連載小説:I’m BLUE -蒼きクレド-

[連載小説]I’m BLUE -蒼きクレド- 第22話「色なき日本代表」

木崎伸也 協力:F
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舞台は2038年。11月開催のインド・ワールドカップに向けて、日本代表は監督と選手たちの間に溝が生じていた。
日本代表の最大の弱点とは何か?
新世代と旧世代が力を合わせ、衝突の中から真の「ジパングウェイ」を見いだす。
木崎伸也によるサッカー日本代表のフィクション小説。イラストは人気サッカー漫画『GIANT KILLING』のツジトモが描き下ろし。
 浦安、老舗蕎麦屋――。
 上原丈一は玉城迅からの質問に答えられたことに胸を撫で下ろした。日本代表の先輩として対面を保つことができただろう。
 ただし、丈一の心にはまだモヤモヤが残っていた
「アキヤマだけではジンを生かせない。ジンのポテンシャルを生かすには、アキヤマとジョーが力を合わすことが必要だ。ジョー、日本に飛べ」
 恩師フランク・ノイマンからそう言われて日本へやって来たものの、自分が何をするべきなのか、まだ検討がついていない。玉城の武器が「チームメイトの力を120%出させる」というところまではわかった。だが、それが自分にどうつながるというのか。

 味わうことに集中しなければそばに失礼だと思い、残りのせいろを一気にたいらげる。ちょうど食べ終わったときに、グーチャンが姿を現した。
「ごめんー、予定より遅くなった。奥さんの買い物が予想以上に長くて」
 グーチャンは5年前にドイツ系イラン人と結婚し、3人の子宝に恵まれた。奥さんの気がかなり強いそうで、オフに家族サービスは必須だという。
 グーチャンが隣りに座ると、玉城は感謝を伝えた。
「今日はジョーさんとの食事をセッティングしてくれてありがとうございます。おかげでノイマンさんの謎かけを解けましたよ」
 グーチャンが店員に「せいろ3人前」と注文しながら答える。
「それは良かった。ジョーさんって聞き上手ではないんだけど、話をすると前向きな気持ちにさせてくれるんだよね」
 丈一は苦笑いした。
「さりげなくディスってる? まあ、そんなことまったく意識して話してないけどな」
 グーチャンも苦笑いした。
「だから言ったじゃないですか。ジョーさんは天然だって。8年前も紆余曲折を経ながら、チームをひとつにしてくれましたよね。I'm Blueだったのが、最後にWe’re Blueになった」
 2030年ワールドカップ(W杯)の直前、丈一は仲間達から自分勝手なプレーを咎められ、キャプテン交代を迫られてしまう。だが、丈一は感謝の気持ちに気づき、再びリーダーとしてチームをまとめあげた。
 一口に「青」といっても、スカイブルー、エメラルドグリーン、インディゴブルー、藍、紺、群青などいろいろある。その違いを認めて、ひとつの「青」になった。それがあのときの日本代表だった。
 玉城が不思議そうに質問した。
「I’m BlueとWe’re Blueって何が違うんです?」

【(C)ツジトモ】

 グーチャンがこちらに目配せしてきた。丈一に答えろという意味だろう。
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著者プロフィール

1975年、東京都生まれ。金子達仁のスポーツライター塾を経て、2002年夏にオランダへ移住。03年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材した。現在は東京都在住。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『革命前夜』(風間八宏監督との共著、カンゼン)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)など。17年4月に日本と海外をつなぐ新メディア「REALQ」(www.real-q.net)をスタートさせた。18年5月、「木崎f伸也」名義でサッカーW杯小説『アイム・ブルー』を連載。

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