【福西崇史のスコア予想】日本vs.ドイツ「初戦で大事なのは相手に勝ち点3を与えないこと」

吉田治良

“堅い試合”に持ち込むには、前線からのプレッシングが大前提。まずは前田のスプリント力で、スピードにやや難のあるドイツのCBに制限をかけたい 【Getty Images】

 日本時間11月23日の22時にキックオフが迫ったカタール・ワールドカップ(W杯)の日本対ドイツ戦。重要なグループリーグの初戦、森保ジャパンは強豪ドイツを相手にどんなサッカーを見せてくれるのか。元日本代表MFで、選手として2002年日韓大会と06年ドイツ大会の2度のW杯を経験している福西崇史氏に、試合展開やキープレイヤーなどについて聞くとともに、勝敗・スコア予想までしてもらった。

攻める時にも常にリスクは考えておく

──まずは、福西さんが予想するドイツ戦のスターティングメンバ―を教えてください。

 システムは4-2-3-1。ゴールキーパーが権田修一で、ディフェンスラインは右から酒井宏樹、吉田麻也、冨安健洋、長友佑都、ダブルボランチが遠藤航と守田英正、2列目の右に伊東純也、トップ下に鎌田大地、左に久保建英、そして1トップが前田大然と予想します。

──左サイドバック(SB)が無念の負傷離脱となってしまった中山雄大選手から長友選手に代わっただけで、あとは9月のアメリカ戦(2-0で勝利)と同じメンバーですね。

 そうですね。違うとすれば前線の顔ぶれが多少変わるくらいで、おそらく奇策は用いてこないと思います。

──先日のカナダとのテストマッチ(1-2で敗戦)では、試合終盤に3バックも試しました。

 3バックは攻撃的に行きたい時だけでなく、守備を固めたい時にも使えるシステムですから、状況に応じて使うのは全然ありだと思います。それができるだけの選手も揃っていますから。ただスタートは、やはり慣れ親しんだ4-2-3-1か4-3-2-1(4-3-3)で行くでしょう。

──重要なグループリーグの初戦、しかも強敵ドイツを相手に、日本はどう戦えばいいですか?

“堅い試合”にすることでしょうね。高い強度を保って守りながら、攻める時にも常にリスクは考えておく。そのためには前線からのプレッシングが大前提になりますが、もちろん90分間フルでそれをやり続けるのは難しいので、ハイプレスができない時にはブロックを構え、あえて相手に持たせる状況を作ることも大切です。それをチームとして判断し、(試合の中で)方向性を決めていけるか。臨機応変にプレッシングとリトリートを切り替える。要するにメリハリが大事だと思います。

キミッヒを“経由させない”ことが肝心

ドイツ代表のMFキミッヒは、福西氏いわく「実にいやらしいところを狙ってくる選手」。ダブルボランチのどちらかが前に出て早めに手当てをしたい 【Getty Images】

──ドイツに弱点は見当たりますか?

 これといった大きな穴はないですね。ただ、最終ラインからのつなぎに関しては、アントニオ・リュディガーは別にしても、他のセンターバック(CB)は少し判断もプレースピードも遅いように感じます。ここを前田選手のスプリント力で抑えられれば、ビルドアップに制限がかけられるでしょう。あとは相手の裏のスペースを上手く使うことも1つのポイントです。ドイツのSBはさほど信頼性が高くないので、たとえば右サイドからスピードのある伊東純也選手が積極的に裏のスペースを突いていけば、DFラインは下げられるし、中盤の選手間の距離も広げられる。そうなれば日本の俊敏性が生きてくると思います。

──ドイツで特に警戒する選手は?

 セントラルMFのヨシュア・キミッヒと、おそらく1トップに入るカイ・ハバーツですね。特にキミッヒにフリーでボールを持たれると、かなりの確率でチャンスになります。実にいやらしいところを狙ってくる選手なので、そこを抑えたいですね。

──キミッヒにマンマークを付ける可能性はありますか?

 それはないと思いますが、肝心なのはキミッヒを“経由させない”こと。遠藤選手か守田選手のどちらかが前に出て行って潰すとか、トップ下の鎌田選手が意識して見るとかして抑えないと、どんどんしんどくなっていくと思います。ただキミッヒを封じようとすれば、ボランチでコンビを組むイルカイ・ギュンドアン(またはレオン・ゴレツカ)が空いてしまうんですが……。とはいえ、いずれにしてもダブルボランチのどちらかは前に出て守備をするべきで、その判断がアメリカ戦のように上手くハマればいいですね。

──そうして“堅い試合”に持ち込みつつ、できればゴールも狙いたい。どう攻めますか?

 攻撃の機会は限られるでしょうが、スピードを生かしたカウンターは、ショート、ロングを問わず狙っていきたいですね。それは日本がやらなくてはいけないことであり、同時にやられてはいけないことでもあります。あとはセットプレーですね。

──日本はセットプレーからなかなか点が取れていませんが。

 弱いですよね。取れないし、逆に取られるんだから(苦笑)。ただ、こうしたぎりぎりの戦いでこそセットプレーが重要なカギになりますし、それで取れればかなり楽になる。

──キッカーは誰が?

 これっていう選手がいないのが残念なんですが、久保選手の左足には期待しています。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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