【福西崇史のスコア予想】日本vs.ドイツ「初戦で大事なのは相手に勝ち点3を与えないこと」

吉田治良

「ボールを運べる」鎌田のプレーは貴重

前線のスピードを生かす狙いのロングボールは、相手にも警戒されている。だからこそ、前を向いてボールを持ち運べる鎌田のプレーが重要になる 【Getty Images】

──日本のキープレイヤーを1人挙げるとすれば、誰になりますか?

 鎌田選手ですね。

──どんなプレーを期待していますか?

 ボールを持ち運ぶプレーですね。日本にスピードのある選手が多くいることは相手も間違いなく知っているし、警戒もしているでしょう。ですから、伊東選手などを走らせるロングボール一辺倒では、やはり手詰まりになってしまう。だからこそ個の力で仕掛け、ボールを運べる鎌田選手のプレーが貴重なんです。鎌田選手はカナダ戦でも、意識して前を向くプレーを見せてくれていた。今の日本代表で局面を打開する縦パスを出せるのは、鎌田選手と柴崎岳選手くらい。おそらくスタメンで起用される鎌田選手がやってくれないと、ドイツの守備陣を崩すのは難しいでしょう。

──森保一監督は「総力戦」を強調していますが、5人交代制の今大会では選手交代も大きなポイントになってきますよね?

 三笘薫選手、相馬勇紀選手といった“武器”を、どこで使うか、ですね。

──三笘選手はスタメンではなく、ジョーカー起用のほうがいいと?

 僕はそう思います。スタートから彼を使って相手の体力を奪う仕事をさせるよりも、向こうの体力が落ちたところで三笘選手を投入するほうが効果的ですから。あとは、ボールキープとか崩しの仕事を託すなら堂安律選手、「走り」ということを考えたら南野拓実選手を途中投入してもいいと思います。

──それでもドイツに勝つのは難しいのでは?

 いえ、難しいとは思いませんよ。先ほども言いましたが、セットプレー一発で先制できたらかなり楽になると思いますし、チャンスがないわけではないので、その勝負所で確実に決めきれれば……。あとは前回大会のコロンビアとの初戦(2-1で勝利)のように、相手が退場者を出すなど運も味方してくれたらいいなと(笑)。

スコアレスのまま時計の針を進めれば……

ドイツ戦では最低でも勝ち点1を奪いたいが、たとえ敗れたとしても次の試合に向けて切り替えればいい。福西氏は森保ジャパンの結束力を信じている 【Getty Images】

──では、福西さんは日本の勝利を予想されますか?

 グループリーグの初戦で大事なのは、最低でも勝ち点1を奪うことであり、同時に相手に勝ち点3を与えないことなんです。もちろん1度や2度は必ず決定的なチャンスは訪れるはずですが、名手マヌエル・ノイアーの最後の砦を崩すのは簡単ではないでしょう。やはり、最初にも言ったように“堅い試合”に持ち込み、スコアレスのまま時計の針をどんどん進められるような展開にしたい。そうなれば焦るのはドイツのほうなので。

──最終的なスコア予想は?

 0-0のスコアレスドロー。もちろん先制されれば勝負に出ざるを得ませんが、僕は手堅く勝ち点1を取りに行くサッカーをすると思っています。
──では最後に、いよいよW杯の初戦を迎える日本代表にメッセージを送っていただけますか? 2度のW杯(2002年日韓大会と06年ドイツ大会)を経験された福西さんは、グループリーグ初戦の重要性を肌で感じられていると思います。

 はい、痛いほど(笑)。でも、今の選手たちは、周りがいろいろと言わなくてもその重要性は十分に理解していると思います。ブンデスリーガでプレーしている選手も多いので、強豪のドイツと戦うとなっても冷静さを欠くことはないでしょう。そういった頼もしさが、このチームにはあります。

 ただ、1つアドバイスするとすれば、初戦の結果がどうあれ、動揺しないでほしいということです。仮に負けたとしても、また次の試合に向けてチーム一丸となって取り組めばいいし、逆に勝ったとしても必要以上に浮かれないこと。そのためにも、森保監督が4年をかけて築き上げてきたチームの絆を信じ、最終的にどこを目指すのかを今一度明確にしておくべきでしょうね。

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福西崇史(ふくにし・たかし)

1976年9月1日生まれ、愛媛県出身。新居浜工を卒業後、95年にジュビロ磐田に加入。激しいプレーを身上にボランチの定位置を掴み、チームの黄金時代を支えるとともに、自身も4度(99年、2001年、02年、03年)のJリーグベストイレブンに輝いた。その後、FC東京、東京ヴェルディを経て09年1月に現役を引退。18年には東京都社会人サッカーリーグの南葛SCで現役復帰を果たし、同年11月から約1年間は同クラブの監督を務めた。日本代表としては02年日韓大会と08年ドイツ大会の2度のW杯に出場。通算成績は64試合・7得点。現在は主に解説者として活躍中だ。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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