元日本代表DF坪井慶介のドイツ戦解説 「歴史的な一戦のMVPはリュディガーにきっちり仕返しをした──」

吉田治良
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歴史的勝利の立役者となった浅野。リュディガーのリスペクトを欠いた対応が、逆転ゴールを呼び込むきっかけとなったのかもしれない 【Getty Images】

 強敵ドイツを相手に、歴史的な勝利を飾った日本代表。前半の劣勢を見事にはね返し、逆転で大金星を手に入れたドラマチックな一戦を、元日本代表DFの坪井慶介氏が解説する。森保一監督の大胆な采配、GK権田修一のビッグセーブなど、いくつかの勝因があるなかで、坪井氏が見逃せないポイントとして挙げたのは、殊勲の浅野琢磨とドイツ代表DFアントニオ・リュディガーが競り合った、後半のワンシーンだった。

縦を切って中に誘導して奪いたかった

 いやぁ、すごい試合になりましたね。僕はパプリックビューイングで試合を観ていたんですが、ちょっとテンションが上がって、ぐったり疲れてしまいました(笑)。

 たしかに前半は厳しい戦いになりましたが、森保一監督を含め、よくチーム一丸となって劣勢の状況から試合をひっくり返したと思います。

 試合を振り返れば、立ち上がりから日本は浮足立つことなく、プラン通りにプレスには行けていました。ただ、ドイツも左サイドバック(SB)のダビド・ラウム選手を高い位置に上げ、中盤センターのヨシュア・キミッヒ選手とイルカイ・ギュンドアン選手が少し落ちることで、日本のプレスに捕まらないような変化を加えてきた。それに対応できないまま、時間が過ぎてしまった印象がありましたね。

 伊東純也選手がラウム選手に引っ張られてしまったのは仕方がないにしても、どこかで縦を切って中にボールを誘導し、ボランチの2枚(遠藤航選手と田中碧選手)、もしくはトップ下の鎌田大地選手のところで奪うとか、そういうやり方があっても良かったのかなと。相手に寄せては行くけど、どこにボールに誘導し、どこで奪いに行くのかが明確ではありませんでしたね。特に前半の最後のほうは後手に回って、ひたすらボールを追いかける展開になってしまった。

 それは日本の左サイドも同じで、セルジュ・ニャブリ選手が高い位置に張って、トップ下のトーマス・ミュラー選手が落ちてくるので、なかなか外で数的優位を作れなかった。だとすれば、そこにボールを運ばせないことを、まずは考えるべきだったと思います。とはいえ、最後のところでよく踏ん張って、前半をPKによる1点で抑えられたことが、後半の反撃につながったのは間違いありません。

メリハリが効いていた3バック

これまではスタメンを引っ張る傾向が強かった森保監督だが、この大一番では迅速かつ大胆な選手起用を見せた。坪井氏もその采配を絶賛する 【Getty Images】

 後半にがらりとチームが変わったのは、3バックへのシステム変更はもちろん、おそらくハーフタイムに森保監督から「リスクをかけて行こう」という指示があったからだと思います。

 前半も、本当はもっとハイプレスを仕掛けたかったんでしょうが、先ほども言ったように上手く(プレスを)剥がされてはまらず、自分たちの予想よりも前から行く時間が少なくなってしまったんだと思います。ただ、途中から自陣にしっかりブロックを作って、とにかく前半は耐えるんだという空気は感じましたね。あくまで想像ですが、おそらくこれはピッチにいる選手たちで判断した戦術変更だったと思います。
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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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