[連載小説]I’m BLUE -蒼きクレド- 最終話「日本を青に」
日本代表の最大の弱点とは何か?
新世代と旧世代が力を合わせ、衝突の中から真の「ジパングウェイ」を見いだす。
木崎伸也によるサッカー日本代表のフィクション小説。イラストは人気サッカー漫画『GIANT KILLING』のツジトモが描き下ろし。
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上原丈一はインド西部の街・コルカタのスポーツバーにいた。
マルシオのスポーツバー「オブリガード」が現地の店と提携し、日本人サポーターのための拠点がつくられたのだ。まだ夜の試合まで数時間あるのに、店内は日本代表のユニフォームで溢れ返っている。
丈一は一番奥の席にラップトップを広げて陣取り、今日のスペシャルゲストを待った。
入口の向こうに、メガネをかけた銀行員のような男性が姿を現した。
来た!
丈一は入口に向かって走り、8年ぶりのハグをかわした。
同時刻、日本代表のホテル――。
午後6時半キックオフのアルゼンチン戦に向けて、選手たちはランチを終えようとしていた。
日本代表の食事では、じゃんけんに負けた人がテーブルにいる全員分のコーヒーを持ってくるという習慣がある。
この日、負けたのは玉城だった。小高有芯ら6人分のコーヒーをトレイに乗せて円卓に届けたとき、監督の秋山大がみんなに呼びかけた。
「ちょっとミーティングルームに集まってくれ」
何事だろう? 予定表にはなかったスケジュールだ。
渋谷寛人がコーヒーを飲みながら小声で言った。
「どうせ冨山会長とかお偉いさんの挨拶じゃねえ?」
一宮光が悪ノリする。
「日本の首相かもしれませんよ。今回の代表は期待が大きいから」
玉城も慌ててコーヒーに口をつけ、誰だろうと考えた。
もしかしたらOBかも?
玉城の予感は的中した。
ミーティングルームに入ると、スクリーンに上原丈一が映し出されていた。
選手たちから一斉に驚きの声があがる。
「ジョーさん!」
スピーカーから丈一の声が聞こえてきた。
「みんな、半年ぶりだな! クレドができて以来、コミュニケーションや議論が活発になったと秋山から聞いている。OBとしてすごく嬉しい。俺たちにできることはもう限られているだろう。それでも最後に何かを届けたいと思った。これからメッセージを伝えさせてくれ」
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