロ磐田に加入。激しいプレーを身上にボランチの定位置を掴み、チームの黄金時代を支えるとともに、自身も4度(99年、2001年、02年、03年)のJリーグベストイレブンに輝いた。その後、FC東京、東京ヴェルディを経て09年1月に現役を引退。18年には東京都社会人サッカーリーグの南葛SCで現役復帰を果たし、同年11月から約1年間は同クラブの監督を務めた。日本代表としては02年日韓大会と08年ドイツ大会の2度のW杯に出場。通算成績は64試合・7得点。現在は主に解説者として活躍中だ。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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